世界を知る司令塔・五十嵐圭が、群馬クレインサンダーズに加入!

長年、日本のバスケットボール界をけん引してきた五十嵐圭が、新潟アルビレックスBBから群馬クレインサンダーズに加入した。7月1日にGINZA SIX内のオープンハウス銀座サロン(東京都中央区銀座)で開催された記者会見から五十嵐の選手像を紹介しよう。

取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)

7月1日の記者会見で、吉田真太郎GM(右)と記念撮影に応じる五十嵐圭(GINZA SIX内オープンハウス銀座サロン、写真提供/群馬プロバスケットボールコミッション)

 2021-22シーズンからB1に戦いの舞台を移すサンダーズ。今年41歳になった五十嵐にオファーを出した理由を吉田真太郎GMはこう語った。
 「今シーズン、ポイントガード(PG)の補強は必須。昨シーズンは笠井康平選手に大きな負担がかかっておりました。今年から大学No1といわれた菅原暉選手には大きく期待しております。そして新たに圧倒的に実績があり、経験のある選手を探しておりました。年齢的に大丈夫かという人もいるかと思いますが、圭さんのスピード、勝負強さはまったく衰えておりません。経験というものをオンコート、オフコートでいかんなく発揮して、今季、クレインサンダーズを大いに盛り上げてくれることを大いに期待しております」

 地元・新潟の顔として5シーズンを過ごした五十嵐に、吉田GM正式なオファーをしたのがサンダーズのB1昇格が決まった翌日だった。五十嵐は、「新潟でキャリアを終えるのではないかという思いで過ごしてきましたが、吉田GMから『新しい群馬のチームをぜひ引っ張っていてもらいたい。そして、目標であるB1優勝に力を貸してほしい』という熱いメッセージをもらいました」とその時のことを語った。
 五十嵐は中央大学バスケット部で吉田GMの2年先輩にあたる。吉田GMが五十嵐を「圭さん」と呼ぶのもそのためだ。2019年6月に株式会社オープンハウスが群馬プロバスケットボールコミッションをM&Aをした際に、日本のバスケットボール界のことを知るために最初に会った関係者が五十嵐だった。ちょうどその頃、五十嵐もオフシーズンだったので、吉田GMは「お茶でもしながら話を聞かせてください」と頼んだという。その頃から吉田GMの中には、いつかは五十嵐をサンダーズに呼びたいという思いがあったのだろう。「大学の寮でも一緒だったので、圭さんの性格や人柄は知っているので、素晴らしい人なのは分かっていました。(今回、オファーをするに当たり)アルビレックスの顔でもあり、それ以前に新潟の顔でもあるので、現実的に上手くいくのかなという不安はありましたが、最終的には我々のビジョンに共感していただきました。心の中では(圭さんをサンダーズにというのは)ずっと思っていました」と明かした。

 大学の後輩からのオファーに、「いろいろなことを考え、決断を下すまでに時間がかかってしまった」と五十嵐は語ったが、そんな五十嵐の心を動かしたのは、吉田GMの「圭さんを優勝させたい。一緒に優勝したい」という言葉だった。五十嵐は、日本代表経験はあるものの、Bリーグが誕生する以前の日立サンロッカーズ、トヨタ自動車アルバルク、三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ時代も優勝とは無縁。2018-19シーズンに新潟で中地区優勝したのが初めてのタイトルだった。「この年齢になりましたけど、チャンスを生かしたい」と、優勝を手にするためサンダーズへの移籍を決めた。

五十嵐を象徴する背番号7をサンダーズでも背負う(2021年7月1日、GINZA SIXオープンハウス銀座サロン、写真提供/群馬プロバスケットボールコミッション)

 今シーズン、チーム躍進のキーマンとなる五十嵐。B1加入1年目のチームがいきなり優勝を狙うのはハードルが高い。
 「大きな目標として優勝があるのですが、まずはチャンピオンシップに進出する。東地区は強豪チームも多いので、そう簡単ではないと思います。今季、チームに残ったマイケル・パーカー選手は優勝経験もありますし、もちろんトレイ・ジョーンズ選手もそう。ジャスティン・キーナン選手も秋田でB1経験もあります。新しく入ってくる(現役のチェコ代表選手である)オンドレイ・バルヴィン選手はBリーグは初めてで、慣れるまでに少し時間がかかる部分もあるかと思いますが、それをうまくコントロールするのが自分の役割だと思っています。特に、今、名前を挙げた外国籍選手、帰化選手たちをどれだけうまく使いながらチームを作っていけるか。もちろんヘッドコーチの意向もあるので、これからはスタッフ、ヘッドコーチとしっかりコミュニケーションを取りながら、まずはPGである自分がチームのコンセプトを一番理解して、それをコートの中で出していきたいと思っています。日本人選手に関しても、若い選手、中堅選手、ベテラン選手とバランスのいい布陣になっていると思います。B1で初めてプレーするという選手が多くはないので、(B1での戦いに)アジャストする部分ではそんなに苦労はないのかな。ただ、新しい選手がたくさんいて、ヘッドコーチ、スタッフもすべて新しくなった状況ではあるので、その中でチームを作っていくのは難しいと私自身感じています。それを自分自身の経験で、少しでも手助けしていければと思っています」
 チームの置かれている現実を直視し、自身の役割を冷静に考え、具体的なビジョンを描いているところは、やはり日本バスケ界で長くプレーしている五十嵐ならではだろう。「B1での実績があり、優勝を目指すという気持ちに飢えている選手」というサンダーズの補強のポイントを一番体現する選手が五十嵐なのである。

2008年12月23日に宇都宮市体育館で開催されたJBLオールスターゲームに出場した五十嵐。当時、EASTチームを率いたのが、サンダーズの新HCに就任したトーマス・ウィスマン氏だった(写真/星野志保)

 吉田GMが「人間的にも素晴らしい」と言った人柄が、サンダーズのファンやブースターに対する五十嵐のコメントからもうかがえた。リーグがプロ化する前のJBL時代から、五十嵐は試合後にもかかわらず、誰よりも丁寧に取材に応じ、ファンに接してきた選手でもある。
 「チームの創設から、サポートをしてきてくださったパートナーの皆様、関係者の皆様、ブースターの皆様、ファンの皆様と、たくさんいらっしゃると思いますし、群馬県のバスケットボールはこれからまだまだ盛り上がっていけると思っています。今シーズンからは拠点を太田市に移して、2年後にはアリーナもできます。そういった部分で自分たちチームだけでなく、地域の皆様、太田市の皆様、群馬県の皆様と一緒になってチームを作り上げていきたいと思います。私自身はコートの中で少しでも何か感じ取ってもらえるような、楽しんでもらえたり、喜んでもらえたり、そんな活力になるようなプレーを見せながら、群馬県の皆さんと、強い、応援してもらえるようなチームを作り上げていきたいなと思います」
 群馬クレインサンダーズは、群馬県で初めてトップリーグで戦うプロスポーツクラブとなり、五十嵐の加入での群馬県内だけでなく、日本全国のバスケットファンからも注目されるチームになった。群馬県が大いに盛り上がるシーズンになりそうだ。五十嵐の活躍にも注目したい。

<了>

2008年12月23日に宇都宮市体育館で開催されたJBLオールスターゲームに出場した五十嵐。当時は日立サンロッカーズの所属だった(写真/星野志保)

■プロフィール
いがらし・けい
1980年5月7日生、新潟県上越市出身、直江津東中学~北陸高校~中央大学~日立サンロッカーズ(2003~09年)~ トヨタ自動車アルバルク(09~10年)~三菱電機ダイヤモンドドルフィンズ(10~16年)~新潟アルビレックスBB(16~21年)。中央大時代にスピードを買われて頭角を現し、ヤングメン(U-21)世界選手権代表候補となる。2004年に初の日本代表入りし、06年に日本で開催された世界選手権に司令塔として出場。Bリーグ初年度に地元の新潟に移籍し、5シーズンを過ごした。2018-19シーズンには、新潟の中地区優勝に貢献した。180㎝・70㎏、ポジションはポイントガード(PG) 

■情報
2018年からオープンハウスがトップスポンサーとなっている東京ヤクルトスワローズの7月7日(水)阪神タイガース戦(17:30~)で、「祝B1昇格!オープンハウス・群馬クレインサンダーズコラボデー」を開催。五十嵐圭選手が神宮球場での始球式に登場する予定。