群馬クレインサンダーズ
トレイ・ジョーンズ
群馬クレインサンダーズの絶対的エースがトレイ・ジョーンズ選手だ。対戦相手が必ず警戒する圧倒的なスピードはサンダーズの大きな武器。今季は副キャプテンでもあるジョーンズ選手に、今季のチームの変化やチャンピオンシップ出場のために必要なことなどを聞いた。
(取材日/2023年2月27日)
――今年はチームの副キャプテンになりましたが、チームを支え、まとめるうえで心がけていることはありますか。
長いシーズンの中で、良い時も悪いときもありますが、どちらにしても結果に対してオーバーに反応することなく、常に安定した気持ちで毎試合迎えられるように心がけています。
――選手一人ひとりの状態も気にかけなければならないのではないですか。
シャイな選手や自分を表現することが得意な選手と、皆、それぞれ個性があるので、その個性をちゃんと引き出せるように、一人ひとりに対応していく必要があると思っています。
――プレーでもエースとしてチームを引っ張っていく存在ですが、副キャプテンとしてもチームを見なきゃいけない。エースと副キャプテンの両方をやるのは大変ではないですか。
まさにそこはすごく難しい部分です。個人的に感情的になってしまうこともありますが、一歩引いて自分を見ることで、常にいいバランスを保つように心がけています。
――副キャプテンに就任するに当たり、水野宏太ヘッドコーチ(HC)から、「こうしてほしい」というような要望はあったのですか。
特に副キャプテンだからこうしてほしいというのはありませんでした。水野HCからは「自分らしくプレーをしてほしい」と言われています。でも自分としては、みんなが自分の姿を見て手本としてくれるような選手でいなきゃならないと思いますし、そのためには、いつも冷静でいられるように心がけています。
――今季、サンダーズは、水野HCの下でサンダーズの文化づくりに取り組んでいます。水野HCが就任されてから、明らかにチームとして変わったところはありましたか。
皆、互いにコミュニケーションをよく取るようになりました。コートの外でも、プレーをしているときでも、とにかくコミュニケーションを取ってチームワークをしっかり固めて、自分たちのチームを作っていくという思いが、今のチームからすごく感じます。
――ジョーンズ選手は、2月27日時点で1試合平均の得点が20.6点とリーグ3位の成績です。今季の自身のプレーをどう評価していますか。
自分の成績に満足しているというよりは、とにかくチームの成績を上げることが自分の役目だと思っています。今の自分に求められている積極的なオフェンスに加え、ディフェンスでも求められていることをチームが勝つためにやることが自分の目的でもあるので、自分の結果は後からついてくるものだと考えています。
――1月7日の仙台89ERS戦(85-64でサンダーズが勝利)では、マイケル・パーカー選手とケーレブ・ターズ―スキー選手を欠く試合となりました。その試合で普段やらない4番ポジション(PF)でプレーしましたが、難しくはなかったですか。
かつて千葉ジェッツで4番ポジションをしたことがあったので、そこは水野HCもわかっていて、自分に任せてもらいました。4番でも自分のスピードを生かせると思ったので、上手くプレーできたと思います。
――その試合が始まる前のアップで、チームメイトたちが仲良く話しながらアップしているのに対し、ジョーンズ選手は緊張した表情だったのが印象的でした。
やっぱり、4番ポジションでプレーしたことがあると言っても千葉Jにいたときのことなので、スクリーンをかけてもらう側からスクリーンをかける側に回るなど、いつものポジションと4番ではやるプレーも違うので、その調整が難しかったのもあり、そういう表情になっていたのかもしれません。
――ジョーンズ選手が複数のさまざまなポジションができるというのはチームにとっても武器になりますね。
複数のポジションを経験していることは、相手チームに対しても大きな強みになると自分でも思っていて、自分のアドバンテージでもあるなと思っています。
――現在、チームは東地区3位、ワイルドカード3位(※1)と、チャンピオンシップ(CS)進出を狙える位置にいます。CSに進出するためには、今のチームに必要なこととは何でしょう。
点差が離れてしまって負けた試合もあるので、しっかりと点差を詰めていって、点差を離されないように安定したプレーをして勝ち続けることが大事なのかなと思います。
※1【チャンピオンシップ(CS)進出の条件】勝敗は2023年2月27日現在の数字
B1の各地区(東地区・中地区・西地区)上位2位までの6チームは自動的にCSに進出。各地区上位2位を除き、全地区の中で上位2チームがワイルドカード1位、2位としてCSに進出できる。ワイルドカードの1位は広島ドラゴンフライズ(28勝10敗/西地区)、2位が名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(27勝11敗/西地区)、3位が群馬クレインサンダーズ(21勝15敗/東地区)、4位が秋田ノーザンハピネッツ(21勝17敗/東地区)、5位が宇都宮ブレックス(20勝18敗/東地区)となっている。
――今季は、同じチームとの2連戦で、1試合目に敗れても2試合目には課題を修正して勝つ試合が多いですが、その2試合目の強さの要因は何だと考えていますか。
本当は、同じチームに2試合連続して勝てれば一番いいんですが……。最初の試合で負けてしまっても、その原因をしっかり検証して、そこを修正していくことで「勝てる」という自信がチームにはあります。そこがポイントになっていると思います。
――それができるのも、チーム内でコミュニケーションがよく取れていることも影響していますか。
コミュニケーションの部分は大きいですね。誰かがミスを犯してしまったときでも、チームの気持ちを上げるようなコミュニケーションを取ることがとても大事ですから。
――今季も残り3分の2が終わろうとしています。今季残りの試合での個人の目標を教えてください。
これからも勝ち続けることが大事になります。オフェンスは上手くできている部分もあるので、これからはもっとディフェンスを強化していきたいです。
――いよいよ4月15日にオープンハウスアリーナ太田で、宇都宮ブレックス戦が行われます。新アリーナではどんなプレーを見せたいですか。
新アリーナのことで、私もチームも盛り上がっているので、そのエネルギーを使って思い切りプレーしたいと思います。
――多くの人たちが集まる新アリーナをどのような場所にしたいですか。
素晴らしいアリーナがあるということをサンダーズの強みにして、エネルギーを発揮できる場所にしたいですね。現在の体育館で試合や練習をしているときに、隣に建設されている新ナリーナを毎回見ていたので、今はもうそこでプレーするのが楽しみでしかたないです。
――新アリーナでの試合は、今よりもたくさんのお客さんが見に来ると思います。どんなプレーを見て欲しいですか。
多くの人たちの記憶に残るようなプレーをたくさんしたいと思いますので、期待していてください。
――最後に、ジョーンズ選手に憧れている子どもたちに、プロバスケットボール選手になるためのアドバイスをお願いします。
いっぱい練習して、一生懸命にバスケットを頑張って欲しいと思います。そして失敗を恐れないことです。失敗も成功への過程になるので、とにかく失敗を恐れずにやり続けてください。
<了>
■プロフィール
トレイ・ジョーンズ(Trey Jones)
1990年8月27日生まれ、アメリカ出身。南ミルウォーキー高校からマイアミ大学に進学し、卒業後の2013年にNBAのミルウォーキー・バックスに入団。その後は、NBA Dリーグ、NBA Gリーグをはじめ、フランスやイスラエル、ハンガリーでプレーし、2017年に再びNBAに戻り、インディアナ・ペイサーズに加入する。2018-19シーズンに千葉ジェッツに入り、翌シーズンにドイツのテレコム・バスケッツ・ボンで1シーズンプレーしたのち、2020-21シーズンから当時B2だった群馬クレインサンダーズに加入。勝率9割強の前人未踏の勝利数でB1に昇格した立役者となった。今季でチーム在籍3シーズン目。2018-19シーズンに、W杯予選アメリカ代表に選出された。ポジションはSF、背番号4、196㎝・98㎏。