群馬クレインサンダーズ、期待の若手2人が今季の手応えと意気込みを語る。

菅原 暉×八村阿蓮

大学時代の日本代表の合宿から仲良くなった八村阿蓮(左)と菅原暉

10月19日に、桐生市内の体育館で練習後に菅原暉選手と八村阿蓮選手にインタビュー。強度の高い練習が集中して行われており、練習からもチームがレベルアップしていることがうかがえた。
開幕からスタメンで出場し、攻撃の起点となっている菅原選手と、持ち前のフィジカルの強さで相手の3ポイントシュートを阻止するなど見事なディフェンスを見せている八村選手に、今季のチームの手応えや意気込みを語ってもらった。

取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)

互いの選手としての印象
「阿蓮は、体の強さやポテンシャルがずば抜けている」(菅原)
「暉は、リーダーシップ力もあるし、ゲームメーク能力もあるし、自分でも点が取れる万能型の選手」(八村)

司令塔としての成長が著しい菅原

――2人はいつからの知り合いなのですか。

菅原 以前から阿蓮を知っていたんですが、仲良くなったのは大学のときに呼ばれた代表合宿です。

八村 僕が大学2年のときで…。

菅原 阿蓮が1年のときじゃない? 僕が大学2年から3年に上がるときの(東京での)代表の合宿だったので。

――互いにどんな印象だったのでしょうか。

菅原 何だろうな…。陽気な人かと思ったら、意外に静かで、マイペースなので、想像していたのとは違いました。でも、うるさいときは、うるさいですけど(笑)。

八村 暉は逆に、静かなのかなと思っていたけど、しゃべるというか…、プレーとは違う印象でした。

――当時、互いのプレーをどう思っていたのですか。

菅原 阿蓮は大学のときはずっとインサイドをやっていて、その中で体の強さやポテンシャルがずば抜けているなと思いました。

八村 暉は、筑波でずっと下級生から試合に出ていて、あの(能力の高い)メンツをまとめるリーダーシップ力もあるし、ゲームメーク能力もあるし、それで自分でも点が取れる万能型の選手だなと思って見ていました。

――今、2人ともサンダーズでプレーしていますが、菅原さんは昨年、八村選手が特別指定選手として加入すると聞いたときどう思いましたか。

菅原 僕としては、ずっと阿蓮にサンダーズに来てほしいと思っていて、阿蓮とも連絡を取り合ったりしていたんです。阿蓮のサンダーズへの加入が決まったとき、本当にうれしかったです。「この世代で阿蓮が一番じゃないか」と、加入が決まる前からずっとチーム側に話をしていたんです。

――八村さんのどういうところがチームの武器になると?

菅原 将来性もそうですし、大学でずっと活躍していたというのもあります。サイズの大きい選手で、なかなか外(アウトサイド)もできる選手はいないので、阿蓮が来てくれればいいなと思いました。

――八村さんは、菅原さんから熱烈なオファーを受けていたのですね。

八村 すごくうれしかったですね。暉とは仲もよかったですし、そういうふうに見てくれているというのはすごく感じていたので、サンダーズで一緒にプレーできてうれしいです。

試合でも潜在能力の高さを見せている八村

――八村さんは、昨年12月の入団会見で、サンダーズで新しいチャレンジをしたいと言って、4、5番から3番にポジションを変更しています。

八村 今、結構、順調に3番ポジションにコンバートしていけていると思っています。

――昨シーズン、菅原さんにとってはルーキーイヤーで、八村さんは特別指定での途中加入でした。それぞれどんなシーズンでしたか。

菅原 新型コロナウイルス感染症やけが人続出の影響、思い通りのプレーができなかったり、チームが勝てなかったりといろんなことがあったので、なかなか評価するのは難しいですが、個人としてもチームとしても納得していません。思い通りにプレーできなかったことについては、自分自身の原因でもあるので、もう一度見つめ直して今シーズンに臨んでいます。

八村 僕は途中加入ということで難しいところはあったんですが、プレータイムもあまりもらえなかった時期だったので、自分としては複雑な心境というか…、どうしたらいいか分からなかったんです。今シーズンは、自分のやるべきことをやれているので、いいシーズンになりそうだなと思っています。

オフはアメリカでトレーニング
「NBA選手はすごく練習しているなという印象。刺激になりました」(菅原)
「バスケを忘れないようにトレーニング。その中でもシューティング練習を多くしたかな」(八村)

――昨シーズンが終わったオフ期間に2人ともアメリカに行っていましたが、どういう経緯でアメリカに行くことになったのですか。

菅原 具体的に覚えていないのですが、自然とそんな話になって、(酒井達晶、西柳信希)アシスタントコーチと「行くか」となって、3人でアメリカに行きました。阿蓮は1人でアメリカに行ったんです。

八村 もともと家族(兄の塁)がアメリカにいるので、オフには行く予定でした。

――どれくらいの期間、アメリアに行っていたのですか。

菅原 10日間です。

八村 僕は1カ月半ぐらい。

――アメリカではどんなトレーニングを?

菅原 僕がトレーニングをしたのは、マンツーマンで1時間ぐらい(プレーを)見てくれる所でした。ステップや、オフザボールの動き方などを見てもらったり、あとはピックアップゲームをしたりしていました。現地の人たちとたくさんプレーできたのはよかったです。アメリカに行って、めちゃめちゃためになりました。
 現地でNBA選手も見たんですが、すごく練習をしているなという印象でした。朝早くから活動して、ピックアップの練習が終わったらすぐにシューティングを始めて、それを当たり前としてやっていたのはすごく刺激になりました。

八村 僕はそんな特別なことはしていなくて、体が鈍らないようにワークアウトとかトレーニングをしていました。バスケを忘れないようにという感じです。その中でもシューティング練習は結構、多くしたかなと思います。

新ヘッドコーチの下で進化するチーム
「ディフェンスの意識は昨季より高くなっている」(菅原)
「役割の中で、3ポイントを打てるときは絶対に打つ」(八村)

今季は、開幕戦からスタートで出場している菅原。司令塔としてコート上でしっかり他の選手たちをまとめる(2022年10月1日、滋賀レイクス戦、太田市運動公園市民体育館)
今季は積極的にシュートを狙うだけでなく、相手の3ポイントシュートを防ぐなど、ディフェンスでも奮闘する八村(2022年10月1日、滋賀レイクス戦、太田市運動公園市民体育館)

――今シーズンは、水野宏太ヘッドコーチに代わりましたが、チームにどんな変化が現れたと思いますか。

菅原 昨シーズンのチームとは全然違います。昨シーズンより、細かい決まりが多くなり、自分の役割が明確です。ディフェンスの意識も昨シーズンより高くなっています。

八村 僕は最初からいたわけではないのでチーム状況についてはすべて分からないですけど、フリーで攻める場面が多かったと思います。今シーズンはそれぞれの選手にしっかりと役割があります。その中で僕だったら3ポイントシュートを打てるときには絶対に打つようにしています。昨シーズンとはそういうところが違うと思います。

――それぞれがチームに求められていることとは何ですか。

菅原 まずはポイントガード(PG)として、(コート上の選手たちを)しっかりまとめることです。昨シーズンは(試合中に)悪い状況になったときに、個人に頼ることが多かったんですが、今シーズンは、5人で打開できるように自分が起点となって攻めていこうと思っています。ディフェンスでもしっかり前からプレッシャーをかけていこうと思います。

八村 ディフェンスで、マッチアップする選手をフィジカルに守ることです。田中大貴選手、安藤周人(アルバルク東京)といったレベルの高い選手とマッチアップすることもあるのですが、彼らはフィジカルに守られると嫌だと思うんです。

――開幕から6試合が終わりましたが、自分の役割を果たせていると感じますか。

菅原 まだシーズンが始まったばかりなので、もっとやれるんじゃないかと思っています。満足することなく、残り54試合をやり切りたいですね。

八村 僕も暉と同じで、まだまだできると思いますし、もっとアグレッシブにルーキーらしさを出して積極的にアピールしていきたいと思います。

――試合を見に来てくれたファンに、自分のプレーのどこを見てほしいですか。

菅原 ディフェンスを頑張っているところです。オフェンスと言ったら(あれもこれもと)キリがなくなりそうなので、ディフェンスを見てほしいです。

八村 僕は、フィジカルを生かした体を張ったディフェンスを見てほしいです。

――チームは、「ファンタジスタ」との異名をとる並里成選手と、ユーロリーグで活躍していたケーレブ・ターズースキー選手が加わり、レベルアップした印象です。今シーズンのチームに手ごたえを感じていますか。

菅原 はい。2人ともすごい選手ですし、チームのことを考えてプレーしているので、昨シーズンよりも確実にレベルが上がっていると思います。周りにもいい影響を与えてくれています。

八村 今シーズンは、(6試合を終えて)4勝2敗と、いいスタートが切れていると思います。まだ54試合残っていますが、ずっと上手くいくことはないので、チームとして上手くいかないときに、体を張ったディフェンスや士気を上げるプレーがチームを救います。そういうプレーを日ごろからやっていきたいと思います。

開幕戦の試合前、心を一つにする選手たち。今季は試合中にハドルを組むことが多い(2022年10月1日、
滋賀レイクス戦、太田市運動公園市民体育館)

――今シーズンのチームは優勝の可能性のあるチームだと思いますか。

八村 もちろん! まずはチャンピオンシップ出場を目指します。

菅原 簡単じゃないと思いますが、可能性はあると思います。

――最後に、ファンにメッセージをお願いします。

菅原 今シーズンのサンダーズは、昨シーズンよりもいいチームになっていると思うし、昨シーズン以上にいい結果を出して優勝を目指したいと思うので、応援をよろしくお願いします。

八村 シーズンの終わりには新アリーナもできますし、皆さんの応援が僕たちの力になります。ぜひ試合を生で観戦して、応援をしてもらいたいなと思います。

今季は、開幕戦から立ち見が出るほど大勢の観客がサンダーズ試合に訪れている。白熱した試合には、「しびれるゲーム」との声もブースターから聞こえた

<了>

■Profile
菅原 暉(すがわら・てる)

1998年5月27日生まれ、岩手県出身。筑波大学3年次に横浜ビー・コルセアーズに、4年次には群馬クレインサンダーズに特別指定選手として加入。大学3年でインカレ優勝、大学4年では主将としてインカレ準優勝を経験。U-18、22日本代表候補。今季は10月23日時点で9試合すべてでスタートから出場。平均得点5.6点、フィールドゴール成功率29.0%、3ポイントシュート成功率26.7%の成績。ポジションはPG、背番号14、183㎝・83㎏。

八村阿蓮(はちむら・あれん)
1999年12月20日生まれ、富山県出身。明成高校~東海大学。大学3年次にサンロッカーズ渋谷に、4年次にサンダーズに特別指定選手として入団。昨季は19試合出場で平均5分51秒のプレータイムが、今季は9試合で16分33秒にまで伸び、平均得点4.1点、フィールドゴール成功率36.4%、3ポイントシュート成功率37.5の成績を挙げている。U-16、18、22日本代表。ポジションはPF、背番号8、198㎝・102㎏。