バスケに集中できる環境で高めたプロ意識

群馬クレインサンダーズ
野﨑零也
Reiya Nozaki

*この記事は、2020年2月に発表したものになります。アーカイブで、これまでの選手たちの活躍をご紹介いたします。

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 野﨑零也は群馬クレインサンダーズに新しく加わったシューターだ。外国籍選手に次ぐ得点源として、重要な役割を果たしている。10月に不本意な理由でコートから離れた彼が、どう復活を遂げたのか――。オフコートの努力について、存分に語ってもらった。

大島和人=文 鈴木心平=写真 星野志保=編集

 取材の途中に、彼はふと漏らした。
 「半年でいろいろありましたね……」
 苦労はあったが、実りも大きかった。野﨑はそんな歩みを自然体で語ってくれた。
 群馬はB1昇格、B2制覇を目指すクラブだ。今季もファンの期待通りに東地区の優勝争いを演じている。ただし野﨑は折り返しを過ぎたチームの戦いについて、満足を感じていない。
「まだ納得がいく結果ではない。落としてはいけない試合を落とす展開、接戦を勝ちきれない展開が多かった」
 ただし個人のパフォーマンスについては改善が見て取れる。
 「まだまだですけど、自分のコンディションは上がってきています」
 群馬を熱心に見ているファンならば、その変化に気づいているだろう。コンディションが上がった理由はダイエットだ。
 背景には指揮官の荒療治がある。平岡富士貴ヘッドコーチは10月5日の茨城ロボッツ戦から、約1カ月に渡って野﨑をほとんど起用しなかった。
 本人は理由をこう振り返る。
 「体重オーバーです。『怪我をしたときに危ないから』という理由でした。茨城戦で足をひねって、青森戦を欠場していますけど、治りが遅かった。仙台のアウェイ戦では、全く動けていなかったんです」
 彼はパワフルなドライブを持ち味としているシューティングガード。ラグビーや格闘技選手のような「がっちり体型」で、Bリーグの公式ページには「185センチ・83キロ」とある。しかしファイティングイーグルス名古屋でプレーしていた時期から体重が3桁へ突入し、昨年10月上旬には106キロまで達していた。それはさすがにバスケ選手として重すぎる。
 群馬はしっかりと練習をするチームだから、運動不足は心配しなくていい。問題は食事だった。一人暮らしの24歳は工夫して自炊に取り組んだ。
 「主食をなくしました。炭水化物と糖質は基本、摂っていなかったです。食事は、ほぼほぼ鍋にしました。鍋ならすぐお腹いっぱいになります。具は白菜とかモヤシで、肉も食べていい。味はそれぞれ毎日変えて、ポン酢で食べたり、キムチ鍋にしたり……。味はスーパーにある「プチッと鍋」という鍋の素を使いました。タンパク質は取りたいので、他に納豆をご飯なしで食べたりしましたね」
 食べる時間帯も大事だ。
 「20時以降の食事は脂肪に変わりやすい。夜ご飯を17時半とかにして、早く食べて早く寝ました」
 毎食を撮影してトレーナーにLINEで送り、その都度アドバイスも受けた。
 「肉は食べていいのですが、脂身が少ないやつです。鶏ムネとか、豚ならロースのほうがいい。例えば豚バラは脂身が多いじゃないですか。美味しいやつはどうしても脂質と糖質が多いんです」
 ダイエットの効果はてきめんで、11月2日に行われたアースフレンズ東京Z戦の時点で早くも98キロまで体重は落ちていた。現在は「93か94キロ」に落ち着いている。
 試合に復帰した11月以降は、試合の前後などに炭水化物も摂っている。しかしリバウンドは起こしていない。
 「カロリーをコントロールしつつ食べています。でも胃が小さくなってきているようで、全く体重は増えていません」
 シーズンが佳境を迎える頃には、平岡HCやトレーナーが考える80キロ台後半のベスト体重に達しているだろう。
 変身を遂げた野﨑は嬉しそうに説明する。
 「みんなからキレが良くなったって言われます。あと疲れなくなりました」
 コンディションが戻り、キレの上がった彼の存在は、きっと後半戦の群馬を勢いづかせるに違いない。

2020年2月8日の茨城ロボッツ戦でチーム最多得点の18点を挙げ、勝利に貢献した野﨑(撮影/星野志保)

「いい生活を送れている」
群馬で手にした充実の時間

 今季の群馬は接戦を落とす悔しい展開もあったが、戦いの方向性は定まっている。
 野﨑は言う。
 「消極的になったり、自分たちが思い描いているバスケットができなかったり……。平岡さんが立てているプランを遂行できない試合は基本的に負けています。でもそこをしっかり徹底してやれば、勝てることを証明できているんです」
 ただし外国人頼み、ベテラン頼みの状況は脱却しなければいけない。野﨑も含めた20歳台中盤の選手たちが存在感を発揮すれば、チームがもう一つ上に進める。野﨑もそれは自覚するからこそ、こう口にする。
 「僕は若手ですけれど、リーダーシップを取れるようにしていきたい。そしてチーム一丸となってやっていきたい」
 コート内は「ボールプッシュ」を強く意識している。彼の得意なドライブで、ボールを敵陣まで運び出す狙いだ。
 「僕らはディフェンスを重視しています。そこからブレイクを出すのが一番簡単に点を取る方法です。自分でもっと運べると、相手が僕に寄ってきて他の選手が空く。コーナーに(佐藤)文哉さんとかが待っていれば、僕がキックアウトすればいい。ボールをプッシュすれば(相手の守備が)収縮するので誰かしら空く。そこを僕が使えればいい」
 野﨑にとっては懐かしい仲間もチームに加わっている。それは今季の半ばに加入したギャレット・スタツ。214センチの巨漢選手で、彼にとってはFE名古屋時代の戦友だった。
 「ジー(スタツの愛称)がどこでボールを要求するか、その考えは多少分かる。身体が強いので安心してパスができます。彼が中でガツガツ行けば相手は怖いと思います。相手の外国籍選手をファウルトラブルに追い込む力もあります」
 ファンやチームメートはもちろんだが、家族の支えが野﨑をここまで導いた。
 「父は野球しかしていないのに、僕が小学校のときはアシスタントコーチで、中学校でもコーチをやってくれました。兄が始めてから勉強したみたいですね」
 野﨑は小学1年生でバスケットボールを始めた。シュート、ドライブといった得意なプレーは最初から変わっていない。
 3兄弟の末っ子として生まれ、二人の兄からさまざまな影響を受けてきた。長男・圭佑は福岡大大濠高でプレーした実力者で「野﨑三兄弟」は佐賀でも名を馳せていた。
 北関東でプレーする末っ子を応援するために、両親や兄は暇を見つけて今も遠方から足を運んでいるという。
 FE名古屋時代はフルタイムで仕事をしながら、夕方以降に練習する生活だった。厳しいダイエット生活があったとはいえ、今の生活はバスケ人にとって幸せなものだ。
 「名古屋のときは『仕事があるから』という気持ちもありました。だけど群馬に来てプロ一本で、自主練も多くできる。バスケットが好きな僕からしたら、本当いい生活を送れていると思っています」
 身体な鋭さを取り戻した今、次に求められるのはチームを引っ張る言葉とプレーの勢いだ。戦う男に脱皮した心優しい末っ子が、群馬を一つ上のステージに引っ張ってくれるはずだ。

<了>

<profile>

野﨑零也(のざき・れいや)
1995年9月8日生まれ、佐賀県出身。佐賀東高から白鴎大に進学し、大学4年次はインカレ4強入りに貢献し、ベスト5に選出。FE名古屋を経て今季から群馬に加入。ポジションはSG。185㎝・83㎏(2020年2月時の公称)。