群馬の高校野球2022 夏の注目校 健大高崎①

接戦に持ち込まないことが優勝へのカギ
強力打線を武器に、7年ぶりの甲子園出場に目指す

 7年ぶりの王者奪還を目指している健大。「正直、今年のチームは力的には最近の中で一番ないです。何とか下級生と3年生が上手く融合できればと思っています。(下級生の多い)まだ経験の浅いチームですが、全員の力で戦っていきます」と青栁博文監督は謙遜するが、県内屈指のタレントが揃い、夏に向けて戦力強化を図っている。

 まず注目したいのが、キャプテンの清水叶人である。2塁送球1.8秒台の強肩捕手で、プロ注目の選手である。健大は、埼玉西武ライオンズの柘植世那、阪神タイガースの長坂拳弥というNBPで活躍する捕手を輩出しており、清水も、先輩たちに続くプロ入りが期待されている。「肩がよくて、高校生でもトップクラス」と青栁博文監督もその実力に太鼓判を押す。清水は打の中心でもあり、中距離打者で、ホームランも打てる今年の健大野球を引っ張るリーダーである。

 そして1年生ながら、夏の活躍が期待されるのが田中陽翔。父は、元東京ヤクルトスワローズの投手・田中充氏だ。田中は中学の時に父の元同僚だった宮本慎也氏から指導を受けており、遊撃手としての守備の技術を叩きこまれている。青栁監督も「(去年の)中3世代ではナンバーワンの選手。安定した守備に、肩が強いところがいい。プレーも落ち着いている」と高評価。今春の終盤からレギュラーとして試合に出場し、経験を積んでいる。

 投手の中心は、エースの芹沢一晃。丁寧で大胆な投球が光る変則右腕で、今春、急成長した選手の一人。ストレート、カーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを駆使して打者を翻弄。打たせて取る投球術には目を見張るものがある。春は2回戦の高崎東戦に先発して以降、体調不良でベンチ入りできなかったが、春季関東大会2回戦の桐光学園に先発。変化球を巧みに使った投球で6-1の1失点完投勝利を収め、その実力を見せつけた。夏の活躍が楽しみな選手である。
 小玉湧斗や、2年生の加藤達哉と狩野陸人も試合経験を積んでおり、健大の投手陣の層は厚い。

グラウンドに掲げられたスローガンのように、チーム一丸となって夏を戦う
夏の全国制覇を目指す健大

 力のある健大だが、近年は前橋育英という壁に阻まれ、甲子園出場を逃している。春の決勝戦では、1点リードをしながら、8、9回に点を取られて1-2で逆転負け。青栁監督も「育英に、最後のところで負けることが多い。苦手意識はないようにしているが、どうしてもああいう形になってしまう」と首をひねる。「3点、4点もリードして最終回を迎えられれば違うんだろうけど」と言い、「点を取れる時に取ってリードしておくこと。接戦に持ち込まないこと」と課題を口にした。そして最後にこう付け加えた。「接戦で勝つことも大事ですけどね」

 今年は、上位から下位まで、まんべんなく点が取れる打線を武器にする健大。甲子園をかけた健大の戦いは、7月15日から始まる。

<了>