オープンハウスアリーナ太田の公開視察を実施。地域経済活性化に期待!

センタービジョンをバックに記念撮影。左から吉田真太郎GM、島田慎二チェアマン、清水聖義太田市長、阿久澤毅社長

3月13日に行われた新アリーナ公開視察に、Bリーグの島田慎二チェアマン、清水聖義太田市長、サンダーズの運営会社である群馬プロフィットボールコミッションの阿久澤毅社長、オープンハウスグループの常務執行役員でもある群馬クレインサンダーズの吉田真太郎GMが出席したほか、県内外からの多くの報道陣が取材に訪れた。
今回、新アリーナの魅力を読者の皆さんにお伝えするとともに、新アリーナが地域経済に及ぼす影響について紹介する。

文/星野志保(EIKAN GUNMA) 写真提供/群馬クレインサンダーズ

群馬が全国に誇る
世界トップクラスのエンタメ空間

初めて新アリーナを見て感動の表情を見せる島田チェアマン

 新アリーナを見た感想を「すごく素敵なアリーナが誕生し、本当にうれしいです」と語ったBリーグの島田慎二チェアマン。新アリーナの「オープンハウスアリーナ太田」は、人口21万人の太田市の規模に合わせて収容人数約5,000人とコンパクトなサイズながら、内装や設備、環境にこだわり、最高のエンターテイメントを実現する空間となった。
 新アリーナの中に入ると、椅子も壁も黒天井もほぼ黒で統一された高級感のあるスペースが目の前に広がる。観客席がコートを包み込むような空間は居心地のよさを感じる。まず目に飛び込んでくるのが天井に設置された大型ビジョンだ。メインビジョン4面を中心に4つのオーナービジョンと上下のリボンビジョンの合計14面のビジョンが組み合わさった可動式のセンタービジョンは、総面積6100インチと日本最大級の大きさで、それぞれのパネルを独立して動かすことができる。このパネルは、床から70㎝の高さまで下げることができるというから、バスケだけでなく、他の用途にも威力を発揮しそうだ。

迫力のあるセンタービジョン


 公開視察を終えた清水聖義太田市長は、「センタービジョンがいいな。(サンダーズのロゴをモチーフにした映像を流したときの)黒と黄色がとてもきれい」とアリーナを見た感想を語ったほか、島田慎二チェアマンも「ここまでの大きなセンタービジョンはなかなかない。(センタービジョンは)1階席の人たちにとって見えにくいんですよ。(見上げるので)首が痛くなる。でもここのビジョンは疲れずに見えるように工夫されているんです」と絶賛した。高画質のビジョンは、「キレイ」と皆が思わず口にしてまったほどクオリティーが高かった。
 センタービジョンだけでなく、音響設備にもこだわっている。世界最高峰と言われているフランスのエルアコースティックス社のコンサート用のサウンドシステムを、国内のバスケットボールアリーナとして初めて導入。天井に50機のスピーカーと24機のサブウーハーを採用し、どの席にいても臨場感あふれるサウンドが体感できるようになっている。清水市長も「先日、竹内まりあさんのCDをかけたら、(本人がいなくても)いたような雰囲気で音がよかった。本当に素晴らしかった」と記者たちに音響の良さに感動したことをユーモアを交えながら話してくれた。
 演出の肝となるライティングにもこだわった。バスケットボールの試合で使う照明と、それ以外のスポーツをするときの照明の合計84台を設置し、コートが浮かび上がるような劇場型のライティングを実現するなど、目で楽しめる演出にも力を入れる。
 客席にも配慮し、アリーナ内に設置されているシートは前列と後列の高さをつけて、前に座った人の頭が邪魔にならないで試合を楽しめるようにした。それだけではなく、前列と後列の間のスペースも広くとり、座った人の前を通りやすいようにしている。どの席からも試合を見やすいようにしているのもこのアリーナの特徴である。
 またアリーナに設置されているシートはプラスティック製だが、長時間座っていても疲れないものを採用しただけあり、座り心地がいい。「おそらく2時間座っていてもストレスを感じないと思います」と阿久澤社長も座り心地に太鼓判を押す。

2階から見たアリーナ(撮影/星野志保)


 そして、バスケットの試合で恒例になっていたコートサイドをぐるりと囲むように設置された看板が新アリーナにはない。吉田GMも「最前列の席とコートサイドの間にこれまで看板があったんですが、看板をなくすアメリカンスタイルにしたので、お客様の足から2m先には選手のいるコートがあるかんじです。ボールも選手も飛んでくるというかなり迫力のある楽しみ方が1階席にはあるんじゃないかと思っています」と、アリーナの臨場感をアピールしていた。
 新アリーナには新たにVIP ルーム/ラウンジを6部屋55席用意。「接待ルームとしてはもう最高です。食事は結婚式で食べられるようなレベルです」と吉田GMが嬉しそうに語った。ここは来季からの販売に向け準備していく。
 新アリーナは選手にとっても最高の施設になりそうだ。
 「トレーニングルームやロッカールームを見たときは、ようやくプロ選手が使うレベルの施設になったんだなと感じました。これは当たり前のことではありますが、これまではこの当たり前が当たり前じゃなかったんです」と、阿久澤社長はプロクラブとしての環境が整った喜びをこう口にした。
 オープンハウスアリーナ太田は、収容人数5,000人規模とコンパクトなサイズながら、非日常的な最高の楽しみを与えてくれる空間になるだろう。


アリーナ運営の新しいカタチ。
官民一体の太田モデル

アリーナ外観。こけら落しとなる4月15日の宇都宮ブレックス戦には多くの客が訪れるだろう

 「新しい体育館の規模を今の半分ぐらいで考えていたんです。こういう華やかさは全然考えていなくて、普通の体育館を考えていて、予算も40億円ぐらいでやろうと思っていたのが、倍(の金額)になりました」と、明かした清水市長。
 吉田GMの「お客様が会場に来たくなるような空間にしたい」との提案で、収容人数5,000人というコンパクトなサイズながら、最高のエンターテインメントを実現するアリーナに変更された。その分、約80億円と総工費が倍以上に増えた。新アリーナは太田市が建設したものだが、そのうち約40億円はオープンハウスグループのオープンハウス・ディベロップメントが企業版ふるさと納税を利用して財源に充てただけでなく、「オープンハウスアリーナ太田」のネーミングライツスポンサー料1000万円(年額、税別/契約期間2023年4月1日から2026年3月31日)も上乗せし、官の財政負担を減らした「官民一体のアリーナ」となった。
 島田チェアマンも「官の予算を使った体育館に対して、商業的な観点からファンが満足するような施設にしようとしたときに、建設費用はどうしても積み上がります。それを官が税金で賄おうとしても市民の理解を得るのは難しいと思うんです。だからこれからは(オープンハウスアリーナ太田のように)官と民のハイブリッドが主流になってくると思います。これが今後のスタンダードになると思います」と、官民一体の建設方式を評価した。そして、「その中でもオープンハウスさんの資金注入は大きいので、ここまで立派なものができたのだと思います。質の良さに加えてある程度夢のアリーナに近づけるというのがこれからのアリーナ建設の主流になると思いますが、その中でここは突き抜けたバージョンです」と絶賛した。
「沖縄(沖縄アリーナ)にしても佐賀(SAGAアリーナ)にしても8,000~9,000人ぐらいの比較的大きなサイズのアリーナを建設した中で、たぶんこのアリーナのように、5,000~6,000人規模のアリーナが地方都市の主流になっていくと思います」と島田チェアマンが言うように、「オープンハウスアリーナ太田」は地方都市のアリーナ建設のモデルとなるだろう。

アリーナは人を吸引する力がある。
新B1参入に向け、観客数の増加に期待。

 2026年にスタートする新B1。その入会基準は、「入場者数4,000人」「売上基準12億円」「アリーナ基準5,000席」である。新アリーナの完成に伴い、サンダーズはアリーナの基準をクリアし、売上も12億円達成の目途がたっている。2024年の初回の入会審査までに、入場者数4,000人をクリアすることが求められる(※3,000人でも審査によって新B1への入会が認められる場合もある)。今季、太田市運動公園市民体育館で行われている1試合の平均観客数は約2800人。4月15日からの今季の残りのホーム戦6試合を新アリーナで開催することで、平均入場者数3,000人を超える見込みだ。
 サンダーズは来季、新B1入会に向けて平均入場者数4,000人を目指す。では、どうしたらその目標をクリアできるのだろうか。島田チェアマンは、アリーナで試合を開催すれば自然と観客も増えるとみている。
 「琉球ゴールデンキングスは、10年以上入場者数3,300人ぐらいでホーム戦を開催していて、沖縄アリーナができた途端、7,000~8,000人の観客が入るようになりました。もちろんクラブの経営力や人気具合もありますが、沖縄アリーナがなかったら間違いなく、入場者数は増えなかったと思います。ですから、アリーナの力だけでかなり入場者数を引き上げていくことは間違いないです。『すごいアリーナができたんだって』という噂がじわじわ広がって、噂が噂を呼んで、そこにチームの成績やクラブの経営力が相まって、安定してお客さんが入るようになり、常に満員の状況が作られると思うんです。今の平均入場者数2,800人というのもこの隣の体育館での話なので、新アリーナではその数字はまったく意識しなくていいと思います」
 4月15日の宇都宮ブレックス戦が新アリーナのこけら落としとなる。新アリーナに興味を持った人たちがたくさん訪れることが予想される。阿久澤社長も、「最初は、見たこともないところに行って、バスケットボールを見ようという好奇心が湧き上がると思うんですが、1度来てくれたお客様に2度、3度とアリーナに通ってもらうようにするためには我々も営業努力をしていかなければなりません。もちろんチームが強くなることや、我々がお客様に何を提案できるのかを考えることも欠かせません」と、新アリーナができた話題性だけで終わらせず、「将来、皆が楽しめる場所にする」ための努力が必要だと気を引き締めた。
 一方、吉田GMは、集客に自信を見せる。
 「このアリーナを1度見ていただければ、もう1度行きたいと思ってもらえるのかなと思います。来季は、売上12億円、入場者数4,000人平均を目指しますが、まずはこの6試合をすごくいいものにしていくことが来季につながっていくのかなと思います」

新アリーナの完成で期待される
太田市とその周辺の地域活性

島田チェアマン(右)に説明をする吉田GM。左は阿久澤社長

 少子化が進み、地方都市の人口がだんだんと減少していく中で、「アリーナがあることの意味は地元以外から人を吸引できることです。太田市以外の観客も増えてくると思います」と島田チェアマンはアリーナの効果をこう語る。
 Bリーグではホーム&アウェイ方式で年間それぞれ30試合が行われ、チャンピオンシップや開幕前のトレーニングマッチも含めれば、40試合ほどアリーナで開催できる。アウェイのチームのファンが多くアリーナへ訪れれば、太田市やその周辺で飲食をしたり、宿泊したり、公共交通機関を使ったりと、地域経済が活性化する。
 実際、2023 年 1 月 13 日(金)~14 日(土)に茨城県水戸市で開催された「ドットエスティ B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2023 IN MITO」の経済波及効果が約1.2億円だったことがBリーグから公表されている。2日間にわたるイベントで、2日目のオールスターゲームの入場者数が3146人だと考えると、新アリーナが太田市経済に与える影響は大きい。


 約2年前に吉田GMが本サイトのインタビューで、「お客様がサンダーズの試合を見るために、会場に来たくて来たくてしょうがないという空間を作りたいですね。例えるならディズニーランド。私たちは、群馬県が誇るものの一つになりたいと思っていますし、皆さんから『自分のチーム』と言ってもらえるような存在になりたいですね」と新アリーナの構想とクラブの未来像について話していたが、ついにこの夢が実現する日が来た。

<了>

■オープンハウスアリーナ太田での今季のホーム
4月15日(土)・16日(日)15:05~ VS宇都宮ブレックス
4月22日(土)・23日(日)15:05~ VS千葉ジェッツ
4月29日(土)・30日(日)15:05~ VSファイティングイーグルス名古屋
チケットは現在発売中。詳細は群馬クレインサンダーズ公式HPまで
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