Bリーグの2021-22シーズンが開幕して1カ月が過ぎた。11月7日(日)の名古屋D戦までの11試合を4勝7敗で終えたサンダーズは、東地区11チーム中8位につける。開幕から9試合過ぎてもホーム戦で勝ち星がなかったが、11月6日(土)の名古屋D戦で今シーズンのホーム戦初勝利を挙げた。この11試合を通じ、チームの課題も明確になった。10月27日(水)のSR渋谷戦、11月6日(土)、7日(日)の3試合をピックアップし、サンダーズが直面しているその課題について解説しよう。
文・写真/星野志保(Eikan Gunma編集部)
ベンチスタートの選手たちが
今後の鍵を握る
10月23日(土)で秋田に82-88で惜敗したものの、24日(日)には100-83と圧勝し、27日(水)のSR渋谷戦を迎えたサンダーズ。「SR渋谷は、秋田と共にリーグで1、2位のディフェンスのプレッシャーの強さを誇るチーム」(トーマス・ウィスマンHC)だ。そのSR渋谷に1Qで23-23、2Qで19-18と互角に戦い、3Qには26-21と勝利を手繰り寄せたかに思えた。しかし、4Qになるとベンチ層の薄さが裏目に出た。
3QまでSR渋谷に対し、「非常にいいディフェンスで抑えてくれた」とウィスマンHCが選手たちを称えたが、集中したプレーでSR渋谷のオフェンスを抑えてきた影響が、4Qに主力選手たちのスタミナ切れという形で現れた。強度を上げたSR渋谷のディフェンスに対応できなくなったのだ。3Qまでのプレー時間が20分を超えたのが、アキ・チェンバース(27分)、トレイ・ジョーンズ(23分)、マイケル・パーカー(22分)、ジャスティン・キーナン(20分)とサンダーズの攻撃の要となる4選手たちだ。一方、SR渋谷で20分を超えた選手は、ジェームス・マイケル・マカドゥ(23分)とジョシュ・ハレルソン(23分)の2選手のみ。しかもベンチからスタートした若手選手の活躍で、「マカドゥとハレルソンを休ませられたのが大きかった」とSR渋谷の伊佐勉HCは勝った要因にベンチメンバーの活躍を挙げていた。
4Qにギアを上げたSR渋谷のディフェンスにより、サンダーズはターンオーバーを連発。試合の流れは一気に渋谷に傾いた。残り5分で相手に与えたフリースローで逆転を許し、そこから一気に点差を付けられ、4Qだけで30失点。85-92で勝てる試合を落としてしまった。
ウィスマンHCは試合後に、「今シーズン、接戦で負けている試合は4Qで離されてしまっている。今後、ベンチメンバーをどう使っていき、4Qをどう終わらせていくのかをしっかり考えていかないといけない」と語り、「(これまで戦った)千葉、宇都宮、三河、SR渋谷を見ても、ベンチメンバーが力強くプレーしている。今後、シーズンを通して自分たちのベンチメンバーも力強くプレーできるように成長させていかないといけない」と苦しい状況を吐露した。
11月6日(土)の名古屋D戦では、そのベンチメンバーの活躍が見られた。2Q、3Qではジョーンズの得点が0に抑えられたものの、菅原暉、上江田勇樹、山崎稜が攻守にわたり躍動。名古屋Dの1試合平均12本の3ポイントシュートを9本に抑えただけでなく、全員が得点を挙げるなど、チームとしての成長が現れた試合だった。
ウィスマンHCも「ベンチからの選手の活躍がよかった。特に2Q、3Qでベンチメンバーがしっかりつないでくれたので、4Qにフレッシュな状態でいつものメンバー(ジョーンズ、パーカー、キーナン、チェンバース)がプレーできた。ベンチメンバーに感謝している」と顔をほころばせた。
10月30日の天皇杯3次ラウンド・西宮戦で、「ベンチメンバーをしっかり使って成長させていく。プレータイムをシェアして、一人ひとりのプレータイムをコントロールしていく」を目標に掲げて戦ったのが奏功した試合だった。
リーグワーストの1試合平均90失点。
ディフェンスの強化が求められる
課題は、ベンチメンバーの層だけではない。ターンオーバーの多さと、セカンドチャンスのつながるオフェンスバウンドを相手に多く取られていることも挙げられる。この試合でもターンオーバーの数がサンダーズ18に対しSR渋谷が6。またターンオーバーからの得点は、サンダーズの2点に対しSR渋谷は26点。セカンドチャンスからの得点がサンダーズ5点に対しSR渋谷18点と、これらの数字からも勝てない理由がわかる。
11月7日(日)、名古屋Dに90-100で敗れた試合でもターンオーバーの多さを露呈。1Qで6つ、2Qで7つのターンオーバーの犯したのに対し、名古屋Dは1Q、2Q合わせて3つにとどまった。この前半の13ターンオーバーから名古屋Dに23点を取られているのに対し、サンダーズは相手のターンオーバーから2点しか取れていない。またオフェンスリバウンドでも前半はサンダーズがわずかに1本しか取れなかったのにSR渋谷は6本取っている。前半の得点が39―51と12点の差が開いたのも当然のことだ。
しかし、明るい兆しも見えた。3Q残り5分を切ったところで51-70と19点差がついたものの、ここからサンダーズが底力を見せ、4Q残り分15秒でオフェンスリバウンドからパーカーがジャンプショットを決め84-89と5点差に詰め、残り2分35秒でファウルを受けたチェンバースがフリースロー2本をきっちり決め86-89とわずか3点差まで縮めた。その直後に不運にもパーカーがアンスポーツマンライクファウルを取られて相手にフリースローを2本決められたところから試合の流れが名古屋Dに傾き始め、結局90-100で惜敗。ただ、ターンオーバーの数は、3Qで2、4Qに至っては0。オフェンスリバウンドも3Qで6本(名古屋Dは4本)、4Qで5本(名古屋Dは1本)と改善している。後半に巻き返せたのもターンオーバーが減ったこととオフェンスリバウンドを取れたことが影響している。
この試合後、ウィスマンHCは、「19点差ついたところからしっかり持ち直して選手たちはファイトしてくれた。試合の最初から出さないといけないと思っている」と、選手たちを評価しながらも課題を口にしたが、後半でターンオーバーを2に抑えられたのはチームにとっての成長の証として見ていいだろう。なぜならターンオーバーの数は11試合を終えた時点で183と、1試合平均で16.6。この数字はリーグで断トツに多い。ちなみにサンダーズの次に多いのがSR渋谷と富山の162。リーグで一番少ないのが島根の91である。
パーカーは、ターンオーバーが多い理由についてこう語る。
「相手チームがかなりのプレッシャーをかけてきて、そこで自分たちが焦ってプレーをしてしまっているのが要因。ターンオーバーも1つで終わらず、2つ、3つと続いてしまっている。もちろん相手のいいディフェンスからのスティールもあるが、ターンオーバーから簡単に得点を許してしまっているところが、非常に悪い状況を生んでいる」
現時点での課題は、ベンチメンバーの層の薄さ、ターンオーバーの多さ、オフェンスリバウンドが対戦相手よりも取れないことが挙げられるが、それも試合をこなしながらシーズンを通して改善していくだろう。
そしてもう一つ大きな課題がチームに立ちはだかっている。11試合を終え、失点数992はリーグ最多。1試合平均で90失点をしている計算になる。ちなみにサンダーズの次に失点数の多いのは滋賀で969失点。1試合の平均失点が90を超えているのはサンダーズだけだ。
これについてはウィスマンHCも「平均失点が90点に届いている状況では、いくら点を取っても勝てない試合が続いてしまう。必ずディフェンスを改善していきたい」と頭を抱える。
サンダーズは、11月7日時点で1試合の平均得点が22.7(リーグ1位)のジョーンズと、3ポイントの成功率54.8%(リーグ1位)のキーナンを擁する攻撃力の高いチームである。11月6日の名古屋D戦で、4Qだけでジョーンズが24点を上げるなど、1Qの得点数としてはリーグ最多記録を更新。だが、高い攻撃力だけでは勝てないことは、今シーズンのこれまでの結果が証明している。
「これまでのコーチのキャリアの中で、60、70点で平均失点を抑えてきたので、それに近づけるチームにしたい」とウィスマンHC。
今シーズンは、11月7日時点で60試合中11試合が終わったばかり。トレイを中心とした攻撃力を維持しつつ、ウィスマンHCの求める60、70点台に失点数を抑えられるチームになったとき、リーグ上位も見えてくるはずだ。
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