群馬クレインサンダーズの今季の事業構想

9月9日のプレシーズンマッチの試合前に行われた事業構想の記者会見で吉田GMは、Bプレミア入りの3つの必要条件をすべて満たすと自信を見せた

 いよいよ10月7日にサンダーズは開幕戦を迎える。今季のスローガンは、「BE BOLD ――臆するな、強く突き進め」だ。ちなみに「BOLD(ボールド)」には、「大胆な、勇敢な、果敢な」という意味がある。サンダーズは、目標であるチャンピオンシップ進出だけでなく、その先の優勝を目指し、3ポイントシューターの辻直人、昨季、琉球を優勝に導き、日本生命ファイナル賞を受賞したコー・フリッピン、ユーロリーグで活躍したベン・ベンティルを獲得するなど大型補強を行った。
 こうした補強でチーム強化を図るだけでなく、経営面の強化にも力を入れている。2026年にスタートする新BリーグでBリーグ・プレミア(以下、Bプレミア)入りを目指すサンダーズは、今季クラブとしてどんな事業構想を描いているのだろうか――。9月9日にオープンハウスアリーナ太田で開催されたサンロッカーズ渋谷(SR渋谷)戦が始まる前に、アリーナのコート内に設けられた会見場で阿久澤毅社長と吉田真太郎GMが大型ビジョンを利用しながら今後の事業説明を行った。その内容を紹介する。

 現在B1に所属するサンダーズは、2026年には新リーグのトップレベルとなるBリーグ・プレミア入りを目指しており、世界と互角に戦える水準を持つクラブが所属するリーグと位置付けられている。下記は、新リーグのカテゴリー分けである。

※1 新Bリーグの分類
B1→Bリーグ・プレミア(以下、Bプレミア)
世界と互角に戦える水準を持つクラブが所属

B2→Bリーグ・ワン(以下、Bワン)
世界と戦う準備ができる水準のクラブが所属

B3→Bリーグ・ネクスト(以下、Bネクスト)
プロ水準のクラブが所属する。

 さて、Bプレミアに参入するためには、下記の3つの要件が必要となる。
①年間109日確保できるBプレミア基準のアリーナがあること。
②1試合平均の入場者数が4,000人以上であること。
③売上高12億円以上(うち、バスケ関連事業が9.6億円以上)であること。

 2024年10月にリーグの初回審査が行われる予定だが、サンダーズはこの3つの条件をクリアできそうだ。各項目を見ていこう。

県内のバスケットボール熱の高まりを期待する阿久澤毅 社長

 まず、1つ目のアリーナについては、総事業費82億5,000万円で、オープンハウス、太田市、群馬県でオープンハウスアリーナ太田を建設し、今年4月にオープンした。収容人数は5,500人。リーグが求める5000人収容基準も満たしているほか、Bプレミアで必要な年間109日の確保もできる。ちなみに、アリーナの指定管理業者は、サンダーズの運営会社・群馬プロバスケットボールコミッションの子会社・群馬シティマネジメント(阿久澤毅社長)である。

 また、2つ目の入場者数についてみると、4月15日からシーズン終了までの6試合を新アリーナで開催した際には、いずれも5000人を超える入場者数で、4月16日の宇都宮ブレックス戦では5,472人と、クラブ史上最多入場者数の記録をマークした。
 新アリーナが完成するまでの間、アリーナに隣接する太田市運動公園市民体育館を使用していたときの平均入場者数は2,500人超だったが、新アリーナでは約2倍の観客を集めている。昨季の平均入場者数は3,220人となったが、今季はホーム30試合すべてを新アリーナで開催するため、Bプレミア参入基準の4000人を超えると見ていいだろう。
 だがサンダーズは、今季の平均入場者数の目標を参入基準の4,000人ではなく4,500人(※2)に設定。8月に沖縄で開催されたFIBA バスケットボールワールドカップ2023で日本は、パリ2024オリンピック出場権を獲得するなど、国内でバスケットボール熱が高まっていることが追い風になっているほか、「オプアリで、バスケットを見てみたいという人が激増している」と新アリーナ効果もあり、阿久澤毅社長は、今季の集客目標に自信を見せた。
 現在、アリーナ周辺の整備が進んでおり、アリーナ内だけでなく敷地内のバリアフリー化を進め、体に不自由のある人でも観戦しやすい環境を整えている。すでに屋外のステージも完成しており、試合だけでなく場外でのイベントも楽しめるようにしている。老若男女はもちろん、体に不自由がある人を含め、アリーナアを訪れた人たちが楽しめる空間づくりにも力を入れているのは集客にプラスとなるだろう。

※2 シーズン別サンダーズのシーズン別平均入場者数
2018-19シーズン……1,143人(B2)
2019-20シーズン……1,263人(B2)
2020-21シーズン……1064人(B2)
2021-22シーズン……1,574人(B1)
2022-23シーズン……3.220人(B1)
2023-24シーズン……4,500人(B1)※目標

 そして3つ目の条件は、売上12億円以上であること。サンダーズは昨季の売上は15億円の見込みで、すでに参入の条件を満たしており、今季は18億円を目指している(※3)。
平均入場者数が4,500人を超えればチケット収入も増え、グッズ売り上げも上がる。サンダーズが盛り上がれば、スポンサーも増え、スポンサー収入もアップするだろう。さらにCSに進出し、ホームで試合を開催できれば、さらに売り上げアップが見込める。目標の18億円売上げは実現可能な数字と考えられる。

※3 シーズン別の売上推移 ※カッコ内は所属リーグ
2018-19シーズン……1億6,900万円(B2)
2019-20シーズン……3億3,600万円(B2)
2020-21シーズン……5億4,600万円(B2)
2021-22シーズン……9億5,600万円(B1)
2022-23シーズン……15億円(B1)※見込み
2023-24シーズン……18億円(B1)※目標

チャンピオンシップ進出を本気で目指すため大型補強を行った吉田真太郎GM

 会見の中で吉田GMは、「2026年から始まる国内最高峰のBプレミア参入を目指すとともに、クラブとして世界の頂点を目指していく」という夢を語り、群馬から世界を目指し邁進していく決意を示した。吉田GMがサンダーズの経営に関わった当初、ディズニーランドのようにワクワクする空間を造りたいと語っていたが、その夢はオープンハウスアリーナ太田で実現した。次の目標は、Bプレミアに参入し世界レベルのクラブを作ること。その夢を実現するためには、多くの群馬県民がクラブを誇りに思い、応援したくなるようなクラブづくりが必要不可欠だ。

<了>