NBA選手になる夢を胸に、福岡大大濠高に進学

川島悠翔

新たな旅立ちを迎えた選手がいる。群馬大学附属中学を卒業し、4月からバスケットボールの名門校で数多くのプロバスケットボール選手を輩出している福岡大附属大濠高校に通う川島悠翔だ。NBAでプレーするという夢の実現のために、生まれ育った群馬を離れる。

取材/星野志保

 まだ寒い盛りの2月中旬、前橋市内のファーストフォード店。少し早めに店に到着して川島を待っていると、約束の6時30分ちょうどに、ドリンクを抱えた川島が階段で2階に上がってくるのが見えた。身長198㎝。互いに初対面だったが、すぐに川島だとわかり、右手を上げて「ここ」と合図を送った。
「今日は、よろしくお願いします」
礼儀正しく挨拶をして、長椅子に腰かけたが、長い足がテーブルと椅子の間に収まりきらずちょっと窮屈そうだった。

 「川島悠翔」の名を一躍有名にしたのが、今年1月に開催された第1回全国U15選手権大会である。所属するNLB INFINITYが全国2位と大健闘。川島もリバウンド、ブロックショットで出場選手中1位となり、大会のベスト5にも選ばれたからだ。それまでもバスケ関係者の間では、将来性を高く評価されていた。

 川島がバスケットボールを始めたのは小学校1年生のとき。父親が実業団でバスケットをプレーしているのを見て、「自分もやってみたいなあ」と自然に思うようになり、地元の敷島流星ミニバスケットボールクラブに入った。
 小学校5年までは、センタープレーしかやらせてもらえなかった。同学年の子どもたちより身長が高かったからだ。
 6年生のとき、父親の隆翔(りゅうしょう)さんがチームのアシスタントコーチになってから、ドリブルやガードのポジションで求められる技術、アウトサイドプレーの技術を教えてもらった。
 小学生のときはどんな選手だったのだろう。
 「結構、落ち着きがなかったですね。それに仲間に怒っていたりしていました」とクスリと笑った。本人曰く、「勝ちたい気持ちが強すぎて、(上手くいかないことを)仲間のせいにしちゃったりしていたところもあったので、未熟でした」
 一般的な中学3年生に比べ落ち着きがあり、考えながら慎重に話す姿はまるで大人と話しているような今の川島からは想像ができない。
 中学生になると、学校のバスケ部に所属しながら、伊勢崎市で活動するクラブチーム・無限No Limit(現NLG INFINITY)に入った。
 「ポジションとかも決めずに自由にやらせてくれるので、自分の能力が伸ばせると思ったんです。プレーしていて縛りがないのが一番楽しいし、失敗しても怒られないので挑戦できるんです」
 クラブチームでプレーした3年間で技術的に成長したところは、アウトサイドのプレーやゲームメーク、ゲーム中の駆け引きだ。長身を生かしたセンタープレーヤーとしての技術だけでなく、どのポジションでもプレーできるユーティリティーさを身につけた。
 また精神面でも成長。「クラブで、仲間を信頼して大切にするという指導があったので、失敗しても次、次という意識になりました。コーチ(堀田亨監督)が失敗しても怒らなかったので、自分も見習わなきゃと思いました」

 中学2年の6月、中国で行われたNIKE ALL ASIA CAMP(ナイキ オールアジアキャンプ)に招待された。中国、韓国、オーストラリアなどのアジア地域から集まった選手の中で、川島は最年少で参加。「周りは高校生ばかりで、何もできなかった」が、アジア各国から集まった同年代の選手たちとのレベルの違いや体格差、バスケットボールIQの違いを肌で感じられたことは、川島にとってプラスになった。そこで感じた“差”も、「追いつけない感じではなかったです。いつか自分もああなってやるという気持ちになりました」と、刺激にもなった。唯一の手応えは、「自分が一番走れていた」ことだった。
 2年の夏には、米国フロリダ州にあるIMGアカデミーのサマーキャンプにも参加した。IMGアカデミーと言えば、プロテニスプレーヤーの錦織圭が通ったことでも有名。野球、バスケットボール、テニス、アメリカンフットボール、ゴルフなどのさまざまな競技で、世界と戦う一流の選手を養成する全寮制の総合スポーツアカデミーである。世界80カ国から優秀な選手たちが集まっている。
 川島がサマーキャンプに参加した理由は、「英語力を身につけたかったのと、田中力選手がIMGアカデミーに通っていたので、自分もどんなところなのか見てみたいと思った」からだ。ちなみに、田中は川島の3学年上で、NBAで活躍する八村塁や渡邊雄太に続く日本人NBAプレーヤーになるのではないかと期待されている選手である。
 このサマーキャンプで、自分よりも背の高い選手を相手にプレーしたことで、必然的に外からのシュートが多くなった。そのおかげで3ポイントシュートやミドルシュートを決めきる力が養われた。それと同時に、自分より背が高く、技術もある選手を倒したときの楽しさも味わった。

 川島は中学卒業後に、アメリカ留学を希望していた。しかし、コロナ禍の影響もあり断念。アメリカ留学を先送りし、バスケの名門・福岡大附属大濠高校への進学を決めた。選んだ理由は、「コーチ(片峯聡太監督)がすごくいい人なので、この人の下でバスケットを学びたいと思ったのと、チームの雰囲気がよかったからです。それに勉強にも力を入れている学校で、自分も勉強をおろそかにしたくなかったのもあり、大濠に決めました」
 群馬から遠く離れた福岡での寮生活に、不安や寂しさはあるのだろうか。
 「少し寂しいですけど、楽しみのほうが強いです」
 センタープレーはもちろん、ドライブや外角シュートなど、さまざまなポジションでプレーできるオールラウンダーでもある川島の今後の成長が楽しみだ。
 取材の最後に、「八村塁、渡邉雄太のNBAでの活躍は刺激になっているのか」と尋ねると、「刺激になります。いつか自分も追いついて、(彼らを)超えられるように頑張ります」と力強い言葉が返ってきた。

<了>

■川島悠翔(かわしま・ゆうと)
2005年5月27日生まれ、前橋市出身。群馬大学付属小学校(敷島流星ミニバス)~群馬大学附属中学校(無限No Limit/現NLG INFINITY)。小学生のとき、bj leagueジュニアアカデミーにも所属した。今春から福岡大学附属大濠高校に進学。技術面でアドバイスをしてくれる元バスケ選手の父、送迎や栄養面で支えた母、1年先に親元を離れバスケの名門・相模女子大学附属中学校に通う妹の家族全員で、川島のNBA選手になるという夢を応援する。198㎝・86㎏。