2026年7月5日、カインズ本庄早稲田本部で、ザスパ群馬の2026/27シーズン新体制発表会が行われた。2024年にJ3降格が決まり、2025年は沖田優監督の下でJ2復帰を目指したものの、結果は14位。クラブにとって、8月から始まる新シーズンは、単なる再挑戦ではない。J2復帰へ向け、ピッチ内外の両面で「クラブそのものを強くする」ための再出発となる。
取材/星野志保
経営体制を刷新し、クラブ改革のスピードを上げる
細貝萌社長が最初に強調したのは、チーム編成ではなく、クラブの経営体制の変化だった。2026年4月から取締役5人体制となり、ベイシアグループ、カインズとの連携をより強める形で、経営判断と改革のスピードを高める狙いがある。
細貝社長は、経営陣と日常的にコミュニケーションを取りながら、ザスパが「より一層愛されるクラブ」になるための議論と行動を始めていると説明した。表に出にくい変化ではあるが、クラブ内部ではベイシアグループ内でのザスパへの理解が進み、より効果的な連携が可能な体制が整いつつあるという。
この日の発表会で象徴的だったのは、社長と強化部長だけでなく、営業、マーケティング、運営、育成の各責任者が登壇したことだ。クラブは、昇格を「トップチームだけの目標」として語るのではなく、営業収入、ファンエンゲージメント、スタジアム運営、アカデミーまで含めた総合力の問題として位置づけ直している。
パートナー企業75%増 営業収入をクラブ成長の柱に
細貝社長によれば、新シーズンに入り、パートナー企業数は昨シーズン比で約75%増加した。ユニフォーム、トレーニングウェア、スタジアム広告、ザスパークなど、複数の媒体で協賛が広がっているという。
伊藤崇浩営業部長は、既存パートナーとの関係を大切にしながら、新たな企業との出会いを増やしていく方針を示した。重要なのは、単なる広告枠の販売ではない。スマイルキッズキャラバン、観戦体験を高めるイベント、アシストパートナーなど、企業が地域やクラブの価値づくりに参加できる形を提案していく。
営業部の収入は、クラブ収益の最大の柱である。伊藤部長は、その責任を明確に語った。J2復帰を目指すためには、良い選手を獲得し、良い環境を整える資金が必要になる。営業部の仕事は、ピッチから遠いようでいて、実際にはチーム強化の土台そのものだ。
アプリ、ファンクラブ、ホームタウン活動で「日常の中のザスパ」へ
マーケティング部の井村安世部長は、今季の重点テーマとして、ザスパ公式アプリの導入、ファンクラブ再開、スタジアム体験の向上、ホームタウン活動の強化を掲げた。
この夏から始まる公式アプリでは、ニュース配信だけでなく、くじやポイント機能などを通じて、試合日以外でもサポーターがクラブに触れられる仕組みを整える。さらに、ウインターブレイク明けの2月からはファンクラブを再開する予定だ。
ザスパが目指すのは、試合日にだけ存在するクラブではない。井村部長は「ザスパがある毎日」をつくることをマーケティング部の役割とした。街にザスパネイビーがあふれ、スタジアムで勝利を喜び合う景色。その未来像を実現するため、クラブはファンとの接点をデジタルとリアルの両面から増やしていく。
ホームタウン活動でも、学校訪問、挨拶運動、イベント出店、交通安全教室、AED啓発活動などを通じ、2026年6月末までに延べ12万人と触れ合った。GCCザスパーク2周年イベントでは、放置竹林という地域課題に向き合う竹灯籠づくりも実施。クラブは「群馬にザスパがあってよかっスタジアム体験の改善も、昇格への重要な基盤た」と思われる存在を目指している。
スタジアム体験の改善も、昇格への重要な基盤
運営部の松本大樹部長は、試合運営の安心安全に加え、来場者アンケートを踏まえた改善を進めると説明した。アクセス、駐車場、スタジアムグルメ、案内表示、待機列など、サポーターが日々感じている不便に対し、できることから取り組む姿勢を示した。
駐車場については約3000台が置けるとした一方で、河川敷駐車場などの課題も把握しているという。スタジアムグルメでは、待機列の案内やメニュー表示の改善を進め、来場者がより快適に過ごせる環境を整える。
勝利はピッチで生まれる。しかし、クラブが継続的に強くなるためには、また来たいと思えるスタジアム、家族や友人を連れて行きたくなる空間が欠かせない。運営部の改善は、観客動員、営業価値、チームへの後押しをつなぐ重要な仕事になる。
アカデミーは「トップ昇格」と「人材育成」の両輪へ
育成事業室の宮本和弥室長は、アカデミーのビジョンとして、トップチームに選手を輩出することを最大の目的に掲げた。現在、アカデミーのチーム部門には約140人が活動している。
ただし、目標はトップ昇格だけではない。ストレートにトップへ上がれなくても、将来的にホームグロウン選手として戻ってくること、さらにサッカー以外の場でも活躍できる人材を育てることを重視する。
選手だけでなく指導者の質にもこだわり、個別育成プログラムを通じて一人ひとりと向き合う。さらに、アカデミーとして自走できる収益基盤をつくるため、サッカースクールの拡大や普及活動にも取り組む考えだ。
J2復帰、そしてその先のJ1を見据えるなら、外から選手を補強するだけでは足りない。地域から選手を育て、クラブの文化を継承する仕組みが必要になる。育成事業室の取り組みは、数年後のザスパの競争力を左右する。
「ただ勝つチーム」ではなく、地域と共に戦うクラブへ
山田耕介GMは、目指すチーム像について「ただ勝つチームではない」と語った。誰よりも走り、誰よりも戦い、ボールを失えば誰よりも早く奪い返し、最後までゴールを目指す。そうしたサッカーを、サポーターと共に築いていきたいという。
クラブがこの日示したのは、単なる決意表明ではない。経営、営業、マーケティング、運営、育成を同時に強化し、トップチームの勝利を支える構造をつくるという意思だった。
2026/27シーズンのスローガンは「挑戦の先へ 共に未来を切り開く」。J2復帰は、ピッチ上の11人だけで成し遂げるものではない。クラブスタッフ、パートナー企業、地域、サポーターが同じ方向を向けるか。ザスパ群馬の新シーズンは、その総合力が問われる戦いになる。
補強の狙いは「攻撃的サッカー」と守備の安定
佐藤正美強化部長は、ザスパの歴史を振り返りながら、クラブが長く「粘る、耐える」戦い方で勝ち点を積み上げてきたと分析した。J2での平均順位は16位、J3を含めても平均14位。苦しいシーズンが多かったという現実を踏まえ、今後は「攻撃的なサッカーで勝つ」チームへ進化する必要があると語った。
100年構想リーグでは、得点力が40チーム中9位だったという。数字としては上位に入るが、佐藤強化部長は満足していない。攻撃的なサッカーを掲げる以上、本来は5位以内を目指したい。そこで、チャンスを多く作り、それを決め切るための編成を進めた。
一方で、守備面には明確な課題があった。失点数は40チーム中で下から2番目。守り方の構造整理に加え、経験のある選手、複数ポジションをこなせる選手、個で相手にアタックできる選手を獲得し、攻守の安定感を高める狙いがある。ディフェンスライン、GK、前線まで幅広い補強が行われた。守備陣には高さ、対人能力、スピード、経験値、ユーティリティ性を持つ選手を加え、GKにはシーズンを通して試合に出た経験とリーダーシップを期待する。攻撃では、スピードや身体能力で局面を打開できる選手も加わった。
細貝社長は、「会社として前進している。新加入選手が力を発揮できるようクラブとして支える」と述べた。山田GMも、「攻撃と守備をバランス良く補強できた」と評価した。沖田監督は、「就任から1年半をかけて攻撃的なマインドの基礎と基盤を作ってきた」と語り、新たなメンバーを加えた今季、サポーターと共にJ2へ戻る決意を示した。
昇格は、願うだけでは手に入らない。佐藤強化部長は、選手とスタッフに「昇格できる振る舞いを日々積み上げよう」と伝えたという。経営基盤を整え、攻守の補強を進め、クラブ全体で同じ方向を向く。ザスパ群馬の2026/27シーズンは、言葉ではなく積み上げの質でJ2復帰をつかみにいくシーズンになる。
<了>
