最大20点差を一時逆転。日本人選手が見せた粘りとチームの可能性

群馬クレインサンダーズ

宇都宮のテーブス海(右)に対し、激しいディフェンスを見せた菅原暉(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

2022年1月1、2日の両日にALSOKぐんまアリーナ(前橋市)で行われた2022年最初の試合は、開幕戦で2連勝した宇都宮との対戦だった。その開幕戦では、外国籍選手が大幅に入れ替わりチームとして完成されていない宇都宮に対して、サンダーズは2日間とも延長戦の末に勝利を手にしたが、シーズンも中盤になり、昨季、準優勝の宇都宮も現在東地区4位とチャンピオンシップ(CS)進出を射程圏内に捉えつつある。その宇都宮に対し、主力にケガ人が続出しているサンダーズがどこまで戦えたのだろうか。試合後の選手たちのコメントを中心に、チームの現在地を探った。

文/星野志保(Eikan Gunma)

Game2では、トレイ・ジョーンズも欠き、外国籍選手はカイル・バローンのみとなった(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

 「完璧に負けてしまいました。まだまだ自たちは弱いなと思いました。ターンオーバーが自分たちは20。宇都宮はそのターンオーバーから30得点。そうなると勝てない」と試合後、テーブルに置かれたスタッツ(公式記録)を見ながら肩を落としたトーマス・ウィスマンHC。

 1日目のGame1では、「トレイ・ジョーンズに得意の右ドライブを与えない」(宇都宮/ブランドン・ジャワト)との宇都宮の作戦が奏功。「開幕戦で2連敗した時も最後にトレイ選手にやられているので、そこの意識を持っていました」(安齋竜三HC/宇都宮)と、ジョーンズにわずか2点しか与えないなど、激しいディフェンスからサンダーズの攻撃を封じた。

 「前半までは自分たちのやりたいことができて粘れていた」と菅原暉が言うように、前半を32-39と7点差で終えたサンダーズ。一方で、宇都宮の安齋HCは、「前半は結構、軽い感じのプレーが多くて、ここからどういうチームになって、どこを目指すかという危機感があまりないゲーム」と反省し、後半にディフェンスのギアを上げ、強豪チームの意地を見せた。

 その結果、3Qでサンダーズはわずか12得点に抑えられ、63-99と完敗。ケガの不安から全力を出し切れないジョーンズに頼ったバスケットから切り替えられなかった。

ケガ人続出のサンダーズの救世主となっているカイル・バローン。今季途中で熊本から加入。宇都宮戦でも主力級の活躍だった(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

 翌日のGame2はジョーンズ不在となったが、「今日の試合は競り合えた」とウィスマンHCが言うように、外国籍選手がカイル・バローンだけという状況の中、1Qに20点差まで広げられながら、2Qで44-50と6点差まで詰め、3Qで逆転に成功。4Qで機能していたマンツーマンディフェンスが上手くいかず88-97と惜敗。ケガ人続出で試合に出場したのが8人のサンダーズに対し、宇都宮は12人。3Qまで見せた集中力の高いプレーを最後まで保つことができなかった。

試合中にコミュニケーションを取る上江田勇樹(左)と山崎稜(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

 ただ、1Qで20点差をつけられながらも、サンダーズの選手たちはあきらめなかった。「悪い時間帯や上手くいかない時間帯は試合中にあるので、今は我慢のときと思い、チャンスを一つずつ狙い、そこからリズムを引き出していこうとしました」(山崎稜)と戦う姿勢を崩さなかった。

 3Qに五十嵐圭の3ポイントシュートが決まり61-61の同点にすると、直後に五十嵐からパスを受けた上江田勇樹の3ポイントシュートで64-61と逆転に成功。3Qに入り、追い上げムードで盛り上がっていた会場の雰囲気が最高潮に達し、粘りを見せたサンダーズの選手たちをたたえた。

3Qで五十嵐圭の3ポイントシュートが決まり、同点に追いついた(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)


 「打てるシュートは全部狙っていけ」とミーティングでウィスマンHCが指示したように、バローン21得点、山崎18得点、マイケル・パーカー14得点、上江田11得点とシュートが決まり、前日に30あったターンオーバーも9に減った。


 中でも活躍が光ったのが上江田だ。なかなか出場時間が恵まれない中で、「いつ(コートに)出されても結果を残せるように練習をしてきました。今日はプレータイムが長かったので、自分の持ち味であるアウトサイドシュートと(粘り強い)ディフェンスができました」と、宇都宮相手に3ポイントシュートを3本中3本、2ポイントシュートも4本中4本を決めるなど、放ったシュートを全て決めチームを勢いづけた。

プレータイムが20分を超え、打ったシュートを全て決めてみせた上江田勇樹。潜在能力の高さを見せた(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)


 明らかになった課題もある。特にジョーンズがいるときに彼にボールが集中し、個人頼りのバスケになってしまうことだ。
山崎はこう語る。
 「トレイ(・ジョーンズ)と(ジャスティン・)キーナンがいないときのバスケットと全く別物なので、どうしても彼ら2人がいるときは頼りがちになってしまう。そうなったときは、なかなかいいリズムでオフェンスができない。ボールが動かなくなることで人も動かなくなって流れが悪くなることが結構見られるんです。逆にあの2人がいないことでボールが回るようになりますし、また(彼らがいるときとは)違ったリズムも生まれるんじゃないかと思っています。彼らに頼らないバスケットを自分たちはできるとわかっているので、今日はそこをちょっとでも出せたんじゃないかなと思っています」

宇都宮の竹内公輔(右)のディフェンスをかいくぐり、シュートを狙うマイケル・パーカー(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

 上江田は、「ケガ人が多いので、チームとしてどう戦っていくのかが(勝利の)カギを握ると思っています。それだけトレイやキーナンに頼っていたので、他の選手がステップアップして戦っていかないといけないと改めてみんなで話し合っています」とチームに現れた変化を明かした。そして、「トレイもキーナンも個人のスキルがすごく高いので、チームで戦えるようになればこのチームはすごく可能性を秘めていると思います。チームとしてどう戦っていくのかを確立させていけばすごく良いチームになる」と手ごたえを口にした。

宇都宮の渡邉裕規を抜き去る菅原暉(2022年1月2日、ALSOKぐんまアリーナ)

 Game1で大敗したものの、Game2で外国籍選手が一人しかいない状況の中、「宇都宮という伝統あるチームに競り合い、勝てるチャンスをつかめるところまで戦えたことは選手たちにとって自信になる」とウィスマンHCが言ったように、エース不在でも昨季の準優勝チームに善戦できたことはチームの成長を感じさせてくれた。あとは、ジョーンズやキーナンが戻ってきたときにチームプレーができるかが、目標であるチャンピオンシップ出場への鍵を握りそうだ。2022年最初の宇都宮戦は、2連敗をしたもののエース不在でも十分に戦えることを証明した試合になった。

<了>