夏の高校野球2021 関東学園大附属高校 編

高校野球選抜大会群馬県大会が10日から始まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨夏は県独自の大会となり優勝しても甲子園にはつながらなかった。今夏は2年ぶりに甲子園につながる大会とあって、出場チーム61チームが夢の舞台である甲子園を目指して熱い戦いを繰り広げる。ここでは、今春の春の関東大会県予選で初優勝し、春の王者として夏に挑む関東学園大学附属学園を紹介する。他の強豪私立高校のようにスポーツ科があるわけではなく、公立高校と同じように一日の授業をすべて終えてからの練習になる。しかも全員通学生なので、限られた時間の練習で、確実に結果を出している。5月31日に野球部を取材し、強さの一端を探った。

取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)

限られた練習時間の中で集中して練習に取り組む選手たち。無駄な動きがないことに目を見張った

春の優勝は通過点。
挑戦者として夏の初戴冠に挑む

 2019年夏に準決勝進出して以降、19年秋から公式戦での勝利がなかった中で、今年の春の関東大会県予選初戦で桐生に3-2で辛勝してから調子を上げ、3回戦では桐生第一を、準々決勝では前橋東、準決勝で太田、決勝戦では農二を破り、創部以来、群馬の頂点に初めて立った。
 羽鳥達郎監督が2012年に同校の指導をするようになってから約10年。17年秋、18年春の決勝戦進出が最高順位で、いずれも健大に敗れている。また夏の大会では、これまで4度ベスト8入りするなど、今では私学強豪校の一角を担っている。

 羽鳥監督は10階年前に就任したときのチームのことを、「サークルのような部活で、普通のことを普通にさせるのが大変だった」と、2階にある監督室の窓からグラウンドに目を向け、練習に集中して取り組む選手たちの様子に満足した表情を浮かべながら、当時のことを懐かしそうに語った。伊奈学園総合高校から早稲田大学と、「野球のエリート街道」を歩んできた羽鳥監督にとって、その当時のチームの状況は衝撃的だっただろう。
 羽鳥監督がまず取り組んだのは、「箒(ほうき)を買うこと」だった。自分たちが使う部室などをキレイに掃除すること、制服のシャツのボタンをきちんと閉めて身だしなみを整えることなど、一つひとつの行動を整えることから指導が始まった。今では、技術やフィジカル面のトレーニングのほか、生活習慣も含め、選手それぞれ正しいことがちゃんとできるようになっている。その積み重ねが結果となって表れたのが、今年の春の大会での優勝だったのである。

トレーニングにも必死で取り組む

 これまでチームを成長させるために羽鳥監督は、「自分が高校時代、大学時代にやってきたことをそのまま教えるだけでは、どんなに頑張ってもベスト8止まり」と、野球の指導に役立ちそうだと思えば子育ての本さえ読むなど、さまざまなことに取り組んだ。昨冬からは、トレーナーを付けてピッチャー陣を強化している。球速だけでなく、強いボールを投げられるようにするため、投球数を増やして消耗させるのではなく、ブルペンで投げるのを週1回、投げても週2回制限し、投球数も週100球ぐらいに抑え、ピッチングフォームの改良に力を入れた。その成果が出て、ピッチャー陣の球速も上がった。 エースの石原勇斗が144㌔、篠原が145㌔、堀越蒼空が142㌔、須藤拓也が136㌔と速球派が揃うようになった。チームの二枚看板である石原、篠原もさらなる球速アップに取り組んでいる。
 チーム全体では、瞬発力を上げるトレーニングを多く取り入れるだけでなく、「どんな形からでも点を取る」と、得点能力を伸ばすことにも取り組んでいる。これは、春の関東大会2回戦の桐光学園との対戦で、全国レベルのピッチャーを打てなかった課題が生きている。選手一人ひとりが足りないものを身に染みて感じた一戦に、「それが財産」と羽鳥監督は言う。
 野手陣で注目したいのが、速球派4投手をリードする捕手の福岡莉空。投手の良さを引き出すリードが光る。攻撃でも4番を任され、攻守の要となっている。このほか、50㍍5.9秒の俊足・野澤伯をはじめ、藤生海斗らの「フライの守備範囲は天下一品」と羽鳥監督はべた褒めする外野陣の動きにも注視したい。

 「春の優勝は通過点」と捉えている関東学園大附属高校が、いよいよ16日に初戦を迎える。夏の初戴冠を目指すチームが、春からどんな進化をしているのか――。野手陣の守備力の高さと投手陣の好投が楽しみである。

■注目選手に聞く

新井 蓮

あらい・れん
キャプテン、内野手、3年、172㎝・75㎏、右投右打、九合流星(小1~)~桐生ボーイズ(太田東中)

部員57人をまとめる新井 蓮キャプテン

 春は、チームとしての初めての優勝だったので、嬉しい気持ちでいっぱいでした。

 関東大会では、桐光学園に1-0で敗れ、相手ピッチャーの140㌔後半の力強い球を捉えることができなかったので、チームとしてバッティング力を上げないとダメだと実感しました。夏に向け、群馬の各チームの投手力をさらに上げてくるので、桐光学園のときのようなピッチャーを打てないとダメだと感じました。関東大会に出場したことはチームとして刺激になったので、ピッチャーから流れを作る試合をしたいです。ウチのチームは、健大のようにホームランで点を取るのではなく、バントやサインプレーで1点を取っていくスタイルなので、打線の強いチームに対しても、自分たちのスタイルを変えることなくやっていきたいと思います。

 夏に対戦したい相手は、秋の1回戦で2-4で敗れている前橋育英です。そのときは自分たちのチームはまだ未熟で、力の差で負けました。冬にトレーニングを積んで、春の大会と関東大会と経験してきたことを力に変えて、もう一度、前橋育英と対戦して、自分たちの力がどこまで通用するのかを試したいです。強豪チームとの対戦は、一球で試合が決まってしまう怖さがあります。練習から一球を大事にして、隙のないプレーで負けないチームを作っていきたいと思います。

福岡莉空

ふくおか・りく
捕手、3年、169㎝・71㎏、右投右打、騎西少年野球クラブ(小1から)~久喜リトルシニア(加須騎西中)

関学大附の扇の要であり、攻撃の中心でもある福岡莉空

 春の大会で優勝できたことはめちゃくちゃ嬉しかったです。夏は、昨秋の1回戦で負けた前橋育英はもちろん、健大とも対戦したいです。前橋育英には菊池樂君、外丸東眞君という良いピッチャーがいます。秋は彼らから打てなくて負けました。また守備でも、ウチのピッチャーが前橋育英や健大にどこまで通用するかを試したいですね。

 夏は捕手として、バッターが内外角どっちが得意なのかを見極めたり、バッターとピッチャーのどっちの状態が上かなのかを計りながら駆け引きしたりして、ピッチャー陣をリードしていきたいと思います。夏は球場の雰囲気が変わりますので、ピッチャーが冷静さを失わないように声かけをして、状況をこまめに確認していきたいと思います。
 目標にしているのは、福岡ソフトバンクホークスの捕手・甲斐拓也選手です。小柄ですが、送球の速さ、動きの良さなど、キャッチャーへの強い思いが伝わってきます。また相手を研究しているところも参考にしています。

 バッティングでは、4番として自分で点を決めようとせずに、つなぐことを意識したいと思います。春の関東大会初戦の常磐大学高校(茨城)からホームランを打つことができましたが、2戦目の桐光学園戦では、まったく打つことができず0点に抑えられました。夏は良いピッチャーから打てないと勝てません。
 2019年の夏以降、チームとして公式戦での勝ちがない中で、春に1回戦で3-2と桐生に勝って、勝つ喜びを知ることができました。夏は挑戦者として、一戦一戦戦っていきたいと思います。

篠原正紀

しのはら・まさき
投手、3年、177㎝・80㎏、右投右打、幡川クラブ(小3から)~佐野西中

チーム最速145㌔を投げる右腕・篠原正紀


 昨秋の大会も投げていたのですが、投球にムラがありました。トレーナーに投球時の体の使い方を教えてもらったおかげで下半身と上半身に連動性が出て、球に力をしっかりと伝えられるようになりました。今では142㌔まで球速が伸びました。
 持ち球は、ストレート、横のスライダー、チェンジアップ、カーブです。夏に向け、変化球の質を高めていき、もう2段階ぐらい成長したいと思います。課題は、投球時のリリースの位置の問題からコントロールが不安定になることがあるので、そこをしっかりと安定させていきたいです。球速は152㌔までアップさせたいですね。

石原勇斗

いしはら・ゆうと
投手、170㎝・71㎏、右投右打、沢野メッツ(小2から)~太田南中

今夏は背番号1を背負う石原勇斗

 練習で特に大事にしているのが、休養を取ることです。ブルペンに入るのは1週間に1回、多くて2回。練習では、この日はこれをやろうと事前に計画を立ててから効率的に動くようにしています。
 今、取り組んでいるのが瞬発力を上げる練習です。筋トレでは体の使い方を意識して、投球フォームに役立つように心がけています。

 関東大会では、全国レベルの強豪校、特に(1-0で)負けた桐光学園戦では、普通ならヒットで相手の守備を抜ける打球が、桐光学園戦では抜くことができませんでした。自分と篠原はピッチャーでもありますが、打撃面でもっと技術力を上げないと全国レベルの強豪校には勝てないと思いました。チーム全体としてももう1ランク上のレベルに成長していきたいと思います。

 今は最速144㌔ですが、140㌔後半から150㌔を投げたいです。そして持ち球のストレート、カーブ、横のスライダー、ツーシームの質をすべて磨いて、夏の大会に臨みたいと思います。

<了>