オプアリ初試合を勝利で飾ったサンダーズ。「自分たちが目指しているものに一歩近づけた試合」と水野HCもチームの成長を実感。

オプアリでの初勝利に、喜びを爆発させるサンダーズの選手たち(15日)

 構想から3年で、ついにオープンハウスアリーナ太田(通称オプアリ)が完成し、4月15日に杮(こめら)落しとなる群馬クレインサンダーズVS宇都宮ブレックス戦が開催され、クラブ史上最多の5262人の観客を集めた。15日は前半に13点ビハインドを背負ったものの後半に驚異的な追い上げを見せ逆転勝利を収め、アリーナが歓喜に沸いた。しかし16日は前日の記録を塗り替える5477人の観客を集めたものの、前半の28点差が最後まで響き57-82と大敗した。ここではサンダーズの新たな歴史の1ページを刻むオプアリ初試合2日間の試合の様子を写真と共に紹介する。

■4月15日(土)

試合前にコート上で勝利を目指し心を一つにする(15日)
世界チャンピオンを獲ったDJ IZOH氏のパフォーマンスは圧巻だった(15日)

 オープンハウスアリーナ太田の杮落としとなる試合。会場にはクラブ史上過去最高の5262人が訪れ、DJ IZOH氏のパフォーマンスやレーザーを使った演出に試合前から場内が沸いていた。

試合開始直前にハドルを組むスタートの5人(15日)

 試合開始のジャンプボールを拾ったマイケル・パーカーがそのままゴールに走り、試合開始わずか1秒でダンクシュートを決めると、場内のボルテージが一気に上がった。
 その後は、パーカー、トレイ・ジョーンズ、アキ・チェンバース、ケーレブ・ターズ―スキーが得点を重ねたほか、宇都宮も比江島慎、遠藤亮祐といったスコアラーがシュートを決め、両者譲らない展開で1Qを17-19で終えた。

宇都宮の比江島慎(左)にプレッシャーをかける五十嵐圭。大事な場面で3Pシュートも決めた(15日)

 しかし2Qで、ジョーンズがファウルトラブルと体のチェックのためにベンチに下がると形勢は逆転。
 「序盤で、相手のジョーンズ選手がファウルトラブルになったので、前半はいい形になった」(宇都宮・佐々宜央HC)
 「前半は、自分たちも走りながら、いいテンポでできた」(宇都宮・笠井康平)
というように、宇都宮がゲームの主導権を握った。

ディフェンスで相手のシュートを阻むジャスティン・キーナン(右から3人目/15日)

 だが、サンダーズも新アリーナの初試合で敗れるわけにはいかない。30-43と13点ビハインドで迎えた3Qに、ジョーンズが再びコートに戻ると、このQだけでチーム最多の8得点を挙げる活躍を見せた。さらにディフェンスではチーム全体で粘りを発揮し、宇都宮の得点をわずか12得点に抑え、58-55と逆転に成功。4Qはリードを保ったまま79-71でオプアリでの初試合を勝利で飾った。

3P1本を含むフィールドゴール4本を決めたほか、アシスト7本と司令塔tしての役割を全うした並里成(15日)


 試合後、水野宏太HCは、「まずは文化を作る話を今シーズンずっとしてきている中で、40分間自分たちらしいバスケットをどこまでやり続けるか、どこまで戦い続けるかをやっていきたいと思っていました。2Q前半はジョーンズ選手の状況もあってファウルトラブルだけではなくて、ちょっと彼の体をチェックしなきゃいけないような状況があって、(2Qは)出すことができなかったのですが、(3Qに)見事に戻ってきてくれました。そして3Qでしっかり(チーム)ディフェンスで相手を抑えて、自分たちのペースにつなげることができました。3Qの粘りを4Qも切らさないで戦ってくれて、今シーズン、自分たちが目指しているものに一歩近づけるような試合ができたと思います。また、チームの課題でもある“試合巧者になる”ことにアプローチできるような試合だったと感じています」と、劣勢から見事にカンバックした選手たちを称えた。

オプアリ初得点はマイケル・パーカーが決めた。この日はチーム最多の17得点、11リバウンドとダブルダブルの活躍を見せた(15日)

 一方、敗れた宇都宮の比江島慎選手は、「前半は僕らのペースでしっかりゲームプラン通りにできたと思うんですが、後半でパス回しが止まってしまったり、リバウンドやルーズボールを相手に取られたりと、そこから得点につなげられたり、やられてはいけないところをやられてしまいました。勝てる試合だったと思います。また明日につなげていきたいと思います」と前を向いた。

トレイ・ジョーンズがコートにいない2Qに引き離され、戻ってきた3Qに逆転に成功するなど、サンダーズのエースはジョーンズだと実感させられた(15日)
この日の八村阿蓮は、今季で一番と言えるほど、攻守にわたりいいパフォーマンスを見せた(15日)
成長株の一人、菅原暉。この日は約20分のプレータイムで勝利に貢献(15日)
9本中7本のフィールドゴールを決めたほか、ディフェンスリバウンドを6本奪うなど攻守にわたりプレーが冴えたケーレブ・ターズスキー(15日)

■4月16日(日) 群馬クレインサンダーズ 57-82 宇都宮ブレックス
 

試合前に、ビッグフラッグがコート上ではためき、場内を盛り上げた(15日)
今年1月から3月上旬まで特別指定選手としてサンダーズに所属したハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(東海大学3年)が約束通り試合を見にオプアリに来てくれた。試合前に15、16日限定の特別MC・佐々木クリス氏のインタビューを受けていた(16日)
試合直前の選手紹介で盛り上がる観客(16日)

 そして迎えた16日。この日もサンダーズは前半に苦戦。前日の勝利に大きく貢献したジョーンズ、並里成、パーカーを宇都宮に抑え込まれて17-45と、前日の13点ビハインドを大きく上回る28点ビハインドを背負って後半に折り返した。前半は、シュートをことごとく外し、フィールドゴールの成功率が36.5%(宇都宮は51.6%)、3Pの成功率は19.0%(同33.3%)という状況だった。前日同様、3Qに21-19、4Qに19-18と後半に盛り返したものの、前半に開いた28点差はあまりに大きく、57-82と大敗した。

ティップオフ(16日)
前半、相手のプレッシャーに翻弄され、シュートをことごとく外すチームを落ち着かせようとした並里成(16日)

 水野HCは、「昨日はあれだけいい試合をして、ここ最近の試合も含めて僕たちが築き上げてきたものに少しずつ近づいているような内容ができていた中で、この前半、宇都宮に流れを渡してしまって、自分たちがそこで戦い切ることができませんでした。もちろん後半だけを見ると、盛り返して戦えたので、なぜそれを前半できなかったのかと思われるかもしれません。今季のホーム戦は残り4試合となりますが、こういう試合はもうしたくないなというふうに思っています」と悔しさをにじませた。

ジョーンズ、並里と共にチームを牽引したアキ・チェンバース(16日)
この日もチーム最多の21得点を挙げたジョーンズ(16日)

 後半、司令塔として試合を盛り返す原動力になった並里は、敗因についてこう分析した。
 「昨日は、宇都宮のやってくることに付き合わずにしっかりとボールを回せたことで、いいシュートを打てたというのが試合の流れをつかんだ要因でした。今日もそうしようと話をしていたんですが、それができずに宇都宮のプレッシャーにあたふたして、それを変に解消しようとしたのがよくなかったです。もうちょっとリラックスして、パスをもう1つ2つ回せたらオープンな選手ができていいシュートを打てたのかなと思います」

ビジョンに表示された観客数。クラブ史上過去最高の数字となった(16日)

 この日の観客数は5477人と前日の過去最高記録を塗り替えた。両日併せて1万人を超える観客がバスケットの試合と演出を楽しみ、アリーナで繰り広げられるBリーグの魅力を存分に感じたのではないかと思う。
 群馬という地に、世界に誇れるような最高のエンターテイメントを実現できたのは、サンダーズを誘致するために体育館の建設を決断した清水聖義 太田市長の功績が大きい。さらに最高のエンターテイメント空間を造ると決めたオープンハウスグループをはじめ、工事にかか、このオプアリはできなかった。このオプアリはできなかった。

 オプアリをバスケットの聖地にする夢の実現に向け、オープンハウスグループや太田市だけでなく、群馬県民が一体となって盛り上げることが求められるだろう。計画から3年でアリーナを建設した情熱があれば、これも夢ではなくなるかもしれない。
 

オプアリの感想

■水野宏太HC(群馬クレインサンダーズ・16日)

水野宏太HC(写真は15日の会見時のもの)

 コンパクトアリーナというテーマがある中で、それを存分に感じられるアリーナだと思います。アリーナに入った瞬間に見えるビジョンとコートの雰囲気や色の統一感など、そういうものすべてが驚きであり、喜びを与えられるんじゃないのかなと心の底から思えるぐらい素晴らしいアリーナでした。行政を含めて太田市の皆さん、そしてオープンハウスグループを含めて尽力していただき、日本でも有数の誇れるアリーナができました。今、僕も太田市に住民票を移して住んでいるので、自分たちが住んでいる町に象徴となるアリーナができたのはすごく喜ばしいことです。観客数が両日で1万人を超えましたが、これだけの方が試合を見に来てくれて、演出を楽しんでくれました。サンダーズの試合はこれから素晴らしいコンテンツになっていくと思うので、まずは僕たちで自分たちのやるべきことをやっていかなければいけないと(オプアリでの)試合で感じました。

■並里 成(群馬クレインサンダーズ・15日)

並里成選手(15日)

 これまで以上に演出にこだわっているんだなと思いワクワクしました。今まで練習場所も(日によって)変わっていたんですが、ここで練習も試合もできるので、環境面を整えてくれたことに感謝しています。このアリーナのよさは、まずはビジョンです。ビッグスクリーンの内側にもスクリーンがあって、試合中でもちゃんと時間を確認できるのがすごいと思いました。あとは(レーザーなどを使った)演出です。思っていたよりもすごくて、なんだか興奮して、自分を保てるかなと思いながら気持ちを落ち着かせていました。(コートの周りをぐるりと囲む観客席に)圧迫感を感じてすごいと思ったのですが、コートに立つと観客席のライトが暗くなっているので、試合に集中できる構造になっているのがなんとも不思議でした。

■トレイ・ジョーンズ(群馬クレインサンダーズ・15日)
 この雰囲気っていうのは本当に素晴らしかったです。このいい雰囲気を糧に、ここがホームコートだと言える場所として、これからの試合でアドバンテージを取っていきたいと思います。

五十嵐 圭(群馬クレインサンダーズ・15日)

五十嵐圭選手(15日)

 このサンダーズに移籍してきた理由の1つに、この新しいアリーナでプレーをしてみたいというのがありました。そういう意味では、今日このようにたくさんのファンの皆さん、今ここにいらっしゃるメディアの皆さんもそうですけど、本当にたくさんの方々が会場に足を運んでくれて、いい雰囲気を作ってくれて、そしてサンダーズとしても新たな歴史の1ページになれたと思います。本当にいい雰囲気で試合をやらせてもらったことにすごく感謝しています。
 今まで自分が試合をしてきた体育館やアリーナの中で、これだけ多くのビジョンがあるっていうのは初めてでした。昨日初めてサブアリーナで練習したのですが、これからもここで練習ができたり、自分たちのロッカールームがあったりと、今までにない環境を整えてもらいました。それ以外にも、試合の時の動線の部分で選手がコートに出やすかったり、しっかりと体を休めてケアをできるアイスバスを作ってくださったりと、選手としてはありがたいなと思います。皆さんのおかげでこのアリーナができているので、自分たちはこのアリーナで勝利をすることで恩返ししたいと思います。

 今、自分たちも宇都宮もそうですけど、チャンピオンシップに進出できず、この先は消化試合と言われる状況になる中で、これからもプロスポーツ選手としてコートに立っている以上、しっかりとしたいいパフォーマンスを見せようというのは、今日の互いのプレーで感じましたし、ベンチから見ていてもそういうふうに感じたので、そういう意味では今日は(試合を)見ている方たちにとっても楽しんでもらえるような試合になったのではないかと思います。

■アイザック・フォトゥ(宇都宮ブレックス・16日)
 昨日初めてこのアリーナに足を踏み入れたときに本当に感動して、素晴らしいアリーナだなと感じました。オープンハウスアリーナ太田だったり、沖縄アリーナだったりと、素晴らしいアリーナが日本各地でどんどん建設されていて、これは本当にBリーグがいい方向に新しい方向に向かっているんだなと感じます。リーグが成長していくタイミングで、自分がこのリーグでプレーできることをとても嬉しく思います。

■竹内公輔(宇都宮ブレックス・16日)
 率直に、個人的にはうらやましいしかないですね。沖縄アリーナも素晴らしかったですけど、ここはビジョンがすごく綺麗で、ハーフタイムショーとか試合前のイベントも、僕らは見られなかったんですけど、素晴らしいものだったと聞いています。こんな場所で、年間30試合できるのが本当にうらやましいです。

<了>