キャプテン野本建吾の挑戦。チームの雰囲気づくりに注力し、互いに意見を言い合えるチームにする

群馬クレインサンダーズ
野本 建吾

サンダーズの頼れるキャプテン

今季、群馬クレインサンダーズのキャプテンを務めるのが野本建吾だ。練習から手を抜くことなくひたむきにバスケットに取り組む姿が、スタッフやチームメイトから評価されている選手である。初めて経験するキャプテンに何を思い、どうチームをまとめているのだろうか。
文/星野志保(EIKAN GUNMA編集部) 写真提供/群馬クレインサンダーズ  取材日/2023年2月27日

――今季、改めてキャプテンになった経緯を教えてください。

 水野さん(水野宏太ヘッドコーチ)から「キャプテンをやってほしい」と言われたとき、今までのバスケ人生の中でキャプテンをしたことがなかったので、「大丈夫かな」という不安と、「楽しみだな」という思いが半分半分混ざり合った気持ちでした。今のところ自分なりに、いろんな人たちにサポートをしてもらいながらキャプテンをやっている感じはありますね。

――なぜ、大丈夫かなと思ったのかを具体的に教えてもらえますか。

 これまでキャプテンマークを巻いたことがなかったので、自分がキャプテンをやってチームが上手くいくのかなと思ったからです。自分が主体となってチームのみんなを同じ方向性に向かせられるのかなという心配もありました。

――キャプテンとして「こうしてほしい」という要望は、水野HC(ヘッドコーチ)からは何かありましたか。

 特にありませんでしたが、今季のスタートの頃に日本人選手だけで練習をする期間があったときに、練習に取り組む姿勢や行動を見てキャプテンに決めたと水野HCから言われました。

――バスケットに取り組む姿勢が評価されたのですね。試合後の記者会見でも「彼の練習に取り組む姿勢を見ると、キャプテンにしたことについて誰も異存はない」と水野HCは野本選手を褒めていましたよ。

 本当ですか? それは嬉しいです。水野さんは選手一人ひとりのことをしっかり見てくれる人だなというのは感じていました。

――キャプテンとしては、どうチームをまとめていこうと思いましたか。

 自分の背中を見せる! 明るい性格が自分のいいところなので、チームを明るく元気にしていくことが自分の役目だと思っています。そのため、毎回、元気よく練習する雰囲気づくりは意識しています。そして、互いに意見を言い合えるようなチーム作りをしていきたいなと思っています。そのためにチーム内のコミュニケーションをよく取るように心がけています。

チームメイトの好プレーに、率先してチームを盛り上げる野本選手(2023年1月29日琉球戦、太田市運動公園市民体育館)

――ある試合で、外国籍選手がレフリーの笛に納得がいかなくてベンチで水野HCがその選手をなだめた後に、野本選手がその選手に寄り添って何かを話しているのを見ました。その様子を見て、野本選手はチームのことをとても考えているんだなと感心しました。

 あんまり覚えていないんですけど、やっぱり外国籍選手、日本人選手に関わりなく、例えば試合中にファウルトラブルなど特別な状況にある選手には積極的に声をかけるようにしています。

――野本選手のポジションは、外国籍選手が多いところなので、なかなか試合に出る時間も限られています。そんな中でまったく手を抜かないでバスケットに真摯に向き合い、試合に出たときにベストを尽くそうとしているのを感じます。そうできるのはなぜなのでしょう。

 プロ1年目ぐらいから、大体、そういう環境にいたので、それが自然と体に染みついて、習慣化している感じはありますね。

――今季、チームは水野HCの下で、サンダーズの文化づくりをしています。明らかに変わったなと思うことはありますか。

 コミュニケーションを取る回数は増えているなと感じます。上手くいかないときに、そのままにするんじゃなくて、なるべく選手同士でその場で話し合ってエラーをなくしていく。そういう文化が今季の最初の頃に比べて増えてきているので、そういうところはチームとしていいなと感じます。ウチのチームは意識の高い選手が多いので、上手くいかない状況になると自然とコミュニケーションを取れる環境だと思います。

――昨季に比べ、ベンチからスタートをする選手のメンタルがとても強くなったという印象を受けました。実際に力もついてきて、チームの選手層が厚くなったと感じます。

 やっぱり、水野さんがそういうチーム作りをしてくれる部分もあります。それに選手一人ひとりが応えようとしているんです。今季は、選手一人ひとりの役割が明確になっていますし、コミュニケーションが増えたというのもあり、それが選手の成長につながっているのかなと感じます。

攻守にわたり活躍が光った2月5日のシーホース三河戦(太田市運動公園市民体育館、撮影/星野志保)

――今季、野本さん自身、印象に残っている試合はありますか。
 1月29日の琉球ゴールデンキングス戦……。でも自分が活躍した試合でも負けたら意味がないので、勝った試合で言うと1月8日の仙台89ERS戦と2月5日のシーホース三河戦です。4Qで点差が開いていない中でコートに立って、そこで勝ち切れたというのはすごくいい経験になりました。今までそういう場面で試合に出ることなんてなかったので、緊迫した時間帯にしっかりと状況判断しながら、ギリギリのところで我慢しながらチームとして戦えたことは自分にとってとてもいい経験になりました。また同じ状況で出場したときに、この経験が絶対に生かせると思います。

――野本選手はコートに立ったとき、どういうことを意識してプレーしているのですか。

 まずは点差が開かないようにしたり、逆に自分たちが出ているときに点差をつけてやろうということを意識していますし、そのためにディフェンスをしっかりやって、チームが得意とする攻撃に持っていければ、自分たちのペースになると思うんです。

――野本選手のプレーの特徴として強いディフェンスが挙げられます。
 プロ1年目からずっとディフェンスを長所にしているんです。1、2年目のときに「跳び抜けた長所がないと(プロの世界では)ちょっと厳しいな」と感じていたので、自分のバスケをして試行錯誤しながら、ゲームに出たときに経験を積んで、「これは絶対に得意だ」というのを見つけていきました。それが自分にとってはディフェンスだったんです。そこを強みにしながら、だんだんと選手としての幅を広げていきました。

――その長所が評価されて、一時、日本代表候補にも呼ばれましたね。

長所がすごく飛び抜けている選手は印象に強く残るし、どのヘッドコーチからも、「この選手はこれができるから」という認識をしてもらえると、起用しやすくなると思うんです。そういう部分はこれまでのキャリアの中で学んできたことなので、そこは大事かなと思います。

新アリーナでも、キャプテンとしてチームを大いに盛り上げてくれるだろう


――いよいよ4月15日の宇都宮ブレックス戦から新アリーナの「オープンハウスアリーナ太田」でプレーします。ワクワクしますか。

 今までのキャリアの中で、ホームがアリーナというチームでプレーしたことはなかったですし、しかも建てられたばかりのきれいなアリーナでプレーしたことなんてなかったので、すごく楽しみです。

――これまで以上に多くのお客さんがサンダーズの試合を見に来ると思いますが、野本選手はどんなプレーを見てもらいたいですか。

 自分らしくアグレッシブに一生懸命にディフェンスをしながら、状況判断もしっかりクールにやっているところや、熱いプレーをしているところを皆さんに見てもらえたらうれしいです。いいプレーを見せることで皆さんに楽しんでもらいたいと思っているので、まずは自分のプレーをしっかりして、チームの勝利に貢献することを意識して頑張りたいと思います。

――最後に、将来、Bリーガーになりたいと思っている子どもたちにアドバイスをお願いします。

 まずはバスケットを楽しんでください。そこからできることがどんどん増えていって、さらにバスケットが楽しくなると思うので、その楽しさを忘れずに一生懸命に頑張ってください。僕も頑張るので、一緒に高みを目指しましょう。

――やはり、バスケットを楽しむことは重要ですか。
 楽しめないと続かないと思うので。指導者から教わるんじゃなくて、自分から教わりに行くぐらい自発的にやっていくと、成長のスピードも速くなると思います。僕と一緒に頑張りましょう!

■Profile
野本 建吾(のもと・けんご)

1992年4月25日生まれ、兵庫県出身。小学4年でバスケットを始める。中学1年の6月に、バスケの名門・北陸高校の付属中学に転校してそのまま北陸高校に進学。1年次からベンチ入りし、2年次には第41回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会で初優勝した。青山学院大学では、新人トーナメント戦で新人王に、新人戦では優秀選手賞を受賞。李相伯争奪日韓学生バスケットボール競技大会に日本チームの一員として出場したほか、2013年のインカレで優秀選手賞を受賞した。大学4年次にアーリーエントリー制度で、当時NBLに所属していた東芝ブレイブサンダース神奈川(現・川崎ブレイブサンダース)に加入。18年に秋田ノーザンハピネッツに移籍し、2020年からサンダーズでプレーしている。FIBAバスケットボールワールドカップ2023アジア地区予選の日本代表合宿にも召集された。201㎝・101g、ポジションはSF/PF、背番号11。