「間違いなくスーパースターの道をたどっていく」と並里成も絶賛! 東海大2年のハーパーが1月29日の琉球戦で初出場

群馬クレインサンダーズ
ハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア

琉球のコ・フリッピンのディフェンスを抜きにかかるハーパー

 1月29日の琉球ゴールデンキングス戦で、現在、東海大学2年生のハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(19歳)は、サンダーズの選手として初めて試合に出場した。2Qのスタートからコートに立つと、直後に琉球のアレン・ダーラムからボールをスティールし、ジャスティン・キーナンのフリースロー2得点につなげた。2Q残り7分26秒に自ら3ポイントシュートを放ち、22-19とサンダーズは逆転に成功。そのわずか40秒後にも3ポイントシュートを決めたのをきっかけにチームは勢いづき、3Q終了時点で58-48と琉球に10点差をつけた。

 「自分の地元である琉球との試合で自分が出る機会があれば、ボールをもらったらすぐにシュートを狙おうと準備していたので、こうやって3ポイントを決められたのもよかったです」と、サンダーズでの初得点の感想を語ったハーパー。

 特に最初に決めた3ポイントシュートについては、「シュートのムーブ(シュートまでの動き)をずっと練習してきたので、そこでナリト(並里成)さんがダイレクトにパスを出してくれたので、すごく打ちやすかったです。ナリトさんがパスを出してくれたからこそ、シュートが打てたのかなと思います」と、憧れの先輩とのコンビネーションで生まれたシュートを振り返った。

 2月9日で20歳となる特別指定選手が、サンダーズのコートに初めて立って、わずか2分半で落ち着いて3ポイントシュートを決められるものなのだろうか。

 そこにはハーパーの日々の努力があった。2年前の高校3年次に地元の琉球ゴールデンキングスに、リーグ最年少で出場し、翌日の試合ではフリースローでリーグ最年少得点記録を更新したものの、課題が残るB1リーグで戦う上での課題が浮き彫りになった。

 「2年前は緊張もありましたし、自分のプレーの幅も狭くて、アウトサイドシュートはほぼありませんでした」。この課題克服のため、「2年かけてアウトサイドシュートを磨いてきた」というハーパーは、サンダーズでの最初の試合で念願のアウトサイドシュートを決めたことに、「2本決めることができてよかったです」と笑顔を見せた。

水野HCや琉球の桶谷HCも絶賛した「B1トップレベル」のディフェンス

 また、ディフェンスでも能力の高さを発揮。古巣の指揮官である桶谷大HCは29日の試合後に、「前からのボールプレッシャーはやっぱりすごかったですね。正直、このB1でもトップレベルのボールプレッシャーのかけ方だったと思いますし、やっぱり1対1ではなかなか(彼のディフェンスを)はがせない。ボールを運ぶのに結構、苦労したなと思います」とかつての“教え子”を評価した。

 琉球で一緒にプレーした岸本隆一もハーパーについてこう答えている。

「前回一緒にプレーしたよりも成長していると思いますし、ディフェンスの部分でも、彼が前からずっとボールプレッシャーをかけていて、プレッシャーの堅さも以前よりも増していました。重要な局面を任せられるような雰囲気を感じたので、すごく成長しているんだろうなと感じました」

 1月3日にサンダーズの特別指定選手として加入。同月18日のアルバルク東京戦でベンチメンバー入りを果たした。シュート前のアウトサイドシュートの練習では緊張からなのだろうか、なかなか決めることができなかった。
 
 29日の琉球戦では、「とりあえず楽しむことを意識していました。試合に出る前に緊張していたのですが、HCやカイル(・ベイリー アシスタントコーチ)が『とりあえず楽しめ』と声をかけてくださったので、そこで緊張がほどけて、『楽しむぞ』と気持ちを切り替えられました」と明かした。

 さらに試合中は、並里からの「焦らなくていいから」の言葉で落ち着き、プレーで迷った際には「やれ、やれ!」と励まされ、そのおかげでサンダーズでのデビュー戦は「自信を持ってプレーできた」と満足げな表情を浮かべた。

試合後の会見で、新人とは思えないほど落ち着いて質問に答えるハーパー

 ハーパーについて水野HCは、試合後の会見でこうコメントしている。

 「彼はまだ合流して間もないので、なかなか僕たちのシステム自体を全部理解しているわけではないですが、ただ一つ言えるところは、日々の練習では僕たちの一つひとつの声かけを真摯に聞いて、少しでも多くのものを吸収して戦えるようにしたいと思ってプレーをしてくれています。これから本当に伸びる可能性がある選手だなと思います。彼の持ち味は、高い位置からピックアップしてディフェンスでプレッシャーをかけてプレーをすることです。そういうところで自分たちのディフェンスの強度を上げる役割の一端を担ってくれたと思います。正直、僕としては彼のパフォーマンスに刺激されたチームメイトが、自分たちの役割を果たすためにさらに成長してくれればいいと思います。特別指定の間、彼の成長のために僕たちもサポートしたいと思っていますし、それと同時に、チームとしても彼から盗めるものは盗みたいと思っています。もちろん、彼が僕らから盗めるものは盗んでいってほしいですし、いい意味での相乗効果が得られればいいと思っています」

 試合中にハーパーから「今どういう状況なのか」を聞かれた並里は、「プレーしながらでもゲームの流れを把握しようとしているし、『今ここで僕が何を考えているのか』を吸収しようとしているのかなとも感じました。やっぱりすごい(選手だ)なと思いました」と一緒に戦った感想を語ってくれた。そして、「新人とは思えなかったし、彼は間違いなくスーパースターの道をたどっていくと思います。小さい頃から知っているので、僕も全力で彼をサポートしていきたいし、今日は彼にとって大きなステップになったんじゃないかと思います」とエールを送った。
 
 並里を兄のように慕うハーパーは、その背中を追いかけ、地元沖縄の同じ中学(ゴザ中学校)、同じ高校(福岡第一高校)に通い、2年前の特別指定の時は、並里の所属する琉球を選んだ。今季は並里の移籍に伴い特別指定でサンダーズに加入したほど、ハーパーにとって並里は憧れでもあり目標とする選手でもある。

 そして、もう一人の憧れの選手が、河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)である。河村もまた、高校(福岡第一)と大学(東海大学)の先輩である。「いつか勇輝さんとマッチアップして、成長した姿を見せられたらと思っています」

2Pシュートを決めるハーパー。サンダーズの選手として初出場ながら12得点を挙げた

 ハーパーの高い能力は、バスケットに貪欲に、そしてひたむきに練習に取り組んだ結果でもある。試合中に、並里が何を考えてプレーしているのかを吸収しようとする姿勢は、プロバスケットボール選手を目指している子どもたちの手本となろう。20歳の選手が見せる「B1でもトップレベルのボールプレッシャー」は、多くの人たちに見て欲しいと思う。

<了>

バスケットLIVEアプリの応援機能で、毎試合、最も多くの応援「ファイヤー」を集めた選手に贈られる「ON FIRE賞。29日の試合ではハーパーが受賞した

■1月29日琉球戦のハーパーの記録
得点…12
2Pシュート…2/2(100.0%)
3Pシュート…2/5(40.0%)
フリースロー…2/2(100%)
オフェンスリバウンド…0
ディフェンスリバウンド…2
アシスト…2
ターンオーバー…2
スティール…2
+/- …7

■Profile
ハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア

2003年2月9日生まれ、沖縄県出身。ゴザ中学~福岡第一高校~東海大学(在学中)。地元出身の並里成選手に憧れ、中学校でバスケを始める。高校3年の時にU-16代表メンバーに選出されただけでなく、特別指定選手として地元の琉球ゴールデンキングスと契約。今季は、サンダーズと特別指定選手契約を結び、トップレベルで試合経験を積む。180㎝・80㎏、ポジションはポイントガード(PG)、背番号0。