ディフェンスが改善し、チーム力が向上。チャンピオンシップ進出に望みをつなぐサンダーズ

4月上旬の5試合で見えたチームの成長

群馬クレインサンダーズ

リーグ終盤にオンドレイ・バルヴィンがチームにフィットし、ハーフコートオフェンスの軸になっている(2022年4月6日、
レバンガ北海道戦)

4月2日(土)、3日(日)、6日(水)のレバンガ北海道戦、そして9日(土)、10日(日)のアルバルク東京戦と、4月は水、土、日と週3日間で試合が開催される過酷なスケジュールとなっている。4月最初の5試合の結果は、2勝3敗と負けが1つ多いが、チームの成長を見せてくれた試合となった。この5試合のデータを中心にチームの成長を見てみよう。

レポート/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)

群馬クレインサンダーズ 67-74 アルバルク東京
(1Q 21-22, 2Q 14-15, 3Q 19-18, 4Q 13-19)
2022年4月2日(土)、太田市運動公園市民体育館、観客数1570人

 4月2日のA東京戦は、トーマス・ウィスマンHCが「いいバスケだった。自分たちのディフェンスで、2~4Qまで相手の得点を20点以下に抑えられたのはすごくよかった」というように、東地区2位の強豪を相手に、サンダーズは1Q 21-22、2Q 14-15、3Q 19-18、4Q 13-19と接戦に持ち込む粘り強い戦いを見せた。この試合で、A東京はケガで戦線離脱していたライアン・ロシターが5週間ぶりに、新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出ていた小酒部泰暉が2週間ぶりに、共に復帰。この2選手は、サンダーズ戦の前日に45分間のチーム練習をしただけで、試合に臨んでいた。3月30日(水)の北海道戦で接戦の末に敗れたA東京は、安藤周人、菊地祥平がいまだチームに合流できない状況で、「本来なら十分な練習を行ってからベストな状況で試合に臨むのが通常の流れだが、その流れができない中の緊急事態という形での試合だった」と、ルカ・パヴィチェヴィッチHCが明かしたほど、チームの勝利のためにロシターと小酒部を急遽、ロスターに入れなければならない事情があった。
 一方のサンダーズは、今季開幕以来、ケガや新型コロナウイルス感染症のため選手が全員揃うことがなく、今年に入ってからは、1カ月コロナの影響で練習ができないこともあったが、シーズン終盤でようやく選手が全員揃って練習ができるようになった。その結果が目に見えて現れたのがこのA東京戦だった。
 試合後に、ウィスマンHCは、「今日のようなディフェンスを続けられれば、残りの試合でも勝つことができる。ディフェンスはどんどん改善されているので、これを継続できれば自分たちの目標を達成できる」と、奮闘した選手たちを褒めた。相手のターンオーバーからの得点が、サンダーズ11得点、A東京8得点と、この数字でもディフェンスが改善しているのがわかる。
 敗因となったのがシュートの決定率。2ポイントシュートの確率はサンダーズが29.5%、A東京は47.7%、フリースローの確率もサンダーズの57.1%に対し、A東京は74.1%と、これでは勝てる試合も勝てない。
 またフリースローの獲得数でも、サンダーズの14本に対し、A東京が27本獲得と、相手に比べてオフェンスでのアグレッシブさに欠けた。さらにセカンドチャンスポイントでも、サンダーズの5得点に対し、A東京は15得点と、ここでも課題が残った。

ジョーンズ不在の中、自ら得点を取りに行くなど好プレーを見せた野本建吾(2022年4月3日、アルバルク東京戦)

群馬クレインサンダーズ 83-91 アルバルク東京
(1Q 27-18, 2Q 15-21, 3Q 28-23, 4Q 13-29)
2022年4月3日(日)、太田運動公園市民体育館、観客数1775人

 翌3日(日)のA東京との2戦目は、83-91で敗れはしたものの、前日の試合の敗因となった2ポイントシュートの確率も52.8%と改善。フリースローも65.2%と成功率が上がった。特出すべきはセカンドチャンスからの得点で、前日はわずかに5得点しか取れなかったのが、この試合では12得点と劇的に改善。A東京の8得点を上回った。
 明るい兆しも見えた。11月13日の琉球ゴールデンキングス戦で負った右母趾MTP関節背側脱臼のケガでインジュアリーリストに登録となり、2月2日の三遠戦から復帰したオンドレイ・バルヴィンの活躍である。連戦が続いていたため、エースのトレイ・ジョーンズがコンディション調整のためにベンチ外となった中で、前日の試合後に「日本独特のダブルチーム(ボール保持者に対し、ディフェンスが2人つくこと)になれないので、しっかりアジャストしていきたい」と語っていたバルヴィンがこの日は気を吐いた。
 A東京のパヴィチェヴィッチHCが、「サンダーズは、ジョーンズ選手を中心にしっかりゲームを組み立ててくるチームなので、彼がいない中、サンダーズの攻撃が昨日とガラリと変わった。笠井(康平)選手、五十嵐選手、チェンバース選手といったガード陣が非常にのびのびとプレーしていた感じでした。ジョーンズ選手がいないので、バルヴィン選手を中心にしたインサイドの得点が非常に目立った。こうしたサンダーズのオフェンスの変化で、最初のほうで我々のディフェンスは苦労しました」と漏らしたように、1Qで27-18とA東京を圧倒した。
 試合開始直後からバルヴィンがインサイドを支配し、2ポイントシュートを15本中9本決めたほか、11リバウンドと“ダブルダブル(得点とリバウンドの2つが2ケタという意味)”の活躍を見せた。また五十嵐圭も6本中3本、アキ・チェンバースも3本中2本の3ポイントシュートを決めるなど、積極的に攻めた結果、4Q残り5分まではA東京からわずかにリードを奪っていた。
 しかし、4Q残り5分でのキーナンのファウルアウト(ファウル5つで退場)をきっかけに、A東京に連続得点を許し、最後は8点差をつけられ逆転負け。4Qだけで4つのターンオーバーを犯し、そこから9得点を相手に献上した。
 敗因についてウィスマンHCは、「A東京とのベンチ層の違いが出た。4Qでウチの主力は体力を削られていて、A東京はベンチの選手を使いながら、(選手たちが)体力を維持したままで遂行したいプレーをやっていました。その違い」とこぼした。だが、このA東京との2試合は、「シーズンを通して、ディフェンスでベストな試合。それを続ければオフェンスもよくなっていくはず」と、ウィスマンHCはチームの成長を称えた。
 この日、チーム最多の24得点を挙げたバルヴィンは「この週末はいい試合だった。今日の試合でトレイ(・ジョーンズ)がいなかったが、(笠井)康平、野本(建吾)がいい仕事をしてくれた」と、自らの活躍よりもチームメートをねぎらった。
 嬉しいニュースもあった。マイケル・パーカーが日本バスケ史上初の個人通算7000リバウンドを達成したのだ。試合後にパーカーは、「今回、自分がそこに届いているとは知らなかったが、そういう記録を達成したんだなという嬉しい気持ちもあれば、今日、勝てなかったので悔しい気持ちもある」と、偉業を成し遂げた記念日を勝利で飾れなかった思いを口にした。

マークについた相手選手がことごとくファウルトラブルに見舞われたほど、トレイ・ジョーンズの突破力はチームの武器になっている(2022年4月6日、レバンガ北海道戦)

群馬クレインサンダーズ 95-83 レバンガ北海道
(1Q 31-24, 2Q 26-19, 3Q 18-15, 4Q 20-25)
2022年4月6日(水)、太田市運動公園市民体育館、観客数1199人

 中2日で迎えた6日(水)のレバンガ北海道戦。しかも前節、近節とホームでの開催となり、移動の疲れはない。一方の北海道は、4日(月)のホームでのサンロッカーズ渋谷戦から群馬に移動しての中1日で試合となった。佐古賢一HCが「前半はまったくディフェンスが機能しなかった」と話したように、北海道の選手の動きが重かった。試合では、サンダーズがスタートからゲームの流れをつかんだ。1Qでキーナンが3ポイントシュート3本中3本を決めたほか、2ポイントシュートも5本中4本を入れる活躍。バルヴィンもインサイドから得点を重ね、サンダーズは1Qで31-24と勢いづいた。
 この試合で、ジョーンズの突破力がさく裂。彼のマークについた選手がことごとくファウルトラブルに見舞われた。中でも、2Qでジョーンズのマークについた元日本代表の桜井良太は、3分25秒の出場時間で3つのファウルを取られベンチに下がったほどだった。
 北海道に95-83で勝った要因は、リバウンドで相手より優位に立ったことだ。サンダーズの46リバウンドに対し、北海道は31リバウンド。中でも13のオフェンスリバウンドから17得点を挙げたサンダーズに対し、相手は8オフェンスリバウンドからわずか5得点しか取れていない。また、ディフェンスリバウンドでも北海道を圧倒し、そこから速攻に繋げられたのも大きい。サンダーズは速攻から18得点を挙げたのに対し、北海道は4得点と、ここでもサンダーズがゲームの主導権を握っていたのがわかる。
 4月に入り、ようやくバルヴィンを中心にしたインサイドが機能し始めている。試合後に笠井も、「いつも速いテンポで得点が取れるのは分かっているので、その中で、ハーフコート(オフェンス)になったときにバルヴィンのところを上手く使ったチームとしてのいいシュートが少しずつ増えてきているし、ターンオーバーも少なくなってきている」と、チームの成長を感じていた。

ここぞの場面で決める3ポイントシュートと、経験に基づいた高いゲームコントロール能力がチームに力を与える(2022年4月3日、アルバルク東京戦)

群馬クレインサンダーズ 70-78 サンロッカーズ渋谷
(1Q 11-18, 2Q 21-28, 3Q 21-18, 4Q 17-15)
2022年4月9日(土)、青山学院記念館、観客数1336人

 そして迎えた4月9日(土)、10日(日)のアウェイSR渋谷戦。東地区6位のSR渋谷と同7位のサンダーズとの互いにチャンピオンシップ進出に望みをつなぐための負けられない試合だ。
 9日の1試合目で、五十嵐が約2カ月ぶりにスタメンに起用された。この日は、フェースガードをつけてコートに立ったジョーンズの精彩を欠いたプレーが目立った。前半約12分間出場し、挙げた得点はフリースローでの1得点のみ。後半からベンチに退いたジョーンズの不調が影響したかのように、攻守で渋谷に圧倒され、前半を終えた時点で45-32と13点差をつけられた。
 後半はディフェンスを修正し、前半の14ターンオーバーを、後半は8まで減らしたほか、リバウンド数でもSR渋谷を上回った。3Qの出だしで相手の石井講祐に3ポイントシュートを決められ16点差がついたものの、その後チェンバースやキーナン、バルヴィンらのシュートで点差を詰めて、4Q残り1分47秒でパーカーのジャンプシュートが決まりわずか3点差まで追い上げた。しかし、ファウルトラブルに見舞われていたサンダーズは、相手に立て続けにフリースローからの得点を許し、ターンオーバーから試合の流れを完全に相手に渡してしまい、あと一歩のところで勝利を引き寄せられなかった。試合は70-78で敗れたが、後半にディフェンスを立て直せたことや、チェンバースの3ポイントシュートが8本中5本(62.5%)、2ポイントシュートも14本中8本(64.3%)と高確率で決まるなど、敗戦の中にもチームの成長を感じさせる試合となった。

リーグ終盤に再びシュートの決定力が上がってきたアキ・チェンバース(2022年4月6日、レバンガ北海道戦)

群馬クレインサンダーズ 94-75 サンロッカーズ渋谷
(1Q 23-10, 2Q 25-14, 3Q 27-22, 4Q 19-19)
2022年4月10日(日)、青山学院記念館、観客数1501人

 翌10日の試合では、前半からサンダーズがSR渋谷を圧倒。1Q開始から3分間で10得点を挙げたサンダーズは、ディフェンスでも優位に立ち、この間にSR渋谷を無得点に抑えた。SR渋谷の最初の得点は、試合開始から3分が過ぎたところで入れたベンドラメ礼生のレイアップシュートだった。
 前日は、アキ・チェンバースのシュート力が爆発したが、この試合ではキーナンが3ポイントシュートを6本中5本(83.3%)、2ポイントシュートを13本中10本(76.9%)、フリースローを7本中6本(85.7%)と驚異的な確率で決め、チーム最多の31得点で勝利に導く立役者となった。
 前日、調子の悪かったジョーンズも復調し、フェースガードをつけながらも21得点を挙げる活躍を見せた。ジョーンズがコートに戻ってきたことで、サンダーズの武器である速攻でもSR渋谷を苦しめた。速攻からの得点がサンダーズの24得点に対しSR渋谷が13得点。ターンオーバーからの得点もサンダーズ29得点に対し相手は16得点、ディフェンスリバウンドもサンダーズの31に対し相手は19と、良いディフェンスからオフェンスでも流れをつかみ、終始リードを保ちながら94-75でSR渋谷に勝利。チャンピオンシップ進出にわずかに望みをつないだ。
 

 4月上旬の5試合で、シーズンを通して課題だったディフェンスが改善されつつある。またオフェンスでも、ジョーンズの速攻を中心にゲームを組み立てていたが、217㎝とリーグ一の長身であるオンドレイ・バルヴィンを軸にしたハーフコートオフェンスも機能し始めている。さらには、キーナンとチェンバースの得点の能力の高さも発揮されているほか、五十嵐圭の大事な場面で決まる3ポイントシュートと、経験に基づいた判断能力の速さも武器となり、チーム全体の力が向上している。シーズンも残り11試合。勝率.442で東地区7位のサンダーズがチャンピオンシップに進出するのは難しい状況になっているが、まずは勝率5割を目指し、残り試合を一つでも多く勝ちたいところだ。
 4月13日(水)の試合では、現在、西地区2位の島根スサノオマジックをホームで迎え撃つ。1月10日(日)に開催中止となった分の代替試合である。前回1月9日(土)の対戦では、キーナン、ジョーンズ、バルヴィン、笠井の主力選手を欠いたこともあり、65-106と完敗している。今回、フルメンバーで臨むサンダーズが、島根を相手にどこまで戦えるのかを見るのが楽しみだ。島根戦の後の15日(土)、16日(日)には、A東京戦(アウェー)が控えている。この強豪との3試合が今季のサンダーズの力を試す試金石となろう。
 その後は、茨城ロボッツ戦(アウェー)横浜ビー・コルセアーズ(ホーム)、三遠ネオフェニックス(ホーム)、新潟アルビレックスBB(ホーム)、茨城ロボッツ(アウェー)と下位チームとの対戦となる。1つでも順位を上げるために負けられない試合が続く。

<了>