群馬県少年サッカー連盟は、より多くの子どもたちにサッカーの楽しさを感じてもらおうと、さまざまな改革に取り組んでいる。その一つが、11月23日(火・祝)に正田醤油スタジアム群馬で開催されたミルクカップ第45回GTV少年サッカー大会(ミルクカップ)だ。今年初めて実施されたミルクカップの2リーグ制について紹介する。
文/星野志保
プレミアリーグとプリンスリーグの
2リーグ制になったミルクカップ
ミルクカップの決勝戦は毎年、全国高校サッカー選手権大会群馬県大会決勝戦と同日に行われており、試合は群馬テレビで生中継される。毎年5~6月に開催される予選リーグを勝ち抜いた64チームが決勝リーグに進み、決勝戦と3位決定戦が正田醤油スタジアム群馬で行われていた。だが、今年からミルクカップはプレミアリーグとプリンスリーグの2リーグに分かれ、それぞれ決勝戦に残ったチームが正田醤油スタジアム群馬で試合を行った。
リーグ分けは、プレミアリーグには小学生総体に出場した県内64チームを、出場できなかった約80チームをプリンスリーグに振り分けた。プレミア、プリンス共に10~12ブロックで試合を行い、決勝リーグに進出する32チームずつ選んだ。
今年からミルクカップを2リーグ制にした理由は、近年、クラブチームとスポーツ少年団のレベルの差がますます大きくなったことがある。「試合をしても20-0で大差がつく試合もあり、こうした状況では子どもたちがゲームそのものを楽しめなくなっているのではないか」(牛久保敏之・群馬県少年サッカー連盟委員長)という懸念もあった。少子化の影響でサッカーをする子どもたちの数も減ってきている。チームの人数が8人に満たないために試合に参加できないチームもある。サッカー人口を増やすためにも、子どもたちにサッカーが楽しいと思ってもらえる環境づくりが急務になっていた。
こうした現状を打開しようと着手したのがミルクカップの改革だった。少年サッカーの主要な大会に、ミルクカップのほかに全日本U-12サッカー選手権大会、小学生総合体育大会サッカー大会(小学生総体)がある。小学生総体は上位3位までが関東大会に、全日本U-12サッカー選手権大会は優勝チームが12月に鹿児島で開催される全国大会に群馬県代表として出場する。しかし、ミルクカップは関東大会や全国大会にはつながらないため、リーグを2つのレベルに分けることが可能だった。
これまで、県内約150チームのうち半分以上のチームが県大会に出場できなかった。レベル分けをすれば、実力差のあるチームと戦って20―0で負けるという状況はなくなるだろう。子どもたちに勝つ喜びを与えることができ、頑張ればプリンスリーグの決勝に行けるチャンスもでき、決勝戦に行けば自分たちの試合をTV放送してもらえる。今回のミルクカップの2リーグ制は、子どもたちに夢と希望を与える改革となった。
今回、第一回目のプリンスリーグが行われたが、決勝戦に進出した大泉FCとファナティコスFBAの代表に話を聞いた。
毎年県大会出場の常連チームだが、今年はプリンスリーグに振り分けられた。大泉FCは今年からU-12とU-15を設け、クラブチームとして活動している。同クラブの代表で監督も務める根岸滋昌氏は、「子どもたちに、ここ(正田醤油スタジアム群馬)でプレーできる幸せとチャンスを与えてくれました。子どもたちにとって、このピッチで頑張って(決勝戦を)戦ったことはいいきっかけになります」と、好意的に受け止めている。また、女子チームのファナティコスFBAが決勝戦に進んだファナティコス総監督の若林秀行氏も「子どもたちに夢と希望、そしてチャンスを与えてくれます。自分の出ている試合がTVで放映されるなんて一生に一度あるかないかですから」と歓迎する。
一方で、ミルクカップのプレミアリーグの決勝リーグに出場できるチームが、昨年までの64チームから32チームに減ったため、決勝リーグに出場できなかったチームからの不満の声が挙がっている。
それに対し牛久保氏は、「リーグの振り分けの見直しで対応する」と語る。現在、4~10月に行われている4種リーグ(小学生のリーグ)は1~3部に分かれている。今年のように小学生総体の結果ではなく、この4種リーグでのシーズンを通しての成績でリーグ分けをすることも検討するという。ちなみにこの4種リーグの振り分けは、毎年1月に開催される群馬県少年サッカー新人大会(モスバーガー杯)の結果で決められている。
ミルクカップの決勝戦を
8人制のハーフコートで実施したい
今回、ミルクカップの2リーグ制を実施したが、決勝戦についての課題もある。それは、小学生年代の試合では、通常ハーフコートの8人制で開催される中で、ミルクカップの決勝戦だけはフルコートの11人制で実施されているからだ。決勝戦では高校サッカー選手権大会県予選のTV中継に続けてミルクカップも放送されるため、子どもたちは不慣れなフルコートの11人制で戦わなければならない。近年の事例であるが、ミルクカップ決勝戦に進んだチームが試合に出場する選手を揃えるために急遽3年生を入れざるを得なくなり、準決勝までの戦力を維持できない状況が発生している。せっかくの決勝の舞台で、決勝戦でいきなりフルコートの11人制で戦うことを子どもたちに強いるのは、決勝戦の意味をなさない。大人の都合でしかない。
少年サッカー連盟では、この課題を解消するため、全国高校サッカー選手権大会群馬県大会決勝戦とは別日でミルクカップの開催を検討中。群馬県高等学校体育連盟の了承は得ており、ミルクカップを協賛している群馬県牛乳販売農業協同組合連合会と群馬テレビには話を持ち掛けているところだ。課題は、高校サッカー選手権との別日での開催となると、放送するための経費が掛かってしまうところである。ミルクカップの魅力は、子どもたちの試合をTVで放送してもらえること。その経費の部分がクリアできれば、子どもたちはハーフコートの8人制で決勝戦を戦える。この問題を解決するためには、子どもたちのスポーツを応援してくれる多くの企業のサポートが不可欠だ。
子どもたちの数が減少している中で、部員不足で試合に参加できないチームも出てきている。特に、地元のスポーツ少年団での部員数の減少が目立つ。子どもたちにスポーツの楽しさを教えるだけでなく、スポーツを通して、心身の育成を重視するスポーツ少年団の活動の火を絶やしてはならない。ミルクカップの2リーグ化に賛否両論はあるが、多くの子どもたちにサッカーの楽しさを維持させ続けてあげるためにも、今回、思い切った改革を行った群馬県少年サッカー連盟にエールを送りたい。
<了>
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