群馬の高校野球2023夏 桐生第一高校編①

後半から終盤の大量失点を防ぎ、3年ぶりの県の頂点に立つ!

グラウンドに掲げられたスローガン「人間味溢れるチーム~最弱から最強へ~」(写真左)。最強のチームになるために練習に励む桐生第一の選手たち

 今夏も優勝候補の一角をなす桐生第一だ。昨夏は準々決勝で、優勝した樹徳に7-10と打ち合いの末に敗れ、昨秋も樹徳に5-6で惜敗。今春は準々決勝で健大に逆転負けを喫している。全国レベルの強豪校と練習試合をしながら、3年ぶりの夏の県の頂点へ向け調整をしている桐生第一の課題と戦力を紹介しよう。
取材/Eikan Gunma編集部

 今年の春の大会の準々決勝で、2-4で健大に敗れた試合に、チームが抱える課題が見えた。5回まで健大を1安打に抑えて2-0とリードしていたが、6回に一挙4点を取られて逆転負けを喫している。その後の練習試合でも「大体、同じような展開になるんです。前半はリードしているか、同点か、最少失点1点差ぐらいなんですが、6回以降に失点してしまうんです」と今泉壮介監督は頭を抱える。
 横浜高校との練習試合でも、前半に4-2で勝っていても8回に4-4に追いつかれ、タイブレークの末に逆転負け。
 「強豪校とは何とか粘れれば前半まではいい試合ができるんですけど、最後に勝ち切れないところがこのチームの最大の弱さかなと思います」(今泉監督)と、課題は後半戦の戦い方だ。
 6回以降に崩れる一番の原因は、練習でのピッチャーの球数制限にあると今泉監督は見ている。普段の練習では50球ほど、少ない時では30球ほどしか投げないという。
「試合では5回までに大体60~70球ぐらい行くんです。試合でも結構、継投していたので、球数の少なさにも原因があると思い、最近は球数を少し増やしています」(今泉監督)とピッチャーのスタミナ対策に取り組んでいる。

 ピッチャー陣の中心は、背番号1を背負う中村駿汰。最速130キロながら、丁寧に両サイドを突けるコントロールの良さを持ち、多彩な変化球でも相手打者を翻弄する。「夏は、中村に長いイニングを投げてもらうか、それとも継投で行くのかは、夏の大会までに見極めます」と今泉監督。
 2番手以降のピッチャーには、2年の宮本凱矢、3年の河原井大智とドミンゴス マルセロ キヨシが控える。宮本は186センチの長身から最速140キロのストレートを投げる。公式戦での登板はまだないが、能力の高い選手である。河原井もまた最速140キロのストレートと変化球を投げ分けて打者を打ち取れる選手である。ケガで苦しんだ分、夏の活躍に期待したい。ドミンゴス マルセロ キヨシは最速135キロで、185センチの長身から投げ下ろす伸びのあるストレートとキレのある変化球が持ち味。彼らのほかに他の2年生ピッチャーも力がついてきており、登板の可能性もありそうだ。この夏は、エースの中村はもちろん、2番手以降のピッチャーの活躍が鍵になる。
 
 キャッチャーは、星野竜河。2020年夏の優勝チームのキャッチャーを務めていたのが兄の綜汰だ。兄と同じように、持ち前のガッツで意地でも後ろに球をそらさないキャッチングでチームを救う。リード面でも選手たちからの信頼が厚い星野が、ピッチャー陣の良さをいかに引き出すかに注目したい。
 内野陣は、1塁鶴田京平、2塁倉地玄二、ショート中山寛明、サード佐藤礼恩。倉地、中山は1年次からベンチ入りしており、経験が豊富。チームの核になることが期待される。ショートの中山は1年の時はキャッチャーだったが、肩の強さと足の速さがあるためショートとしての才能を評価された。
 外野は、木立東真(2年)と佐々木陵惺(2年)、ドミンゴス。「本来は、田屋(ジャンマーク駿)、伊藤諄といった足の速い3年生に頑張ってほしい」(今泉監督)が言うように、外野には調子のいい選手を起用する考えだ。

選手たちは集中力を高めて練習に取り組んでいる

 桐生第一の理想は、足を絡めた攻撃。その中心になるのが、倉地、ドミンゴス、伊藤、田屋。「もっと走ったりできればもう少し得点力が上がる」と今泉監督は、春以降、調子を落としていた彼らの奮起に期待する。
 打線の中軸を担いそうなのが、「距離だけなら昨年の三塚琉生より長打力のある」と今泉監督が言う町井颯助、思い切りバットが振れる鶴田京平、長打や小技も期待できる佐藤礼恩。春は8番を打っていた星野竜河の調子も挙がってきており、練習試合では4~6番を打っている。3年前の健大との決勝戦で満塁ホームランを放ってチームを優勝に導いた兄の綜汰のように、チームを勝たせる存在になりそうだ。
 1、2番は木立、佐々木。「1番は勇気づけられるバッターを置きたいんです。1番は長打力も必要で、ノーアウト2塁にできれば次のバッターが送って、1アウト3塁という形で得点が入るパターンに持ち込める」と今泉監督が期待するように、思い切りの良さと長打のある佐々木が1番になりそうだ。だが、足の速さがあり出塁率の高い選手たちが復調して来れば打順の組み替えもある。1番打者から多彩な攻撃が仕掛けられるのもチームの強みだ。
 
 今年の目標はもちろん甲子園出場。3年前のセンバツが新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった。その代わりとして、センバツ出場チームを対象に8月に甲子園高校野球交流試合が行われ、桐生第一も甲子園でプレーした。その時に甲子園球場でプレーする兄の姿を見て、「自分も縦縞のユニフォームを着て甲子園で戦いたい」と桐生第一に入学したのが、星野竜河と佐藤礼恩である。この2人が甲子園でプレーする意義をチームに伝えることで、チームのさらなる奮起が期待されそうだ。
 昨夏は、明るく団結力があり勢いのあった樹徳が優勝した。今泉監督は、「昨年のチームは力があったが、人数が多い分、団結力に欠けていたかもしれない。ウチが負けた原因はそこかなと思いました」と振り返ったように、今年はチーム一丸となって夏の激戦を戦い抜く。

<了>