サンダーズのベンチメンバーが躍動。今季最少失点で横浜を下す。

3ポイントシュートを85.7%の高確率で決め、チームの勝利に貢献したアキ・チェンバース(2021年11月10日横浜戦、太田市運動公園市民体育館)

11月10日の横浜戦はチームの成長を感じられる試合となった。これまで選手層の薄さが課題だったが、この試合で勝利の鍵を握ったのが、ベンチメンバーの活躍だったからだ。徐々に課題克服をしつつあるチームの姿を紹介する。
文・写真/星野志保(Eikan Gunma編集部)

 11月7日(日)の名古屋D戦から中2日で開催された横浜戦。トレイ・ジョーンズ、ジャスティン・キーナンの主力選手が精彩を欠いた。加えて、7日の名古屋D戦で五十嵐圭が負傷退場し、10日の試合前に「右足関節内外側靭帯損傷」で復帰時期は未定とのリリースがクラブから出されていた。主力のPGを欠く緊急事態の中、サンダーズはチームの結束力を強めた。
 横浜は、サンダーズの攻撃の要となるトレイ・ジョーンズを徹底的に抑える作戦で臨んだ。そのため、1Qのジョーズは得点0に封じられたが、笠井康平、マイケル・パーカー、アキ・チェンバーズ、オンドレイ・バルヴィン、菅原暉が得点を挙げ、17-19と2点差で横浜に食い下がった。

 2Qは、菅原が3ポイントシュートを2本中2本、チェンバースが3本中3本と、100%の確率で決める活躍を見せ、ディフェンスリバウンドも9本取り、相手にセカンドチャンスを与えなかった。それだけではなく、このQで横浜の得点をわずか9点に抑え、42-28と14点差に差を広げた。
 3Qは、ベンチベンバーが躍動。菅原、上江田勇樹、山崎稜、バルヴィンが果敢に得点を狙い、オフェンスリバウンドを取ってセカンドチャンスから得点につなげ、64-53とリードしたまま最終Qに臨んだ。
 4Qは、横浜のレイモンド・ハモンズに3ポイントシュート3本を含む17得点を許したものの、サンダーズもチェンバースが2本、山崎が1本の3ポイントシュートを決め、相手のファウルで獲得したフリースローも7本中8本を決めるなど、得点力で横浜を圧倒。84-75で横浜を下した。
 この試合で、群馬の得点源であるジョーンズとジャスティン・キーナンの得点がそれぞれ8得点、7得点に封じ込められたが、昨シーズンまで横浜に所属したチェンバースが古巣相手に26分の出場時間で21点を挙げ、決めた3ポイントシュートと2ポイントシュートは共に7本中6本の85.7%という驚異的な確率で決まった。
また、2019-20シーズンに特別指定選手として大学3年時に横浜に在籍していた菅原も、27分の出場時間を獲得し、3ポイントシュートは4本中3本、2ポイントは6本中5本を決めるなど潜在能力の高さを見せ、チームの勝利に貢献した。

わずか8得点に抑えられたサンダーズのスコアラー、トレイ・ジョーンズ。4Qにはファウルアウトした(2021年11月10日横浜戦、太田市運動公園市民体育館)

 試合後、トーマス・ウィスマンHCは、「チームのスコアラー(得点源)であるトレイ(・ジョーンズ)とジャスティン(・キーナン)が得点を伸ばせない中、それでも勝ち切ったということは、チームとして成長している証拠。非常にいい勝利だったと思う」と、笑顔を見せた。
 この試合で際立ったのが、ベンチメンバーの活躍だ。これまでは、ジョーンズ、キーナンといった主力頼りのチームだったことが影響し、4Qにスタミナ切れを起こして接戦を落とすことが多かった。勝利のためにはベンチスタートの活躍が待たれるところだったが、この横浜戦で挙げた84得点のうち41点はベンチからの選手の得点と、課題の一つを克服しつつあるようだ。

PGの得点が少ないと奮起し、チェンバースの21得点に次ぐ15点を挙げた菅原暉(2021年11月10日横浜戦、太田市運動公園市民体育館)


 今年3月に筑波大学を卒業してプロ選手としてのキャリアをスタートした菅原は、今年1月に特別指定選手でサンダーズに加入したもののケガで出場できず、今シーズンからサンダーズの選手として試合に出場している。「今年いきなりB1でプレーできていて、最初は受け身になったり、フワフワしている部分があったりして、なかなかチームに貢献することは難しかった。(五十嵐)圭さんがケガをして、やらなきゃいけないと自覚も芽生えて、アグレッシブ(積極的)に周りを生かしながら、自分でも効果的に点数を取りに行けるように考えていました」と、意識の変化を口にした。

 失点数もウィスマンHCが理想とする70点台に抑えられた。1試合の平均失点が90を超えていたが、横浜戦ではゾーンディフェンスが機能。2Qで相手を9点に抑えたのも大きい。
だが、解消されない課題もある。ターンオーバーが多いことだ。この試合でも13のターンオーバーを犯し、そこから15得点を横浜に与えている。ウィスマンHCも「まだまだターンオーバーの数は多い。そこをケアしていかないといけない」と語り、菅原も「チームとしてターンオーバーが多く、失点も多い。僕のポジション(PG)でしっかりゲームをコントロールしてターンオーバーを減らして、なおかつ高いインテンシティ(強度)で失点を減らし、それを40分間貫き通したい」と、課題克服に意欲を見せた。
 11月13日から、10勝2敗と勝率8割を超える西地区首位の沖縄と、今シーズンのオールスターの会場となる沖縄アリーナで対戦する。沖縄に2勝すれば、7勝7敗で勝率5割に乗せるが、そう簡単に勝てる相手ではない。横浜戦のようにチームで戦わなければ勝つのは難しい。ベンチスタートの選手たちの活躍が不可欠となる。沖縄戦でもチームの成長が見られるか――。ベンチメンバーの得点、失点数、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンス、ターンオーバーの数に注目して試合を見てほしい。

<了>