2年ぶりのB1でのプレーに手ごたえ。得点力を上げ、さらなる活躍を誓う

群馬クレインサンダーズ
山崎 稜

B1初挑戦となった2021-22シーズンは、群馬クレインサンダーズは主力にケガ人続出、新型コロナウイルス感染症の影響などで、選手が戦力として全員揃ったのがシーズン終盤になってからという苦しい状況だった。だが、その中でもチームは、シーズンを通じてチャンピオンシップ(CS)進出が見える中位に位置するなど健闘し、B1リーグ昇格初年度チームの最多勝利数の記録を更新。勝率.455東地区7位でシーズンを終えた。その中で、山崎選手は全試合に出場しただけでなく、フリースローランキングで5位、B1通算1000得点達成と、積極的なプレーでチームを支えた選手の一人。2022-23シーズンもサンダーズでプレーすることが決まった山崎選手に、B1初年度のチームを振り返ってもらった。
取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)

――B1フリースローランキング5位、B1通算1000得点達成と結果を残しています。山崎選手にとってどのようなシーズンだったのですか。

山崎 個人としてはフリースローランキングを争ったり、チームとしてはB1初年度の最多勝利数の記録を残せたりしたんですが、当初、掲げていたチャンピオンシップ進出をチームとしても個人として一番達成したいところだったので、それができず、結構、悔しいシーズンでした。

――対戦したチームのHC(ヘッドコーチ)たちが、サンダーズはCS(チャンピオンシップ)に進出してもいい力を持っていると言っていました。山崎選手自身、どうしたらCSに行けたと思いますか。

山崎 確かにメンバーだけ見てもCSに行っていないとおかしいなと思いますし、実際に最後に東地区5位の秋田がワイルドカード下位(※1)の枠を取ったわけですけど、秋田の勝率を比較しても僕たちにも十分チャンスはありました。僕たちがあと数試合勝っていれば、CSに進出できていたと思います。それができなかったのは、チームとしてオフェンスとディフェンスの遂行力が、上位のチームに比べると低かったからです。一人ひとりがチームのために徹底してやらなければいけないと常々、思っていました。

※1 東西各地区の上位3クラブを除いた16クラブのうち上位2クラブを上位から順に、「ワイルドカード上位」(チャンピオンシップ出場順位7位)、下位のクラブを「ワイルドカード下位」(チャンピオンシップ出場順位8位)という。

――それは、トーマス・ウィスマンHCの戦術通りのいかなかったということですか。

山崎 戦術もそうですけど、オフェンスであればいくつかセットプレーがあって、ディフェンスもコーチの求めているルールがあるんです。それが、たまに試合前に変わったりするんですけど、ルールがあるにもかかわらず、そのルールの中でやりきれないところが非常に多かったんです。選手がそれを100%遂行できて初めて(勝てない)責任をHCに問えると思うんです。HCがそれを掲げているにも関わらず選手ができないとなると、それをやれていない選手のせいになります。CSに進出できなかったのはHCが悪かったとか戦術が悪かったというのではなく、僕はかなりの非が選手にあると思っています。

――選手が遂行できなかった理由は何だと思っていますか。

山崎 能力的にできないのではなく、試合になると勝手なプレーをしてしまうことが多かったかもしれません。

――シーズンを通して見ていると、試合にムラがあったように思います。例えばA東京のような強いチームには善戦して、下位のチームには緩みが出てコロッと負けてしまう印象でした。

山崎 良くも悪くも相手に合わせてしまうところがありました。それが強豪チームであれば皆、負けたくないという気持ちが前面に出て接戦に持ち込めていたのですが、それが下位チームや勝率の少ないチームと対峙した場合、ちょっとした気の緩みが出てしまったのかなと思います。

――その状況を改善しようと選手同士での話し合いはあったのですか。

山崎 選手間でも、コーチ陣と選手間でも話し合いはありました。試合前に話し合っていても、いざ試合になるとできなくなってしまって難しい部分はありました。

――それは、試合になると、どうしても勝ちたいという気持ちが上回ってしまうから?

山崎 そうだと思います。

2022年1月2日の宇都宮戦は、古巣との対戦となった(ALSOKぐんまアリーナ)。

――ホーム最終戦の試合後の会見で、山崎選手が「外国籍選手に頼りすぎているところがある。もっとやりようがあったのではないか」と、外国籍や外国にゆかりのある選手たちが試合に出続け、なかなかベンチメンバーを起用できなかった状況を指摘されていました。

山崎 僕の思いとしてはそうですね。

――それでも、シーズンが進むにつれて徐々にベンチ層が厚くなってきたと思いますが、ベンチからスタートする選手がHCを信頼させるまではいかなかったということですか。

山崎 HCからしてみたら、そういうことだと思います。本当にちょっとでも少ないチャンスで結果を残していれば、HCの信頼獲得につながっていたと思います。

――もっとベンチメンバーが試合に出ていれば、特定の選手に負担がかかる状況を回避でき、シーズン中に続出したケガ人を減らすこともできたし、ベンチメンバーの能力をもっともっと生かせたのではないかと思っていたのですが……。

山崎 タイムシェアできていれば、疲労度とかケガのリスクは抑えられたかなと思います。前半のわずかな時間でも控えの選手がプレーして、なにかしらそこでできていれば、プレータイムが後半まで続いたり、次の試合では長いプレータイムをもらえたりと、信頼がどんどん積み重なっていったと思うんです。でも、それができなかったのは結局は力不足。HCのバスケットボールにはまらなかったからなんじゃないでしょうか。

2022年3月30日、滋賀戦(太田市運動公園市民体育館)

――シーズン当初は、外国籍選手、外国に由来のある選手と日本人のとの間に、まとまりがなかったように思いました。山崎選手はどう見ていましたか。

山崎 アキ(・チェンバース)は日本人ですけど英語が第一言語で、マイク(マイケル・パーカー/日本国籍)もそうなんですけど、(トレイ・ジョーンズ、ジャスティン・キーナン、オンドレイ・バルヴィンを加えた)トータル5人での英語でのやり取りが多かったので、外国籍選手と日本人選手がバラバラに見えるという構図が少しあったと思います。

――英語の話せる山崎選手が、外国籍選手と日本人選手との橋渡しをしていたのではないですか。

山崎 僕は日本人選手の中で英語が話せるほうなので、バスケットの部分で橋渡しの役目をしていたのですが、オフコートの部分では日本人選手も外国籍選手もみんな仲が良くて冗談を言い合ったりしていました。ただ、どうしてもバスケットの部分になると、迅速さが求められるし、状況に合わせて「次はどうする」っていうのを伝えていかないといけないので、僕とがとかマイクがコミュニケーションを取ってやっていけばいいかなと思っていました。そこが僕の1つの強みであり、チームに与えられるメリットですから。

――ホーム最終戦の会見で、山崎選手自身、さらに選手として成長するためには得点力が必要だと言っていました。

山崎 今シーズンはこれまでのキャリアと比べると、ボールハンドリングをする時間が長くて、そこからパスを狙ったり、シュートを狙ったりというところで丁寧かつ正確さがさらに必要だと思いました。簡単なミスをしない、シュートを打つならちゃんと決めなければいけない、ボールハンドリングをした中で良い判断をして結果を残さなければいけないということです。今後はすべてにおいて、もっと精度を高めていかなければなりません。

――山崎選手にとって2年ぶりのB1での戦いでしたが、このステージで十分にやれるという手応えをつかんだのではないですか。

山崎 実はそこが、僕が危惧していた面ではあるんです。B2の時にはB1とのレベルの差を感じたので、B1に戻ったときにB1の選手と比べて出遅れるんじゃないか、B1のレベルが上がってきていているので、自分がB2でやっていた1年がもったいないんじゃないかと心配していた部分でした。結果、スタッツで見ても得点力も結構上がって、B1で十分にやっていけるという自信にはつながりました。

――ホーム最終戦で対戦相手になった新潟の平岡富士貴HC(前サンダーズHC)が、「山崎選手はプレーの思い切りがよくなった」と褒めていました。思い切りの部分は普段から意識しているところですか。

山崎 シーズン前半戦に比べて後半戦は得点力が伸びたと思うんです。そこはちょっと意識するようにしていて、なるべく毎試合2桁得点が取れるようにと考えながら積極的にプレーしていました。

――2021-22シーズンはフル出場を果たしました。チーム内でケガ人続出した中で、山崎選手がケガをしなかった秘訣を教えてください。

山崎 体づくりが大事ですかね。そのあとはゆっくり休む。ウチはストレングストレーナーがいないので(※2)、以前一緒にやっていたストレングスの方がアドバイスしてくれて、専門家の意見を聞きながらしっかりトレーニングをしていたので、そこは大事な部分じゃないかなと思っています。

※2 2022-23シーズンから、和田洋明氏がストレングス&コンディショニングコーチに就任。

2022年4月27日三遠戦(太田市運動公園市民体育館)

――最後に、オフシーズンの予定を教えてください。

山崎 今、結構いろんな美味しいものを食べたりしています。旅行にも行きたいですが、まずは体を休めてそれからアクティブに動きたいですね。僕の住んでいる高崎には、いろんな美味しいグルメがあるので、インスタで検索して「おいしそうだな」と思ったお店に行ったりしています。

<了>

■Profile
山崎 稜(やまざき・りょう)

1992年9月25日生まれ、埼玉県出身。昌平高校卒業後の2011年、スラムダンク奨学金第4回奨学生として渡米し、サウスケントスクール、タコマ・コミュニティ大学でプレー。2013年に帰国し埼玉ブロンコス(bjリーグ)に入団。その後、バンビシャス奈良(bjリーグ)、富山グラウジーズ(B1)、栃木ブレックスに所属し、2020年に群馬クレインサンダーズに移籍した。昨シーズンは55試合に出場し、1試合の平均得点7.4、フィールドゴール成功率35.1%、3P成功率30.8%、フリースロー成功率89.2%だった。フリースローランキングではリーグ5位、B1通算1000得点を挙げた。83㎝・80㎏。