先輩たちが流した涙があるからこそ今の自分たちがある。「頭脳」を武器に夏を戦う。
石倉希実(いしくら・のぞみ)
3年・内野手・キャプテン
2005年7月25日生まれ、桐生市立新里中学校出身、174㎝・60㎏、右投右打
――太田高校硬式野球部38人をキャプテンとしてまとめています。自分はどんなキャプテンだと思いますか。
自分は、実力はそんなにないと思っているので、努力や野球に取り組む姿勢を見てもらう背中で引っ張るタイプだと思います。実力は私立の高校に及ばないわけですから、それをカバーするには練習での一球、大会での一球を確実にすること。緊張感を出しながらいかに短い練習時間で効果的にやっていくのかを考えながらキャプテンをしています。
――キャプテンになったときのことを教えてください。
新チームになってからは、宮下誉生のダブルキャプテンをしていました。今年のチームは、一昨年、去年の強かったチームと比べて実力で劣る部分があったんです。強かった伝統はチームに伝えていかなければいけないので、チームをピッチャーや野手といった様々な視点で見られるようにとダブルキャプテンという形になりました。
――冬に、石倉君がキャプテン、宮下君が副キャプテンに分かれたのですね。
自分はこのままダブルキャプテンでいいなと思ったんですけど、それは自分だけじゃ不安というのもあって……、結局、逃げていただけだったと思うんです。冬に、宮下が「お前がキャプテンをやれよ」と言ってくれたので、逃げていた自分に踏ん切りをつけ、キャプテンをやる決断をしました。そういってくれた宮下には本当に感謝しています。
――宮下君とは互いに成長し合える関係なのでは?
そうですね。自分が打てない時、エラーした時に、「しっかり打て」「しっかり守れ」って宮下は言ってくれますし、逆に宮下が打たれた時には「しっかり投げろ」と言い合える関係です。
宮下とは、細かいところまでそれぞれが求めすぎて、ぶつかることも多かったんです。自分に「キャプテンをやれよ」と宮下が言ってくれた時、同じ優勝という目標を目指してやっていくために宮下が一歩引いてくれたんです。
――岡田友希監督から、石倉君は雰囲気を大切にしているキャプテンだと聞いています。
自分たちは、強豪私立の高校に力が及ばないので、自分たちの実力を100%発揮できなければ相手に先手を取られて負けてしまうと思うんです。だからこそ、練習を大会のように緊張感を持ちながらやることや、大会を練習のように力を発揮できるような環境を整えることを意識するようにしています。試合で緊張していては、本来の実力が出せませんから。
――今春の大会では、2愛戦で前橋育英と対戦して0-3で敗れましたが、収穫のあった試合だったのではないですか。
先発の宮下が3点以内に抑えてくれたんですけど、打線が援護しきれなかったんです。チャンスは作れているものの最後の1本が出なかったんです。他の人には0-3で善戦したように見えるかもしれませんが、打撃で1点も取れていないので、前橋育英にまったく力が及ばなかったということです。そのために夏の大会までのテーマとして、毎日が大会の前日だと思って練習に取り組んでいます。
対戦相手が決まる前までは、例えば前橋育英の岩﨑鈴音選手、健大の小玉湧斗選手、佐藤龍月選手といった速い球を投げる選手を想定して打撃練習をしたりして、自分たちがどうやって私立に勝つかを考えながら練習をしていました。
――夏の大会の初戦は、伊勢崎清明との対戦です。
岡田監督とも話していたんですが、初戦の伊勢崎清明は、秋にウチが勝っているので、相手にリベンジにされるかもしれない恐れがあります。足元をすくわれないようにしなければなりません。伊勢崎清明に勝つと、次は商大附との対戦です。伊勢崎清明にしろ、商大附にしろ、自分たちはチャレンジャーという気持ちを忘れずに、一戦一戦戦っていくつもりです。
――守備ではショートを守っていますが、どのようにポジションを取って守っているのですか。
自分のポジショニングが勝敗を左右するので、その前の準備をしっかりしたいと思っています。夏には、伊勢崎清明や商大附のデータがある程度あるので、そのデータを駆使して戦っていくことが勝利につながるのかなと思います。
――対戦相手のデータを頭に入れて試合に臨むわけですね。
自分たちの武器は「頭」なので、それを存分に使っていかないと技術では勝てません。でもデータに頼りすぎることなく、その時の状況によって臨機応変に戦っていこうと思います。
――いつからショートを守っているのですか。
新チームになってからなんです。小中高とずっと外野だったんですけど、もともとシュートをやる予定だった当時1年生だった丹羽晃がケガをして、秋の大会に間に合わないというので自分がショートを始めたのがきっかけです。
――シュートの難しさはどんなところで感じますか。
センターをやっているときは、抜かれるか抜かれないかの緊張感だったり、自分の指示で外野の守備の選択が変わってしまうので、そういう難しさはありました。
内野は内野で、自分のことにも集中しなければいけないし、周りも見なきゃいけない。いろんな視点を持たなくてはいけないところが、外野にはない難しさです。
――ところで、好きなプロ野球選手はいますか。
ソフトバンクの今宮健太選手です。小柄でありながら肩が強いところが好きです。西武の源田壮亮選手は捕球したからの握りが速くてパッと投げる感じで、巨人の坂本勇人選手は捕球時にグローブだけ引く感じなんです。今宮選手は捕球する時の形がきれいで、打球がサイドに飛んだときでもいろんな対応ができるところがカッコいいなと思います。
――では、夏は今宮選手のように華麗な守備を見せてくれますか。
はい(笑)。
――打撃はどのように強化していますか。
自分は体が細いのでパワーで飛ばすタイプではありません。打順が1、2番なので、出塁してチャンスメイクすることを考え、バントやスクイズを成功させるように練習しています。バントは打順に関係なくチーム全体で練習しています。
――夏はどんな戦いを見せてくれますか。
これまで先輩たちが流した涙があったからこそ、自分たちの今があると思っています。OBをはじめサポートしてくださる人たちがたくさんいて、いろんな人たちとつながれるところが太田高校のいいところであり強みだと思っています。そういう人たちの想いを感じながら、夏を戦いたいと思います。
<了>