サンダーズは可能性のあるチーム。チームの文化づくりの1年目に携われてうれしい。

群馬クレインサンダーズ
山崎 稜

古巣・宇都宮ブレックス戦で3ポイントシュートを放つ山崎選手(2023年3月15日、太田市運動公園市民体育館)

チーム在籍3シーズン目の山崎稜選手。自分の意見をきちんと言える選手であり、クラブがよくなるために力を尽くしてくれた選手でもある。今季は、肩の力が抜けて、3Pの成功率もキャリアハイをマークするなど、選手としての成長を続けている。今季も残り4分の1となったが、これまでの自身のプレーや、日本一のチームを作るための土台作りをしているチームについて語ってもらった。
文/星野志保(EIKAN GUNMA編集部) 写真提供/群馬クレインサンダーズ
取材日/2023年2月27日

――今季、水野宏太HCの下、群馬のバスケットボール文化を作ることを目標に掲げています。チームの変化はどういうところで感じますか。

 オフェンスでもディフェンスでも、チームのルールがはっきりしているというのは感じますね。

――山崎選手は今季、どんなことをチームから求められているのですか。

 これまでも3ポイントシュート(3P)を含めたシュート、ディフェンスという部分では自分のスタイルでやっていたのでそれは今季も変わらないですが、チームメイトがシュートを打ちやすい状況を明確に作ってくれているので、昨季よりもしっかりシュートを狙えるようになりました。昨季はいい意味でも悪い意味でも勝手に「自分で点を取りに行こう」みたいな思いがあったのですが、今季は自分がやるべきことを淡々とやっているため、肩の荷が下りたような気持ちでプレーできています。

――それが今季、3Pの成功率がキャリアハイの41.9%(2月27日現在)という数字に表れているのですね。

 そういう部分もあると思いますね。今季はプレーしていて、手ごたえを感じています。チームは東地区3位にいますし、勝率を見ても昨季よりもいいところを目指せるんじゃないかと思っています。

――ワイルドカード2位までがチャンピオンシップに出場できますが、今、チームはワイルドカード3位です。個人としてもチームとしてもチャンピオンシップに進出するためには何が必要だと?

 東地区で1位の千葉ジェッツ、2位のアルバルク東京が負けない限り、僕たちが今後ずっと勝ち続けても追いつかない差になっています。現実的に考えると、ワイルドカードの上位との差も離れていますが、このワイルドカードで2位以内を狙っていかなければなりません。まずは負けないことです。勝てた試合を落としたもったいない試合があるので、一つひとつの試合を取りこぼさずに勝ち切ることが大事だと思います。
 リードしていたにもかかわらず、終盤の1つのミスで相手に一気に流れを持っていかれてそのまま逆転負けという試合もありました。1月4日の天皇杯の横浜戦もそうでした。こういう試合をしてしまうと、チャンピオンシップに出ることは難しくなってしまうと思います。
 あの天皇杯横浜戦は、前半はいい内容だったのも関わらず、ホームでたくさんのファンの皆さんの前で逆転負けをしたので、もうああいう負けは皆さんに見せちゃいけない。あの試合で勝ち切っていれば天皇杯のベスト4に入っていたので、とても悔しかったです。

【チャンピオンシップ(CS)進出の条件】勝敗は2023年2月27日現在の数字
B1の各地区(東地区・中地区・西地区)上位2位までの6チームは自動的にCSに進出。各地区上位2位を除き、全地区の中で上位2チームがワイルドカード1位、2位としてCSに進出できる。ワイルドカードの1位は広島ドラゴンフライズ(28勝10敗/西地区)、2位が名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(27勝11敗/西地区)、3位が群馬クレインサンダーズ(21勝15敗/東地区)、4位が秋田ノーザンハピネッツ(21勝17敗/東地区)、5位が宇都宮ブレックス(20勝18敗/東地区)となっている。

今季は、肩の力が抜けてシュートの確率が上がっている(2023年3月15日宇都宮戦、太田市運動公園市民体育館)

――今季は、同じチームとの2連戦で、1試合目は負けても2試合目は課題を克服して勝つことが多いように思います。例え2試合目に負けても、いい内容の試合をした上での負けです。今季の2試合目に見られる強さの要因は何なのでしょう。

 前日の試合で出た修正点を、必ず次の試合前にチームで共有しているんです。修正しなきゃいけない部分を実際に映像で見ると、自分たちで試合を通じて感じていた以上に「ここがよくなかった」と明確になるので、そこは選手にとってありがたいですね。そのため、コーチがスカウティング陣に求めていることは昨季よりも増えたと思いますし、彼らがしっかり仕事をしてくれるので、その成果が出ているのだと思います。

――今季は、皆、生き生きとしてプレーしているように感じますが。
 水野HCが来て、チーム全体でコミュニケーションを取るのも文化づくりの1つのテーマでもあるので、皆がそこを意識しているのか分からないですが、確かに今季はコミュニケーションを取る回数や場面が増えていると思いますね。

――いよいよ4月15日から新アリーナの「オープンハウスアリーナ太田」でこけら落としのゲームを迎えます。山崎選手にとって対戦相手の宇都宮ブレックスは古巣になります。新アリーナでの試合では、どんなプレーを見せたいですか。

 やっぱり確実に今の体育館よりよくなると思いますし、新しいアリーナができるっていう楽しみはすごいあるので、早くプレーしたいですね。今まで以上に頑張っているところを見て欲しいですが、やっていることはいつもと変わりません(笑)。
 
――昨季までは、チームにはストレングス&コンディショニングコーチがいませんでしたが、山崎さんが怪我をしないで昨季、全試合に出場した要因の一つに、個人的にお願いしていたストレングス&コンディショニングコーチの存在を挙げていました。今季から長年、ラグビー界の第一線でストレングス&コンディショニングコーチとして活躍された和田洋明さんを招聘しましたが、ご自身にどんな影響がありましたか。

 僕は、もともと栃木ブレックス(現宇都宮)の時からストレングス&コンディショニングコーチの存在はすごい大事だなと思っていて、昨季の終了後にチームに「ストレングス&コンディショニングコーチを入れてください」とお願いしていたんです。今季からチームに和田さんが来てくれて、安心してお願いできます。長年、バスケットをやってこられなかった人だからこそ、違う競技の視点で見てくれるので、とても面白いです。僕はバスケットしかやってこなかったので、体の使い方が全然違うんだなと思いました。新しい知識がどんどん入りますし、すごく楽しいし、新鮮です。最近、すごい体が強くなったって言われますが、それはラグビー選手をみていた和田さんのおかげだと思います。

琉球戦のため、体育館に向かう山崎選手。今季で群馬の生活も3シーズン目。すっかりチームの顔となった(2023年1月29日、太田市運動公園市民体育館)

――サンダーズは、チームを強化するために、選手の「こうしてほしい」という要望を叶えているように思いますが。例えば、「バスケ文化を作ることが大切だ」とか、山崎選手の「ストレングス&コンディショニングコーチをチームに置いて欲しい」とか……。

 選手が思っていることをなるべくクラブには考えてもらいたいと思っています。ただ一人で訴えてもしょうがないので、みんなが思っていることをどんどん言ってくれると「チームの意見」としてクラブに上げることもできます。やっぱり、「自己主張をしていかないと状況は改善しないですから。

――選手の意見を聞き、クラブも改善に積極的に動いているように思います。ところで、このチームは将来、日本一を狙える可能性を感じますか。

 可能性は多いと思います。日本一になるために、皆、プレーしていると思うし。でもまだまだ時間はかかるかもしれないですね。

――サンダーズのバスケ文化の1年目ですから、そう簡単には行かないですね。

 文化はそう簡単にはできないなと思います。僕が栃木(宇都宮)に行った時には、もうすでに「栃木の文化」は完成されていたんで、新しい選手がそれを吸収して表現するっていうのは割と簡単でした。新しい文化を1から作っていくのは時間がかかることなので、僕がサンダーズに在籍して3シーズン目ですが、その文化を作る1年目の土台作りに携わらせてくれてうれしいですよね。

――例えば、宇都宮の文化ってどういうものですか。

 田臥勇太さんや竹内公輔さんと言ったベテラン選手が、練習から手を抜かないですし、試合中も誰よりも走ったり、ルーズボールにどんどん飛び込んだりしています。やっぱりそういう泥臭い部分をベテランの選手たちがやっているので、若い選手たちがやらない訳に行かない雰囲気なんです。必然的に頑張らなきゃいけないというか、HCが言わなくても、選手自身がやれる環境にありました。
 水野HCもACとして宇都宮に在籍していたことがあるので、サンダーズもそういうところを目指し、他チームのいいところをプラスアルファで吸収していってサンダーズのベース作りをしているんだと思います。

<了>

■Profile
山崎 稜(やまざき・りょう)

1992年9月25日生まれ、埼玉県出身。昌平高校卒業後の2011年、スラムダンク奨学金第4回奨学生として渡米し、サウスケントスクール、タコマ・コミュニティ大学でプレー。2013年に帰国し埼玉ブロンコス(bjリーグ)に入団。その後、バンビシャス奈良(bjリーグ)、富山グラウジーズ(B1)、栃木ブレックスに所属し、2020年に群馬クレインサンダーズに移籍した。ポジションはシューティングガード(SG)、背番号30、183㎝・80㎏。