NBAで活躍する八村塁の弟・八村阿蓮が特別指定選手でサンダーズに加入。会見で入団への思いを語る。

サンダーズのユニフォームを手に記念撮影に応じる八村阿蓮。右は吉田真太郎GM

群馬クレインサンダーズに、特別指定選手として新たな選手が加わった。先日行われたインカレで準優勝した東海大学の八村阿蓮。NBAのワシントン・ウィザーズで活躍する八村塁の弟でもある。12月17日(金)にGINZA SIX内のOPENHOUSE GINZA SALON(東京都中央区)に開かれた会見で、吉田真太郎GMが語った獲得の経緯と、サンダーズへの入団が決まった八村の意気込みを紹介。さらに、翌日の秋田戦後に聞いた八村の入団に対してのトーマス・ウィスマンHC(ヘッドコーチ)と菅原暉のコメントも併せて紹介する。
取材/星野志保(Eikan Gunma編集部)

 サンダーズの吉田真太郎GMは、八村の獲得の経緯をこう語る。
 「体が強く、アグレッシブにプレーし、走力もあり、シュートも上手い。非常に賢い選手だなと思っていましたので、1年前から目を付けていました。縁あって夏ぐらいに一度会う機会があり、いろんな話をしました。その中で2つ、いいなあと思ったところがありました。
 まず1つは、目標は何ですかと質問したところ、『兄と日本代表で一緒にプレーしたい。日の丸を背負って戦える選手になりたい』と純粋に言っていました。学生ながら明確な目標を持っているなという印象を受けました。
 もう1つは、2度目に会う機会があったとき、彼と一緒にいると居心地がいいと感じました。性格もよくてすごい好青年だったので、『ぜひ群馬に来てください』とアピールしました。そしてインカレの前に彼は入団を決めてくれていまして、最終的にはインカレが終わった後に契約という流れになりました」
 インカレで優秀選手賞を受賞した八村に期待することを記者から聞かれた吉田GMは、「期待するというより、純粋に上手くなってほしいなと思っています。阿蓮自身が掲げた目標をしっかりと達成してほしいなと思っています。それが結果的にはサンダーズの発展につながると思っています」

 では、大学ナンバーワン選手との呼び声が高い八村が、サンダーズを選んだ理由は何だったのだろう。
「僕のことを一番に必要としてくださった印象でした。新しいことにチャレンジするチームで、プレーの幅も広がるのではないかと思いました。プロ生活の最初のチームなので、チャレンジすることがすごく大事だと思ってサンダーズへの入団を決めました」
 八村がサンダーズでチャレンジしたいのは、大学でプレーした4番ポジション(PF/パワーフォワード)ではなく、3番ポジション(SF/スモールフォワード)でプレーすること。それは、「日本代表では3番ポジションをやらなければいけない」からだ。4番ポジションはゴールに背を向けてプレーするが、3番ポジションはゴールに正対してプレーするので、八村いわく「感覚が全く違う」。3番ポジションをやるためには「3ポイントシュートもそうですが、外角(シュート)のスキルも必要ですし、そういうところを身につけていきたいと思います」と、日本代表を見据えた新たなポジションへのチャレンジに意気込んだ。
 会見翌日の18日、秋田戦後にウィスマンHCは、「アスレティックな選手で、フルコートでもかなりハードワークしてくれる選手です。大学では4番をやっていたが、プロでは3番をやりたいと言っているので、彼の成長を期待したい。彼の加入は楽しみで、チームにとっても本人にとっても非常に明るい未来が待っていると思います。ぜひ温かく見守ってください」と八村の加入についてコメント。
 八村の希望通り、サンダーズでは3番ポジション(SF)でプレーする。それは、「4番だと、Bリーグでは(八村の身長では)サイズが小さくなってしまうので、3番で育てていきたい」とのウィスマンHCの意向もある。
今回の加入にあたり、同じ特別指定選手としてサンダーズに1年早く加入した菅原暉には相談したという。
 菅原は、「彼からは相談は受けていました。僕からも『ぜひ来てほしい』というのと、彼のサンダーズでプレーしたいという気持ちが一致して、たまたま来てくれました。彼は今、4番ポジションですが、3番をやりたいと言っていたので、『僕たちのチームには強力な外国籍選手もいるし、その中で学べることもたくさんあると思う』と(サンダーズへの加入を)プッシュしました。僕も一緒にプレーして、彼の良さを生かしてあげたいなと思っています」と、仲のいい選手の加入に期待を膨らませた。そして、「食事に行ったり温泉に行ったりしたいと思います」と、八村の群馬入りを心待ちにしていた。

東海大学バスケットボール部監督の陸川章監督からのサプライズメッセージ

 会見では、東海大学の陸川章監督からビデオメッセージも披露された。
「八村阿蓮君。4年間本当にありがとう。これからは群馬クレインサンダーズでさらに活躍し、目標である日本代表に入ってください。心から応援しています」と恩師からの温かいメッセージに、八村から笑顔がこぼれた。

 いよいよ来月にはプロ選手としてコートに立つ八村だが、対戦したい相手は、東海大学のチームメートだった大倉颯太(千葉とプロ契約)と佐土原遼(広島と特別指定契約)の2人。「4年間(一緒に)戦ってきたので、対戦するのが楽しみです。対戦するからには負けたくないです」と、かつてのチームメートにライバル心をあらわにした。千葉とは3月19、20日に船橋アリーナで、広島とは3月26、27日に広島サンホールプラザで対戦する。
八村は、昨シーズンも特別指定選手してSR渋谷で2カ月間プレーし、プロバスケを経験している。大学とプロの違いについて八村はこう語る。
 「大学と違って、Bリーグには自分よりも背が高くてフィジカルが強くて速い選手が何人もいるので、そういった中で生き残るためにはスマートにプレーするのが大事だと思い、大学4年のときは賢くプレーすることを心掛けていました。トレーニングも体幹を鍛えたりしてBリーグを意識したトレーニングをしてきました」
八村は今月中にチームに合流する予定で、1月にはベンチ入りする見込み。八村のサンダーズでのプレーに注目してほしい。

12月20日に22歳の誕生日を迎える八村に、太田市名産のトマト「ブリックスナイン」22キロがプレゼントされた。このトマトは、筆者の叔父で、群馬県の職員だった阿部晴夫が1991年に開発。栽培過程で水分を制限して甘さを凝縮させた糖度9度以上のフルーツトマトである。出荷時期は1~6月。記者の求めに応じ、トマトを食べる前にポーズをとる八村

<了>

■プロフィール

八村阿蓮(はちむら・あれん)
1991年12月20日、富山県出身。明成高校から東海大学に進学。今年のインカレで準優勝し、優秀選手賞に選出された。各年代の日本代表にも選ばれている。2024年のパリ五輪出場を目指す。198㎝・98㎏。サンダーズでの背番号は8に決まった。