「サッカーができている幸せをかみしめながら、目の前のサッカーに夢中になってください」

ザスパクサツ群馬
細貝 萌

群馬出身の細貝萌選手から、一生懸命にサッカーを頑張っている子どもたちへの至極のメッセージ。

文/安藤隆人  写真/星野志保

*群馬U-12 サッカー選手名鑑2022に掲載された記事を転載しています。

周りの選手より、自分が一番
サッカーが好きと信じていた。

――細貝選手は小学校時代にどのような考え、感覚でサッカーに打ち込んでいましたか。

細貝 ドリブルやパスなどボールに触る回数は練習、自主トレも含めて多かった方だと思います。親にカラーマーカーを買ってもらって公園でドリブル練習をした時もありましたし、あとは指導者から言われたことを自分なりに受け止めて練習に取り入れたりしていました。ただ、全てのベースとなるのは何をやったかよりも、どれだけサッカーが好きかだと思います。これは間違いなく今にも言えることです。サッカーが好きであれば、必然的にボールに触る回数、時間も増えますし、もっと上手くなろうと人の話を聞いたり、自分で考えて工夫して行動に移しますから。僕も子どもたちによく「サッカーを常に好きであってほしい。周りにいる選手たちよりも自分の方がサッカーが好きだと周りに言えるくらい自信を持ってサッカーと向き合ってほしい」と言っています。

――細貝選手は小学校時代、サッカーの何が好きだったのですか。

細貝 もちろん点をとる、アシストをするということに喜びを持っていましたが、サッカーをしている時って他のことを考える暇もないし、その没頭する時間が楽しい。実際に僕は小学校の時から周りの選手と比べて、「間違いなく自分が一番サッカーが好きだ」と自分の中で信じながらやっていました。

――10年以上前に細貝選手のインタビューをした時に、小学校の時に優勝したミルクカップの思い出を語っていましたね。

細貝 ありましたね。小6の時、ミルクカップに優勝したことで関東大会に出場できたのですが、関東大会で鹿島アントラーズジュニアなどと戦って、県外の選手のレベルの高さにショックを受けたことは鮮明に覚えています。全国大会で上位に進出するようなチームと戦ってみて、「同世代にこれだけ強いチームがたくさんいるんだ」と自分の中では衝撃を受けた出来事の1つでしたね。

――小5、小6となるとだんだんサッカーを楽しみながらもライバルができたり、格上の存在ができたり、競争が出てきます。こうした要素が入ってくる中でいかにサッカー好きなままでいられるには、どのようにすればいいのでしょうか。

細貝 いろんな選手と出会うことはすごく価値があると思います。僕は小5、6の時に関東選抜、ナショナルトレセンに呼んでもらったのですが、日本各地から上手い選手が集まってくる中で、自分より上手い県外の選手たちに出会えたことが大きな財産となったのです。そこで「上がいる」ということをすぐに認めることができましたし、「負けたくない」という気持ちも生まれました。関東大会の時もそうでした。そこで「もう僕は無理だ」と思うのではなく、「もっとうまくなりたい」と思えるかが大事だと思います。たとえ群馬で1番になったとしても、他の都道府県に行ったら1番になれるとは限りません。それだけ「常に上には上がいる」という事実を頭の中に入れておいて欲しいです。もちろんこれはサッカーのレベルは関係ないんです。県内、県外で自分がいろんなチームと対戦をして、「この選手はすごい」「この選手に負けたくない」と思えることが重要なんです。そういう思いを抱かせてくれる全ての根本は、やっぱりサッカーが大好きかどうかだと思います。どんな選手でも負けたくないという気持ちを前面に出して戦うことは何も恥ずかしいことではなく、むしろその選手の成長に大きく影響をする大事なことだと思います。

――メッシになりたい、クリスティアーノ・ロナウドになりたいと思うことは大切ですが、実際はほぼなれません。大事なのは細貝選手がおっしゃったように身近な存在でライバルや負けたくない存在を見つけて欲しいですね。「目の前の相手より上に行きたい」という純粋な気持ちこそが大事だと思います。

細貝 その通りだと思います。もちろん今はネットも発達をして世界中のトップレベルの選手やチームの素晴らしいプレーやゴールシーンなどを簡単に見ることができます。ですが、やっぱり現実は現実なので、まずは自分の置かれた状況を認識して、自分の試合で目の前の対戦相手に勝ちたいと思ってプレーしないといけません。あと、チームメイトにも学ぶことはたくさんあります。僕は小学校の時に常に「自分にできないことをできる選手はたくさんいる」という認識でした。自分が所属するチームで一番ゴールを決めていても、自分よりもボールを奪うことが上手い選手や、自分よりもヘディングが強い選手、自分よりも足が速い選手はチームメイトの中にもいました。そういう選手たちから学ぶことも本当に大切です。今の時代、指導者にサッカーのことで質問をすれば、必ずいい答えが返ってくると思います。だからこそ、「どうすればサッカーがうまくなりますか?」ではなく、「どのようなプレーができたらサッカーがうまくなりますか?」と自分から具体的に分からないことを聞きにいくことも大切だと思います。それもすべてはサッカーが大好きであれば自分のたりないところを認められるし、学ぼうと思えるし、何より素直に周りに質問することができると思います。

――他者を認めるということは本当に小学年代でも重要なことですよね。細貝選手は日本代表で30試合に出場するなど、日本でもトップレベルの経験をされています。大人になってから他の選手から学んだものに、どのようなものがありましたか。

細貝 例えば長友佑都、本田圭佑、岡崎慎司は同い年ですが、大人になってからも彼らの練習量は本当に素晴らしかったし、代表などで一緒に生活をしても「本当にサッカーが好きなんだな」と思うことはたくさんありました。それはトップレベルだからとかではなく、純粋に「自分よりサッカーが好きなんじゃないか」と思える選手なんです。サッカーが好きだと思う選手を超えていくためには、やっぱり自分のサッカーが好きだという気持ちをもっと強く持っていないといけないのです。シュトゥットガルトで一緒にプレーをした浅野拓磨はスピードもずば抜けていて、貪欲にサッカーに打ち込んでいました。年齢関係なく、ポジションも関係なく、彼から学ぶものはものすごくたくさんありました。やはり身近な存在から直接目で見て、感じることはとても大切だと思います。

サッカーが大好きな子どもたちに
刺激を与えられたら嬉しい

――先ほどもおっしゃっていたように今はネットで調べれば何でも目にできる時代だからこそ、実際に自分がその目で、その心で感じたことを大切にして欲しいし、その機会をもっと増やして欲しいですよね。

細貝 そこは一番伝えたいところです。僕もいろんな選手を見て、感じて、学ぶことができたからこそ成長できましたし、先ほど話をしたミルクカップ決勝の時も、その後に同じ敷島サッカー・ラグビー場で全国高校サッカー選手権大会の群馬県予選決勝の前橋育英vs前橋商の試合があって、僕らはスタンドで観戦をしたんです。その時に自分たちがついさっきまでプレーしていたピッチで、高校生のサッカーを見て、迫力が全然違いましたし、スピードも驚くほど速かった。Jリーグや日本代表の試合をテレビで見た時よりも、群馬県の高校トップレベルの戦いを目の前で雰囲気を感じながら見た方が、すさまじい衝撃を受けたことを覚えています。実際にそこで優勝した前橋育英に対して、まだ中学校にも進んでいない僕が「ここでサッカーがしたい」と強く思って、それが目標の1つになって、実際に前橋育英に進んでこうしてプロになることができました。映像を見て学ぶことは多いと思いますが、それ以上に実際に試合を見て、スピード感や迫力、距離的なものを感じて欲しいと思います。サイドチェンジ1つにとっても、映像でも「すごいな」とは思いますが、実際に目の前でサイドチェンジをするのを見ると、キックの音だったり、実際のパスを出す相手への距離感だったり、ボールの軌道までリアルに感じられます。そこで受けるインパクトは映像のそれとは比べものになりません。やはり本物を自分の目で見ることは何よりも刺激になりますし、記憶に残ります。それをぜひ子どもたちにも味わって欲しいと思っています。

――まさに今、細貝選手は子どもたちにその姿を見せる立場ですよね。

細貝 僕がこのタイミングで群馬に帰ってきたのも、群馬で生まれ育った人間だからこそ、自分が群馬の少年たちに何かを伝えたいなと思ったことも理由の1つです。いろんな経験を積ませてもらった自分がザスパクサツ群馬という地元のJリーグクラブでプレーすることで、サポーターの人や地元の方々、昔からお世話になっている人たち、これからサッカー選手を夢見る子どもたち、サッカーが大好きな子どもたちに刺激を与えることができたら本当に嬉しいと思っています。だからこそ、スタジアムに足を運んでもらいたいと思っていますし、そこで「細貝選手すごかったね」とか、「ああいう風になりたいな」と思ってもらえることがモチベーションでもあります。それをより実現するためには、何よりも僕がサッカーが大好きだという気持ちをプレーや行動で前面に見せないといけないと思っていますし、純粋に今も昔以上にサッカーが大好きな自分がいます。情熱を持って戦う、諦めない気持ちは常に見せていきたいと思っています。

――いろんな成功を収めている細貝選手ですら、思い描いていたサッカー人生ではなかったかもしれません。

細貝 もちろん自分が理想としてきたサッカー選手というのは、現実を見ているとこういう状況ではなかったというのが正直なところです。日本代表で30試合出ましたが、夢だったW杯に出場することはできませんでした。同世代では長友、本田、岡崎はW杯も含め、100試合以上も日本代表の試合に出ています。それに比べて僕は正直「これしかできなかったか」という思いは強くあります。でも、ここまで36歳になってかなりベテランと言われる年齢までサッカーができているのは、間違いなくサッカーが好きだからここまでやってこられているし、サッカーが好きだからまだやりたいと思っているし、子どもたちに自分が戦っている姿、情熱、憧れを感じてもらえるようにやりたいと思っています。当然、やれると思っているからこそ、今もやっています。その情熱がなくなったらプロサッカー選手であり続ける意味が変わってくると思います。

――当然、このインタビューを読んでくださっている子どもたちの中には、小学校で地域トレセンに入れなかった、レギュラーになれなかった、県大会に出場できなかったなど結果が出ない悔しさを味わっている人もいると思います。それでも全てが叶えられなかったわけではなく、いいプレーを出せたとか、実現できたことは必ずあると思います。細貝選手の話を聞いて、そこを大切にして欲しいなと改めて思いました。

細貝 今後サッカーを続ける子、続けない子もいると思いますが、間違いなく今この瞬間は自分がサッカーが好きで、一生懸命取り組んでいるという事実があれば、それはこれからの将来にプラスにつながると思います。子どもたちに伝えたいのは、今、目の前にあるサッカーにベストを尽くして欲しいです。試合に出られる、出られない、けがをしてしまったなどの状況はありますが、戻りたいと思っても2度と戻れない今を大切にして欲しいです。サッカーに打ち込んでいる、サッカーを大好きでいる自分こそ、本当にかけがえのない自分だと思いますから。それを感じることで、将来の自分にもつながっていくと思います。サッカーができている幸せをかみしめながら、目の前のサッカーに夢中になってください。これが僕からのみんなへのメッセージです。

<了>

■Profile
細貝 萌(ほそがい・はじめ)

1986年6月10日生まれ、群馬県前橋市出身。前橋広瀬FC~前橋南FC~FC前橋ジュニアユース~前橋育英高校。高校在学中に特別指定選手として浦和レッズに加入後、翌年浦和に正式に入団。2011年からドイツに渡り、バイエル・レバークーゼン、FCアウクスブルク、シュトゥットガルト、ヘルタ・ベルリン、ブルサスポル(トルコ)などでプレー。17年にJリーグに復帰し、柏レイソルに加入。19年に再び海外に渡り、タイリーグ1部でプレーした。21年9月に故郷のクラブであるザスパへの加入を決断。今季はキャプテンとして、チームを鼓舞した。日本代表としてAFCアジアカップ2011、FIFAコンフェデレーションズカップ2013に出場。国際Aマッチに30試合出場し、1得点を挙げている。177㎝・69㎏、ポジションはMF。

■お知らせ■

群馬U-12 サッカー選手名鑑2022(1500円税込)は下記で発売しています! 本書では、細貝選手のインタビューを豊富な写真と共に掲載しています。

<オンラインショップ>

 ぐんまの本棚

<店舗>

DiPS.Aデジタル・プリント・ステーション朝日
 住所/前橋市元総社町70-1
 TEL/027-254-1212
 営業時間/9:00~19:00(月~金曜日)、9:00~17:00(土曜日)
 定休日/第1・3・5土曜日、日曜日
 駐車場あり

DiPS.A前橋まちなか店
 住所/前橋市千代田町2-10-1
 TEL/027-212-4075
 営業時間/10:00~17:00
 定休日/日曜日、月曜日、火曜日、祝日
 駐車場なし。近隣の有料駐車場をご利用ください。
 *DiPS.A前橋まちなか店で複数冊ご購入の場合は、在庫がない場合もございますので、来店される際は電話で在庫確認をお願いいたします。