苦しいときに攻守両面でしっかりプレーできれば、サンダーズは強豪チームになる!

2021年12月17日に東京・銀座で行われた八村阿蓮の入団会見で、才能あふれる若い選手の獲得に笑顔を見せた吉田ゼネラルマネジャー(右)

群馬クレインサンダーズGM
吉田 真太郎

2020-21シーズンのレギュラーシーズンを52勝5敗とこれまでのB2最多勝利数を更新し、チームが掲げたスローガンのように「前人未到」の成績でB1昇格を果たした群馬クレインサンダーズ。B1昇格1年目の今シーズンも、25勝30敗とB1昇格初年度の最多勝利数を更新する活躍を見せた。
5月30日にチームを率いたトーマス・ウィスマンHC(ヘッドコーチ)の契約満了が発表され、来シーズンは新たなスタッフ陣で臨む。サンダーズの強化を担当する吉田真太郎GMに、今シーズンの振り返りと共に、来シーズンのチーム構想について話を聞いた。

取材/星野 志保、取材日/2022年5月19日

課題が見えた1年。
目標が明確になった

――今シーズンの目標に掲げていたチャンピオンシップ進出は叶いませんでしたが、信州ブレイブウォリアーズが持っていたB1昇格初年度最多勝利数20を超えて、25勝30敗でシーズンを終えました。今シーズンのチームをどのように評価していますか。

吉田 B1昇格初年度なので、ある意味、チャレンジャーとして1年間戦いました。怪我人の続出や新型コロナウイルスに感染するなど、だいぶ難しい、タフなシーズンになりました。その中で、B1昇格初年度の最多勝利数を更新できたことは、選手たちが頑張ってくれた結果だと思っています。

――勝率0.45で東地区7位。一時は、もう少しでチャンピオンシップ進出に手が届きそうなところまで行きました。チャンピオンシップ進出を逃した原因についてどう見ていますか。

吉田 チャンピオンシップに行けなかったからダメというわけではなく、次につながるシーズンになったと思っています。1年目にしっかり課題が見えましたので、課題を改善し、次の目標を立てられるシーズンになったという意味では、ポジティブに考えています。ただ、ファンの皆様やスポンサー企業様、太田市の皆様の期待に応えられなかったことは申し訳ない気持ちでいっぱいです。

――その見えた課題とは、何だったのでしょう。

吉田 オフェンス面で考えると、個の実力はトップクラスです。ただディフェンスに関しては、大きな課題を抱えていました。特に、チームディフェンスのところ。チームディフェンスの細かい部分は、来シーズンに向けて改善していく必要があります。

――選手たちの勝ちたいという気持ちが強すぎて、意図するチームディフェンスができなかったという印象があります。

吉田 けがやコロナで、コンディションが上がらない期間はシーズンを通して長くありました。戦線離脱していた選手をシーズン通して出していたので、チームのコンディションを上げるのにだいぶ苦労していた印象はありました。その中で、マイケル・パーカーは全試合に出場したので、さすがだなと思いました。

40歳のマイケル・パーカーは、今シーズン全試合スタメンで出場した(2022年4月24日横浜戦)

――前シーズン、B2のプレーオフファイナルまで戦っていたため、チーム強化の面で他チームに比べ出遅れたのではないですか。

吉田 どうなんでしょう?(五十嵐)圭さんやアキ(・チェンバース)、(野本)建吾が来てくれたので、選手の補強の部分ではスケジュール的にはそれほどきつくはありませんでした。一方で、平岡富士貴ヘッドコーチをはじめコーチ陣たちが新潟アルビレックスBBに移籍してしまったので、スタッフ陣の補強のところはかなりタフでしたね。最終的なスタッフ陣は、若手のアシスタントコーチ(AC)とベテランのヘッドコーチ(HC)の組み合わせにしました。

――トーマス・ウィスマンHCの指揮については、どう見ていましたか。

吉田 1年という期間で、戦いぶりを評価するのは難しいですね。いいときもあれば、よくないときもあったということでしょうか。その中で、これから良くなるための課題が見つかりました。

――オフェンス面では比較的選手に任せていたようですが。

吉田 そうですね。自由にプレーさせることが多かったので。その点で、サンダーズがこれから強豪チームになっていく中で、苦しいときにいかにオフェンスもディフェンスもしっかりできるかが大切なんだと、私自身、勉強になりました。ただ、選手の能力自体は、ウチはかなり高いと思います。

――シーズン終盤、菅原暉選手、八村阿蓮選手は出場時間の短い中で、実力をつけました。

吉田 テル(菅原)、アレン(八村)は、シーズン後半には完全に戦力になっていました。試合に出られない中でも努力し続けて、最後に彼らはしっかりとチームの戦力になりました。そこは評価すべきポイントだと思いますし、素晴らしい選手がサンダーズに入ってきてくれたことを嬉しく思います。

今シーズンの終盤にチームの戦力に成長した八村阿蓮(2022年3月23日横浜戦、太田市運動公園市民体育館)

――マイケル・パーカー選手と共に、今シーズンは全試合に出場した山崎稜選手も、効果的な3ポイントシュートでチームを助けるなど、結果を残しています。

吉田 今年1年で見たとき、ヤマ(山崎)は成長した選手です。良い意味で自信をつけたんじゃないかと思います。

――移籍組の野本選手ですが、シーズン序盤はなかなかチームにフィットしませんでしたが、終盤にはチームの戦力になりました。

吉田 前提として、移籍してチームに馴染むことはすごく大変なことだと思います。彼の強みはハッスルすること。苦しい場面で彼がしっかりディフェンスをすることでチームを盛り上げてくれた場面が多かったと思います。出番が少なかった中で、準備をするのは精神的にかなり難しかったと思いますが、それでも常に準備し続け、最善を尽くそうとしてくれたところは評価できるポイントです。

――シーズン終盤になって、生き生きとした表情でプレーしていた野本選手が印象的でした。

吉田 ケンゴ(野本)なりに悩みもあったと思います。そんな中でちょっと吹っ切れた部分と、自分がやるべきことを見つけてハッスルして、チームを盛り上げてくれました。

――五十嵐選手も最初はどうプレーしたらいいのか迷うようなシーンも見られましたが、後半にはチームにフィットし、勝利に貢献しました。

吉田 どんな状況であれ、アジャストしてチームを引っ張っていくところはさすがだなと思っていました。シーズンの後半には、圭さんのプレーで勝てた試合もありました。

インサイドでは高さと機動力+起点になる選手を補強したい。
新HCと話し合いながら選手選定を進めている

――来シーズンの補強ポイントを教えてください。

吉田 まずはしっかりとチームを作っていかなければなりません。これから群馬クレインサンダーズの文化を作っていくという意味では、スタッフ陣をしっかりと揃えていく必要があります。ここは、今シーズンの1番の課題として感じたところです。もちろん、選手の補強もしなければなりませんが、まずはしっかりとスタッフ陣を揃え、チームを作り上げていく1年になるのかなと思います。

――もう選手と交渉はされていると思いますが、どんな選手を補強したいと考えているのですか。

吉田 インサイドでは、高さ+機動力。アウトサイドでは、ウチの強みである機動力+起点になれる選手。選手については今、新しくHCに就任する方と検討しています。

――新しいHCですが、発表になったら皆、驚くような人ですか。

吉田 どうなんでしょう。ファンの皆様はどう思うのかは分からないですが、私の評価はエネルギーあって、戦術にも長けていて、コミュニケーションも良好にとれて、実績もある方というイメージですね。

――2018-19シーズンに、B2で優勝した信州、準優勝のサンダーズがB1ライセンスを持たなかったため3位の島根がB1自動昇格しました。その島根が、今シーズンは西地区2位でチャンピオンシップに進出し、アルバルク東京を準々決勝で下し、準決勝に進みました。島根は、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが主要株主になったことで、今シーズンは安藤誓哉をアルバルク東京から、金丸晃輔をシーホース三河から獲得しただけでなく、ニュージーランド代表HCの経験があるポール・ヘナレ氏をHCに招聘するなど大型補強を行いました。島根の今シーズンの活躍をどのように見ていましたか。

吉田 刺激的ですよね。毎シーズン、チャンピオンシップには同じチームが出ているという状況を、島根が打破してくれました。それに関しては面白いと思いますし、我々もそれに続きたいとより強く思いました。

――島根は、安藤誓哉選手など、力のある選手たちを補強できたことが今シーズンの躍進につながったと思います。

吉田 もちろん、そういう選手を補強するのも大事ですが、まずは、サンダーズはこういうバスケをするんだという「文化」を作っていくことが大事なのかなと思います。今シーズンは、外国籍選手の能力を生かして、自由にプレーさせて、何とか勝ちを取りに行っている感じでした。ディフェンス面、オフェンス面で、チームとしてこう戦っていくんだというものを作っていかなければならないと考えています。1年、2年でできるかどうかわからないですが、チームの強みを作っていきたいですね。

――理想のチームはありますか。

吉田 近いのは、宇都宮ブレックスです。選手たちがチームバスケットボールをしっかり理解して遂行している印象があります。それぞれの選手がそれぞれの役割をチームの勝利のために遂行している印象です。その中には自己犠牲もあります。宇都宮は数年かけて作り上げているバスケットボールだと思います。優勝するチーム、最後にファイナルに行くチームは、ディフェンス面でしっかりしている印象があるので、我々もそこを狙うのであれば、しっかりディフェンスをする文化を作っていく必要があると思っています。

「群馬にサンダーズあり」と
もっと強烈に示していきたい

――2026年から単年度の競技成績で昇降格のない新B1リーグ(仮称)が誕生します。新B1に参入するためには、平均入場者数4000人以上、売上高12億円以上などの厳しい基準をクリアしなければなりません。新B1リーグに参入するためにクラブとして強化すべきことは何でしょうか。

吉田 太田に移転して1年。多くの方々に応援していただいた感覚があるのですが、もっと強烈に、「群馬に群馬クレインサンダーズあり」ということを示していきたいですね。今シーズンは、新型コロナウイルス感染症の対策で、チケットの販売枚数の上限が1450枚でした。それが完売できたのはよかったのですが、来シーズンはもっと席数を増やして、コンスタントに入場者数2000人を超えるようにしていきたいと思います。目指すのは入場者数3000人です。

現在の太田市運動公園市民体育館の横に建設中の新アリーナ(2022年4月30日)

――太田アリーナ(仮称)はいつ完成する予定ですか。

吉田 来シーズンの最後の方だと思います。太田アリーナができたら、入場者数5000人はいきたいですね。

――集客でいうと、太田は駅から試合会場まで距離があり、遠方から公共交通機関を使って会場に来るお客様にとって不便な状況が続いています。

吉田 車で来る人たちのために駐車場を分散させるのと、駅から会場までのバスの巡回が取り急ぎ必要だと思っています。

――サンダーズでは、チアではなくダンスチームがパフォーマンスに起用したのはなぜだったのですか。

吉田 特に深い理由はないんです。どっちが面白いかなと考えたとき、なかなかダンスチームを見られるチームが少ないので、それをやったら面白いのかなと思いました。

――どうしたらお客様が楽しめるかと基準にして決めているのですね。

吉田 そうですね。お客様に夢や希望を感じてもらって応援してくれる人たちが増えない限り、事業は拡大していきません。お客様にどうしたら喜んでいただけるのかを考えることは、このクラブを運営していく上で、一番大事なことだと思っています。

――最後に、太田アリーナの魅力を教えてください。

吉田 アリーナの会場に入ったワクワクする感覚を、ぜひ多くの皆様に体感していただきたいと思っています。演出、映像でも日本バスケットボール界では一番レベルの高いモノになっていくんじゃないかと思うぐらいにしたいですね。目指せ、ディズニーランドでやっていますので、そこを目指して、まずは群馬にあるエンターテイメントとして一番のものにしていきたいと考えています。

<了>

■profile
吉田真太郎(よしだ・しんたろう)

1982年12月30日生まれ、静岡県出身。小4からバスケを始め、強豪・中央大学でもプレー。2005年にオープンハウス入社。現在、オープンハウス・ディベロップメント常務執行役員開発事業部長。19年6月から群馬クレインサンダーズの取締役も兼務。ゼネラルマネジャー(GM)としての役割も担う。

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