CS進出圏内に手の届くところまできたサンダーズ。A東京に惜敗し連勝ストップも、課題を今後に生かす。

試合終了まで残り2.2秒。スローインからドリブルでレイアップシュートに持ち込むトレイ・ジョーンズ選手。シュートを決めたものの試合終了のブザーに間に合わず、得点は認められなかった

 2週間のオフ期間(バイウィーク)を終えて迎えたA東京戦。「(バイウイークで)試合がなかったためにゲーム勘がつかめずに1Qにビハインドを背負ってしまった」(A東京のデイニアス・アドマイティスHC)、「2週間ほど試合がなかったので、試合の入りが非常に鈍く自分たちのプレーができなかった」(A東京のアルトゥーラス・グダイティス選手)とA東京のHCや選手が言うように、相手の動きの鈍さを突いたサンダーズが一時は16点のリードを奪うなど、持ち味の速いバスケットを展開しゲームの主導権を握った。水野宏太HCも「1Qは自分たちのいい流れを作ってトランジション(速攻)など、自分たちの強みを存分に出せた試合展開だった」と語っていたほどだ。
 1Qでサンダーズは、ボールを上下に動かして相手のマークをかわすポンプフェイクなどの1対1のオフェンスで、A東京のディフェンスを突破しスコアを重ねた。

 しかし、東地区2位と力のあるA東京が、このままで終わるはずがない。「速い展開では群馬のペースになります。群馬は1試合平均80ポゼッションという速いペースでプレーするチームですので、そのペースに付き合ったら完全に群馬のペースで試合が流れてしまいます。我々としては少しでもその数字を下げてペースをスローダウンさせることが必要でした」とアドマイティスHCが語ったように、2Qからはディフェンスを修正。サンダーズの速い展開のバスケットを止めるため、ハーフコートのディフェンスに切り替えた。

4Qに連続6得点を挙げた辻直人選手

 1Qに一時16点差でリードしていたサンダーズだったが、2QからA東京のハーフコートディフェンスに苦戦。じりじりと点差を詰められ、3Qにスティールからグダイティス選手にダンクシュートを決められ55-55の同点に。その後、サンダーズはA東京にリードを許しながらも粘り強く戦い、僅差の展開に持ち込んだ。
 そして4Q残り8分2秒で、ディフェンスリバウンドを取った辻直人選手がドライブからアウトサイドシュートを放ち71-72と1点差に詰めただけでなく、シュート時にファウルを受けてバスケットボールカウントも獲得。それを確実に決めて72-72の同点にすると、残り7分46秒には3Pシュートを決め75-72と逆転に成功。
 約20秒間で6点を決めた辻選手は、この場面を振り返り、「トレイ(・ジョーンズ選手)がアクシデントでコートから下がってしまっていたのもあって、タフな試合ではあったんですが、何とか『自分が……』と自分で自分を奮い立たせて、それがああいう結果につながったのでよかったです。3Pシュートが決まった時はホッとしました。自分自身、3Pを決めると興奮するので、ああいった展開に持っていけて本当によかったです」と語った。

試合終了残り3秒にA東京のレオナルド・メインデル選手にシュートを決められ87-89とピンチに陥った

 4Q残り1分4秒で、ジョーンズがアウトサイドシュートを決めて87-85にしたが、わずか10秒後にA東京のライアン・ロシター選手にダンクシュートを決められ同点に持ち込まれる。その後、ベン・ベンティル選手がレイアップシュートを、A東京のテーブス海選手がジャンプショットを放つもののいずれも決まらず、残り3秒でA東京がタイムアウトを取った。
 エンドラインからのA東京のスローインで、左サイドからゴール下に走ってきたレオナルド・メインデル選手がテーブス海選手から受けたボールをそのままリングに沈め、87-89でA東京がリードを奪った。その直後、残り2秒でサンダーズの水野HCがタイムアウトを要求。タイムアウト明けにコートに立ったのは、ジョーンズ選手、辻選手、ベンティル選手、コー・フリッピン選手と3ポイントシュートの得意な4選手とマイケル・パーカー選手の5人。右サイドからのスローインで、ジョーンズ選手がパーカー選手にいったん預けたボールを受け取ると、そのままドライブでゴール下に切り込みレイアップシュートを決めた。しかし、わずかに試合終了のブザーに間に合わなかったために得点が認められず87-89で惜敗した。
 試合後、このシーンを振り返った水野HCはこう悔やんだ。
 「相手のファイルが5つを越えていたのもあり、最後を任せるんだったらジョーンズと決めていました。残り2.2秒の中で、ジョーンズがドライブからレイアップに行きました。時間のない中でのオフェンスプレーならば、彼がボールをキャッチしてすぐにシュートに行けるように、ワンドリブルのジャンプシュートでちゃんと終わらせる選択の方が良かったと思います。選手たちにはそう伝えていたのですが、それができなかったというのは言っていないのと同じこと。選手がきちんと意図を受け取れなかったのは、僕のミスです。自分自身も含め、1ポゼッションで勝つために、どういうプレーを選択するのかをもっとシャープに考えられるようになるべきだという学びを得られたので、次に生かしていきたいと思います」

後半、並里成選手がオフェンスでチームに力を与えた

 A東京に10連勝を止められたサンダーズだったが、課題が明確になった試合でもあった。それは、持ち味である速い展開のバスケットを止められた時のオフェンスをどうするのかだ。具体的にはハーフコートのバスケットの質をどう上げていくのかだ。
 その点について、試合を振り返った辻選手はこう語っている。
 「今日の試合は、出だしでリバウンドを取って走れたので、1Qで(優位な)展開になったんですが、リバウンドを取れなくなって、自分たちの強みが出せなくなった時に、もっとスクリーンゲームを増やせばよかったのかなと思います。ボールをパーっと運んでオフェンスが単調になってしまった時に、シュートが決まればいいのですが、決まらなくなった時に流れが悪くなってしまうので、そこをもうちょっとコントロールして、スクリーンゲームで良いシュートに持っていった方がよかったのかなと思います」

 A東京戦では、リバウンド争いでも苦戦。A東京にはセバスチャン・サイズ選手、ライアン・ロシター選手、アルトゥーラス・グダイティス選手といったフィジカルの強いセンター陣が揃う。この試合では、サンダーズのオフェンスリバウンドがわずか4本に抑えられた一方、A東京は18本。ディフェンスリバウンドでもサンダーズが21本、A東京が 26本と、ゴール下の攻防で不利になっていた。
 「相手にオフェンスリバウンドを18も取られたらなかなかきついですが、A東京はそこが強みでもあるので、次の(A東京との4月27、28日の)連戦では、相手のオフェンスリバウンドを抑えたいと思います」と力強く語ってくれた辻選手。次のA東京との対戦でどんな試合を見せてくれるのかが楽しみだ。

 サンダーズは3月20日終了時点で、24勝19敗で東地区4位、ワイルドカード4位につける。CSに進出するにはワイルドカード2位に入らなければならない。3位の川崎ブレイブサンダースとは24勝19敗で勝率が同じ。2位の島根スサノオマジックは25勝18敗であるため、サンダーズが2位以内に入る可能性は十分にある。

 今シーズンも残すところあと17試合。3月30、31日にワイルドカード5位の広島ドラゴンフライズ、4月10日に東地区1位の宇都宮ブレックス、13、14日に東地区3位・ワイルドカード1位の千葉ジェッツと、今後も強豪チームとの対戦が続く。主力のケガもあり、シーズン前半戦は東地区6位に沈んでいたチームが、CS進出に手が届くところまで成長したことを考えると、CS進出の夢は叶えられるかもしれないと期待せずにはいられない。

<了>