CS進出のために必要だったものとは――。群馬クレインサンダーズの今シーズンを振り返る

今季の最終戦が終わり、試合後に観客に挨拶をするサンダーズの選手たち(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 B1リーグ3年目のサンダーズは、ユーロリーグで活躍していたベン・ベンティル選手、日本を代表するシューターの一人である辻直人選手、2022-23シーズンに琉球ゴールデンキングスを優勝に導いた立役者のコー・フリッピン選手、スラムダンク奨学生出身で潜在能力の高い木村圭吾選手を獲得し、クラブ初のチャンピオンシップ進出を目指した。
 だが、シーズン序盤の10月21日の第3節・三遠ネオフェニックス戦から、エースのトレイ・ジョーンズ選手と活躍が期待されていたベン・ベンティル選手を怪我で欠く事態に陥った。この緊急事態にクラブはすぐに補強に動き、インジュアリーリスト(故障者リスト)に載ったベンティル選手に替わり急遽、エリック・マーフィー選手を一時的に加入させた。

日本で初めのシーズンを戦ったベン・ベンティル選手。シーズン序盤にケガで戦列を離れたが、復帰後は3Pを高確率で決めて見せるなど、能力の方さを発揮してくれた(2024年5月4日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 11月4日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でジョーンズ選手が復帰するものの、翌日の試合で再び怪我で途中退場。ジョーンズ選手とベンティル選手が復帰したのは12月2日のファイティングイーグルス名古屋戦からだった。ベンティル選手の復帰によりマーフィー選手はチームを去ったが、献身的なプレーでチームの危機を救ってくれた。
 ようやく全員揃って戦える状況になったにもかかわらず、翌日の試合で今度はマイケル・パーカー選手が右大腿二頭筋肉離れで戦列を離れた。パーカー選手が復帰したのは12月23日の第14節・琉球戦。6連敗もありリーグ3分の1を終えた時点で、サンダーズは10勝12敗と東地区6位に沈んだ。今シーズンは戦力を強化したサンダーズだったが、主力選手の相次ぐ離脱にチーム作りに出遅れた。

今季、サンダーズに移籍した辻直人選手。ボールに触れない試合もあり、チームメートと話し合いながら互いのプレーに対する理解を深めていった。来季の活躍が楽しみな選手の一人(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 だが、タレント揃いと言われるサンダーズは1月末から驚異的な追い上げを見せた。1月31日のレバンガ北海道戦から3月6日の千葉ジェッツ戦まで快進撃を見せ、B1昇格後のクラブの連勝記録を9に塗り替えただけでなく、これまで一度も勝てなかった千葉Jを初めて撃破した。
 翌節の3月20日のアルバルク東京戦に87-89と接戦の末に敗れて連勝記録は途絶えたが、3月23、24日の富山グラウジーズ戦に連勝し、東地区4位、ワイルドカード3位につけた。

 CS進出の条件は、東地区2位内、もしくは東・中・西の各地区2位以内を除いた3地区18チームのワイルドカード順位で2位以内に入ること。シーズン前半で苦戦し、CS進出さえ危ぶまれたサンダーズだったが、ようやくワイルドカード2位以内に手の届くところまで順位を上げた。東地区では宇都宮ブレックスとアルバルク東京の2以内が確実だったため、サンダーズがCSに進出するにはワイルドカード2位内に入らなくてはならなかった。
 

Wキャプテンの一人、並里成選手。攻撃が停滞した時は並里選手のドライブで突破口を開いた。今季限りでサンダーズを離れることになったが、並里選手が太田市にバスケットを根付かせた功績は大きい(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 CS進出をかけた負けられない過酷な状況の中で、チームは調子を落としていった。3月27日の秋田ノーザンハピネッツ戦、27、28日の広島ドラゴンフライズ戦で痛恨の3連敗。この広島戦でケーレブ・ターズースキー選手、パーカー選手が共に全治4週間の怪我を負い、この時点でサンダーズのCS進出は厳しくなった。
 4月6、7日の信州ブレイブウォリアーズ戦は、中地区7位のチームに両日共に延長戦までもつれ込み辛勝。続く4月10日の宇都宮戦、13、14日の千葉J、17日の北海道戦にも負けて4連敗。CS進出の可能性が消滅したのが、敗れた4月21日の秋田ノーザンハピネッツ戦だった。前日の第1戦目では、89-59と30点差をつけて秋田に圧勝したにもかかわらず、第2戦目は72-101と惨敗した。

 今季は31勝29敗で、B1入りをしてから初めて勝率5割を超え、昨年の29勝31敗、東地区5位の結果と比べてもチームの成長は明らかだ。
 9連勝目を挙げた3月6日の千葉J戦後に水野宏太HCは、「強豪・千葉Jに対して自分たちが仕掛けて良い戦いができた。試合に内容についても自分たちの自信に変えていきたい。前半、相手のクリストファー・スミス選手に5本中4本の3Pシュートを決められて51失点と、相手に流れを持っていかれてもおかしくない状況の中、(45-51の)6点差でとどまることができ、3Qでしっかりいい流れを作ることができたので、勝負強さが少しずつ備わってきたのかなと思う」と手応えを口にしていた。

今季のプレータイムは短かったが、コート外でチームを支えた五十嵐圭選手。サンダーズの成長に欠かせない(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 一方で、なかなかエンジンがかからず試合に負ける脆さもあった。3月30日の広島ドラゴンフライズ戦(●86-92/1Q 19-25、2Q 21-33、3Q 13-13、4Q 33-21)もその一つ。水野HCは、「前半、ゲームの始まりから自分たちはスイッチが入らず、広島にやりたいことをやられて、自分たちのするべきプレーができなかったのが敗因。後半、特に4Qでようやくスイッチが入って差を詰めることができたが、CSをかけて戦うようなチームに前半のような入り方をしては勝つことはできないと感じた」と語っている。
 今季の課題の一つがリバウンドが取れなかったこと。1試合平均のリバウンド数が24チーム中23位と下位に沈んだ。そしてもう一つが2試合目に勝てないこと。下記はいずれも1試合目に勝ち、2試合目に敗れた対戦だ。

 今シーズンの最後の戦いとなった5月4、5日の仙台89ERS戦では、4日に97-85で快勝。翌5日もオープンハウスアリーナ太田に集まった5796人の観客と共に、勝利の喜びを分かち合ってシーズンを締めくくりたかった。またしても最後の最後で2試合目を落としたのは、今シーズンを象徴する試合だったと言えよう。
 4日の試合では速攻からの点数が19対3とサンダーズが仙台を圧倒したにもかかわらず、5日の試合では16対27とサンダーズのお家芸ともいえる速攻でやられ、フィールドゴール%、リバウンド数など、ほぼすべての項目でサンダーズは盛大に対して劣勢だった。
 5日の最終戦後に、2試合目を落とすことが多かったことについて水野HCは、「2試合目に強さを出し切れない。良い試合をした後に、着実に(戦術を最後まで)やり切ること、戦う意思を見せるということを、どう(翌日の試合に)続けていくのかが課題だった」と口にしている。そしてこう付け加えた。「練習前後の取り組みや練習の中での競争の習慣については手応えを感じている。まだ足りない部分もある中で、さらなる成長のためにはやり続けること、見据えるレベルや自分たちのスタンダードを高めていくこと、当たり前のことを当たり前にすることが必要。そのためには自分たちの意識を高めて、チームとしても選手個人としても結果につなげていきたい」

 また、シーズン終了後に行われた5月11日の囲み取材で、水野HCに2試合目に勝てない試合が多かったことについて改めて尋ねると、「まだ検証中」としながら、「1試合目で良かった部分を2試合目にさらに良くすることや、良かった部分をやり続けることができず、相手の良さが目立つような試合をやらせてしまった。2試合目は、相手も僕たちの良かった部分を出させないように策を練ってくる。僕たちはその策を上回って2試合目も勝てる状況に持っていかなければならなかった。そこが強いチームとの違いだと思った。僕が就任してからこの2年。チームとして成長している部分はあると思う。ただ、(CS進出という)目標を達成するには力が足りなかったのも事実。その責任を大きく受け止めていかなければいけない」と語った。

並里選手と共にWキャプテンを務めたトレイ・ジョーンズ選手。リーグを屈指の能力を誇りながら、キャプテンとしても出場機会の少ない選手の寄り添うなど、精神的な成長を見せた(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 では、目標のCS進出を果たすためには何が必要なのだろう。
 今シーズン、広島ドラゴンフライズから移籍した辻直人選手は「チーム力」と語る。そのチーム力を上げるためには、「一人一人が考え方を変える必要がある。勝つために何ができるか、チームに何ができるか、何を残せるのかを考えなければいけない。コミュニケーションを取り続けるのは難しいことだが、CSに出ているチームはそれができている。一つのプレーの捉え方、自分の役割の捉え方、そういうものが自分の価値につながる。それができれば、チーム力も上がっていくと思う。このチームに力があるのは自他ともに認めていることだと思うが、それがチーム力となると…(まだまだ足りない)。強豪に勝つ試合もあるけれど、勝ち続けるためには、僕は絶対にチーム力が必要だと思う」

 今シーズン、キャプテンを務めた並里成選手は、試合後の会見でたびたびチームに対し厳しい言葉を発していた。例えば4月27日の72-101で秋田に惨敗した試合。この敗戦でCS進出がなくなったことに並里選手は、「プレーだけの部分じゃなくて、やっぱり強いチームというのは60試合ある中の練習だったり、体のケアだったり、体の準備だったり、メンタルの準備だったり試合に入るまでのものができている。そこが本当にこのチームがCSに行くために改善していかないといけないというのは、今シーズン見えた部分ではあった」と苦言を呈した。
 それだけではない。まだCS進出争いをしていた3月27日の秋田戦。サンダーズは1Qに25-12とリードしながら、2Qは8-31と不甲斐ない戦いをし、結果、68-85で敗れている。この試合後に並里選手は、「コートにいた5人がセームページ(同じ考え)じゃなかった。それが2Qに出た。長いシーズン、日曜の後に水曜にも試合があってという時間のない中で、僕らが学ばないといけないのは、(決められたことを)完璧にやろうとしすぎて、何がポイントなのかが分からない時が出ていること。全部をやろうとせずにポイントを絞って、シンプルにやり続けることが大事だと思う」と語っていた。

シーズン終盤には積極的にシュートを打つなどオフェンスでも成長を見せた菅原暉選手。来季は攻守共にレベルアップした姿が見られるだろう(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

 B1リーグ2023-24シーズンは、広島が琉球とのチャンピオンシップ ファイナルを制し、B2経験チームとして初の王者に輝いた。サンダーズが目指すのもBリーグトップの座。共にB2を戦い、2019-20シーズンに1年早くトップリーグに昇格した広島のB1制覇という偉業をサンダーズも追いたいところだ。
 勝てる試合を落とすことが多かった昨シーズンの反省から、「試合巧者」を目指すべく大型補強を実施。他チームから「タレント揃い」と言われるほど、今シーズンは戦力は整っていた。もちろん、リーグの序盤と終盤に主力選手が2人ずつ抜けるという非常事態に陥ったものの、戦力が揃ったリーグ中盤の9連勝した後に勝ち続けられなかったのは、やはりチーム力の問題なのではないだろうか。
 来季は、辻選手が指摘していた「チーム力」を向上させることがCS進出の鍵となろう。

B1リーグでスティール王に輝いたコー・フリッピン選手。ボールを奪い、速攻でシュートまで持って行くプレーは圧巻。来季もサンダーズに残ることが決まった(2024年5月5日仙台戦、オープンハウスアリーナ太田)

<レギュラーシーズンの順位>
東地区4位、総合順位13位

<クラブ> ※カッコ内は2022-23シーズン
■平均得点 80.0点/11位(81.7点/8位)
■平均失点 81.9点/9位(83.2点/6位)
■3P成功率 33.5%/11位(32.8%/16位)
■平均リバウンド 34.3本/23位(35.9本/19位)
■平均アシスト 19.8本/4位(22.7本/1位)
■平均スティール 7.7本/3位(6.5本/15位)

<個人>
■スティール王/コー・フリッピン(1.9本)

<了>