群馬の高校野球2022 夏の注目校 利根商業②

眞庭和志(3年・遊撃手)

優勝するために、
一つひとつのプレーの正確さを追求する

 眞庭は野球一家に育った。3歳の時、父がコーチを務めていた学童軟式野球のみなかみドルフィンズに入った。ちなみに、現在、同チームの監督である父も3つ上の兄も利根商野球部出身。眞庭が利根商に進学したのも自然の流れだった。もちろん、利根商を選んだのは福田治男監督の存在も大きかった。
 「甲子園で優勝しているすごい監督ですから、福田監督の下で野球をしたいと思いました」
 実際に、福田監督の指導を受けると、思っていた以上に細かい、そしてレベルの高いところまで教えてもらった。例えば、ショートの守備では一歩目を強く切って速くボールまで行き、確実に捕球亮して投げることや、ピッチャーが打ち取った当たりは確実に野手がアウトにすること。参考にしているのは、同じポジションの埼玉西武ライオンズの源田壮亮だ。「打球を取ってから投げるまでが速く、しかも丁寧で正確に投げるのはすごいと思います。源田選手の動画を見て参考にしています」
 眞庭は2年生からレギュラーで出場しており、「経験値では他チームに負けていない」と自信を見せる。その経験値は、春の準々決勝の関学大附属戦でも生きた。「春は、その試合で初めて先制点を取られたんですけど、『まず1点を返していこう』と焦ることなく、守備からリズムを作って逆転できました」。平常心で、いつも通りにプレーできるのが眞庭の強みでもある。
 眞庭はマネージャーを含め、88人の部員をまとめるキャプテンでもある。授業の後の掃除が終わり次第、練習場に行く。大体、一番早く来ていることが多い。「キャプテンとしての意識ですね。まずは皆の手本にしてもらえるようにと思っています」と背中でチームを引っ張る。だが、キャプテンに就任当時は、「周りを見ながら指示を出して、それで自分も動いてとなると大変でした」と振り返ったが、「今は周りがサポートしてくれて、皆で声を掛け合っているので、大変だと思うことはありません」と余裕を見せた。
 練習中は、一人ひとりが自主的に大きな声を出し、集中して野球に取り組んでいるのが印象的だと眞庭に話すと、「元気よく練習することをいつも心掛けています。大きな声を出すことで集中力が高まりますし、意識を高くして野球に取り組めると思うんです」と答えが返ってきた。
 昨秋はベスト4で終わった。「リードしていたのに、たった1本のホームランで試合の流れが変わってしまいました」。チャンスでもう1点が取れるように、冬はバットの振り込みと体力強化に取り組んだ。今春はエラーも減り、サインプレーも7~8割は成功するようになるなど、秋からの成長が実感できた。この夏に優勝するためには、「一つひとつのプレーの正確さが大事だと思います。ピッチャーだったら、無駄なファーボールを失くすこと、野手だったらピッチャーが打ち取った打球を確実に取ること。守備の面はもっと磨かなければなりません。バッティングでは、サインプレーを100%近くまで成功させること。チャンスで1本が出るか出ないかで勝敗が決まると思っています」
 夏に意識するチームは、桐生第一だ。
 「個人的には、前橋育英、健大よりも、福田監督のいた桐生第一と戦って勝ちたいです。桐生第一は、ピッチャー陣の層が厚く、打線が一番怖いと思います」
 福田監督のためにも、夏は優勝して恩返しをする。

<了>

■Profile
眞庭和志(まにわ・かずし)

2004年11月9日、みなかみ町出身。父コーチを務めていたみなかみドルフィンズに3歳の時に入団。中学では人数不足のために野球部が廃部となり、前橋中央ボーイズに電車で通った。父と兄が通った利根商に進学し、福田監督の下で県の頂点を目指す。右投左打、171㎝・67㎏。