三河戦で見えたサンダーズの苦悩と成長の証②

リバウンド14、得点15と「ダブルダブル」の活躍でチームを鼓舞した「MP3」ことマイケル・パーカー選手(2024年1月28日三河戦、オープンハウスアリーナ太田)

2024年1月28日(日)15:05 オープンハウスアリーナ太田
群馬クレインサンダーズ 81-87 シーホース三河

 中地区2位の強豪、シーホース三河との第2戦目。前半に43-38とリードして迎えた3Qに、試合の流れを相手に渡してしまった。
 3Q残り7分18秒でファウルから許したフリースローを三河のジェイク・レインマン選手に2本とも決められ47-45の2点差に詰められると、直後にターンオーバーから相手の西田優大選手に2Pシュートを決められ47-47の同点に。その後、レインマン選手に、3Pシュート、2Pシュートを立て続けに決められ、47-52と一気に点差が開いた。相手の勢いを止めるためサンダーズはタイムアウトを取るものの、再びリードする展開に持ち込めず59-63で3Qを終えた。
 4Qはベン・ベンティル選手が9点、トレイ・ジョーンズ選手が5点、コー・フリッピン選手が4点、辻直人選手が3点と必死に追い上げようとするものの、勢いに乗った三河に追いつくことができず、81-87で試合を落とし、三河に連勝することは叶わなかった。

 3Qに勢いに乗ったことに対して三河のライアン・リッチマンHCは、「自分たちのディフェンスの形は間違っていなかったと思いますし、2日間を通して自分たちが良いディフェンスをしていても群馬さんが難しいシュートを決めきっていたと思います。その中で、相手の得点を全部止めることはできないので、正しいプロセスで自分たちが止めるべきシュートを止める。そうしていけば必ず自分たちに流れは来る」とハーフタイムで選手たちを鼓舞したことを語った。

 一方、水野宏太HCは、「3Qで、自分たちのオフェンスが止まってしまったことがこのゲームの流れを分けたと思います。その止まった要因を早い段階で自分たちが改善できなかったこと。一度47-47の同点になり、そこから一気に5点差まで引き離され、ゲームをどちらが優位な状況に持ち込むかというところで相手に流れを渡してしまったこと。そうならないようにチームを導けなかったことを悔しく思っています」と、厳しい表情で語った。

積極的にペイント内に侵入し、チャンスメークした並里成選手。アシスト9本と、得点機を演出した(2024年1月28日三河戦、オープンハウスアリーナ太田)


 この3Qで特に悔やまれるのが、ターンオーバーが多くなり、自ら試合の流れを相手に渡してしまったことだ。この同点にされる展開をベンチから見ていた並里成選手は、「(オフェンスに)攻め切るというアグレッシブさがなくなったことが、ターンオーバーにつながっていたと思います。ベンチではアグレッシブさを失わないようにチームに伝えていました。そこを皆が把握して共通理解を持ってプレーできていればよかった」と語った。
 47-47と同点に持ち込まれた直後にコートに投入された並里選手は、アグレッシブにペイント内に入りチャンスメーク。このQだけで3本のアシストをマークするなど、チームを鼓舞するプレーを見せた。「僕の中では、ペイント内に入ることで良いことが起こるってことを皆に理解してもらいたかった」と奮闘の理由を語った並里。しかし、「疲れなのか、それとも消極的になったのかは分からないですが、オフェンスのリズムをつかめなくなり、そこからディフェンスにも悪い影響が出てしまった。昨日の試合の終わり方が(相手に3点差まで詰められたように)良くなかったことで、そこから相手は自信をつかんで今日の試合に臨んでいたと思います」と、悔しさをにじませた。
 並里選手はこの試合で9つのアシストを記録。闘志を前面に出して戦う姿は、オフェンスが停滞したチームに間違いなく力を与えていた。

オフェンスが停滞した中でも、試合終了まで勝利をあきらめなかったトレイ・ジョーンズ選手。この日はチーム最多の21得点を挙げた(2024年1月28日三河戦、オープンハウスアリーナ太田)

 最近は、強豪チームに対して2試合目を落とす状況が続いている。今季、並里選手と共にWキャプテンを務めるトレイ・ジョーンズ選手は、「琉球、島根といった良いチームに対して1試合目を勝つと、2試合目は、相手は必ずやり返してきます。自分たちはあきらめずに戦い続けることしかできません。自分たちがコントロールできない部分もたくさんある中で、とにかく戦い続けるということにフォーカスしてやるしかないと思っています。2試合目は必ずタフな試合になります。その中で、今日の試合だったら、フリースロー(4Qのフリースローは、7本中2本と成功率はわずか28.6%だった)など決めるべき得点を決めるということをやっていかないと、今後も勝てない試合が多くなっていくのかなと思っています」と、苦言を呈した。ジョーンズ選手の言う通り、この試合ではフリースローは9本中4本、44.4%の成功率だったが、もしこのフリースローを高確率で決められていたら、試合の結果は違うものになった可能性もある。

 
 今季も大型補強を行い、CSに進出できるだけのタレントが揃ったサンダーズが、シーズンスタートから苦戦した原因は主力選手のけが人が続出したこともあるが、それ以上にタレントが揃うゆえの悩みもあったようだ。
 ジョーンズ選手は、「自分でもこのチームが成長しているという部分ではすごくうれしく思っている」と前置きしたうえで、「特にタレントがたくさん揃っているチームというのは、もうすでに他のチームでたくさんの役割を担ってきた選手や、『そのチームに彼がいなければ』みたいな選手が多くて、それが一つのチームに全員集まってくると、その中で自分たちの役割を探すのがすごく難しかったりします。今まで自分がやってこなかったところをやってこなきゃいけなかったり、今までやってきたことをやるのが少なくなったり……。それはもういいチームに来ると必ず起こります。それはNBAであっても同じです。今、サンダーズでは、それぞれの選手が自分の役割を見つけ出して、やらなきゃいけないことをやり出しています。チームとして一つになれているのはすごくいい部分だと思っています」と、語ってくれた。

3Pシュートを6本中5本と83.3%の確率で決めたベン・ベンティル選手(2024年1月28日三河戦、オープンハウスアリーナ太田)

 リーグ後半になりようやく各選手が自分の役割を理解し、チームとしてまとまってきたサンダーズ。ジョーンズ選手も、「今シーズンのスタッツを見た時に、昨シーズンやその前のシーズンほどシュートを打てていないのと、シュートの成功率も上がっていないと思ったんです。最近は必ずシュート練習をして、自分も成長できるように努力しています」と話してくれた。28日の三河戦でも終了間際に3Pシュートを決め81-85に点差を4点差に詰めたのもジョーンズ選手の日頃の努力の成果だ。その後、三河にフリースローを2本決められ最後は81-87とされたが、追いつきたいというチームの粘り強さを最後まで体現してくれた。

 さて、三河戦は1勝1敗で終えた1月28日終了時点で、サンダーズは15勝18敗、勝率.455で東地区5位につけている。1月は4勝3敗。CS進出県内の東地区2位につけているのは、宇都宮ブレックスで26勝7敗、勝率.788。今課題になっているのは強豪チームに2連勝することだ。
 水野HCは、「この壁をどう乗り越えていくか。それができないとどんどんCS進出が遠のいていってしまうので、早い段階でその壁を乗り越える方法を見つければいけないと思っています」と、チーム力強化に取り組む。

試合終了後、敗れた悔しさをにじませる辻直人選手(2024年1月28日三河戦、オープンハウスアリーナ太田)

<了>