PGとして、チームの良さを引き出すプレーをする

群馬クレインサンダーズ
笠井 康平

在籍2年目の笠井康平選手が、マイケル・パーカー選手と共に今季、キャプテンに就任した。PG(ポイントガード)として進化し続ける笠井選手に、キャプテン就任の経緯や、チームの状況、B1で戦う熱い思いなどを率直に語ってもらった。
取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)
取材日/2021年9月29日

「康平しかいない」
チームメート発信でキャプテンに就任

――今季、キャプテンを務めますが、就任の経緯について教えてください。

笠井 ヘッドコーチ(以下、HC)ではなく選手発信だったんです。「康平しかいないんじゃない」という雰囲気が周りの選手から出ていて、自分でもちょっとずつ自覚を持ち始め、(トーマス・ウィスマン)HCからキャプテン就任を言われたときには、チームを引っ張く覚悟を決めて、「わかりました」と引き受けました。でも本当は、キャプテンという柄じゃないんですよ(笑)。

――マイケル・パーカー選手とのWキャプテンとなりましたね。

笠井 今季は、ウィスマンHCをはじめ選手たちも外国籍が多いので、マイクが「康平がやるんだったら手伝ってあげるよ」と言ってくれたんです。マイクが手伝ってくれるのならやりやすいなと思って、キャプテンを引き受けたのもあります。

――互いにどのような役割分担なのですか。日本人選手は笠井選手が、外国籍選手はパーカー選手がまとめるという感じですか?

笠井 そんな感じですね。練習中に声を出したりと、チーム内の仕事は基本的に僕がやっているんですが、試合中にリーダーシップを取るのは、互いにやっていこうねと話をしています。

――今年はチェコ代表のオンドレイ・バルヴィン選手や、日本代表候補にもなったアキ・チェンバース選手、野本建吾選手、そしてベテランの五十嵐圭選手も加わり、昨季と比べよりタレントが揃った中でチームをまとめることになりますね。

笠井 大変だと思います。

――昨季からいるメンバーも多いので、互いのことがわかっている分、まとめやすい部分もあるのではないですか。

笠井 HC、スタッフ陣が全員替わったので、昨季とはまったく違うバスケットになります。その部分を理解していかなければいけないと思いますし、もっとHCのバスケットをチームに浸透させないといけない。また選手同士のコミュニケーションでは、互いに意見を伝え合えているので、その部分は良い形でできています。

――今季は、ウィスマンHCの下で練習の初日から強度の高い練習をしていました。昨季は、平岡富士貴HCの時は、全体練習は週3回ぐらいでしたが、昨季と比べ、ハードな練習に戸惑いはありませんでしたか。

笠井 昨季は全体練習が週3回で、後は個人に任されていました。昨季、群馬に来た時も、「こんな感じなんだ」と、結構、戸惑いましたが、1年を通じてやってきて自分でいろいろ調整することに体が慣れてしまったので、今季のハードな練習に自分の調整の時間がなかなか作れなくて、疲れが抜けない状況が続きました。

――名古屋Dの時の練習はどうだったのですか。

笠井 名古屋Dの時は、午前午後共にバスケットの練習というのはありませんでした。クラブには専用の体育館とジムがあり、土日も使えたので、週4日練習して1日休みというスケジュールでした。午前がトレーニング、午後バスケという日もあれば、午前はフリーで午後バスケという日もありました。もちろんチームでもトレーニングをしましたし、練習が終わった後でも体育館を使えたので、自分で足りない部分のトレーニングをしたり、午前中がフリーの時は早めに体育館に行って自分の準備をしたりしていました。

昨季の茨城とのファイナル第3戦で、果敢にリングにアタックする笠井選手(2021年5月24日)

今季もオフェンスの軸はトレイ・ジョーンズ。
彼を快適にプレーさせる自信はある

――ウィスマンHCの指導にはもう慣れましたか。

笠井 HCを見ていると、チームを“自分の色”に染めたい気持ちもありながら、能力があって自分の色を持つ選手も多いので、伝えすぎてもと思う気持ちもあるのかなあと感じます。細かいところまで伝える日もあれば、逆に自由な時もある。これから慣れつつ、学びつつという感じです。

――サンダーズのバスケットのスタイルは、どう変化しそうですか。

笠井 HCは、「ディフェンスを頑張って、そこから走るスタイルのバスケットをやりたい」と言っています。ディフェンスに重点を置いて練習に取り組んでいるのですが、(チェコに一時帰国していたオンドレイ・)バルヴィンがいなかったりで、ディフェンスにフォーカスしきれずにプレシーズンを戦っていたので、(バルヴィンもチームに合流し)これから少しずつディフェンスも形になって、より速い展開のバスケットになるんじゃないかなあと感じています。

――今季も、トレイ・ジョーンズ選手を中心にトランジションバスケットを展開していくのですね。

笠井 そうだと思います。トレイだけじゃなくマイクもバルヴィンも走れますし、トランジションを強みにしていかないともったいないです。

――PGとして、彼らをどうコントロールしようと考えていますか。

笠井 僕は、自分でいろいろやる選手じゃない分、ボールを出せばどんどんリングにアタックしてくれる選手が多いので、そこはすごく良いなと思っています。富山とのプレシーズンマッチに少し出たのですが、自分が出ている時間はブレイクというか、速い展開のオフェンスが多かったので、少しはイメージがつかめました。走るというチームの強みは出していかなければいけないと思いました。

――笠井選手自身、昨季もジョーンズ選手、パーカー選手、ジャスティン・キーナン選手と一緒にプレーしたことは、チーム内でのポジション争いでも強みになりそうですか。

笠井 そうですね。今年もオフェンスの軸はトレイになると思います。一年かけてトレイとコミュニ―ションを取ってきて、彼がどういうプレーを好むのかがわかるので、試合を作りやすいかもしれません。トレイが快適な状況でバスケットができるようにする自信はあります。

――サンダーズのオフェンスの強みはトランジションバスケットですが、対戦相手もそれをわかっています。相手に対策を取られたときにどうするのかというイメージはありますか。

笠井 ハーフコートでもトレイのアタックは強みになります。昨季はインサイドで個の力で打開できる選手がジャスティンだけだったんですが、今季は(217㎝と)高さのあるバルヴィンも入ったので、よりインサイドでしっかり起点が作れると思うんです。たとえバルヴィンが点を取れなくても、相手ディフェンスが彼につくことで他の選手がフリーになる。試合展開をちゃんと見ていれば、走れなくなったときもオフェンスが止まらない方法が自然と見つかるんじゃないかと思います。

――信州と名古屋Dとのプレシーズンマッチを見ていて、うまくいかない時に、パーカー選手、ジョーンズ選手、キーナン選手といった選手たちだけでプレーしてしまい、チームで戦うことができない恐れもあるのではないかと感じられました。

笠井 それは昨季、僕も感じた部分ではあります。トレイとは会話しやすくて、先日のプレシーズンでも二人でコミュニケーションを取る場面を多く作っていたんですけど、その時に、「どうしたいのか」「こういう時に、こう思ったんだけど」と話をしました。1年間一緒にやっている分、僕が全体を見ながら試合を作っているのをトレイは理解しているので、3人でバスケットをし始めても、トレイに「止まって! ちゃんとゲームをコントロールしたいから」と伝えれば、冷静になってくれると思うんです。トレイ以外にも僕の良さを分かってくれて、理解し合える選手をこれからもっと増やしていきたいですね。あとは、ジャスティンとバルヴィンをちゃんとコントロールできれば、自分が思い描く試合ができると思います。

笠井選手の理想の選手は、昨季まで8シーズンにわたりサンダーズの司令塔として活躍した小淵雅選手(大泉町出身)だ

理想の選手は小淵雅選手。
彼のようにバスケットを深く考えられる選手になりたい

――昨季、メインPGとして試合に出続けたことで、選手としてどんなところに成長を感じますか。

笠井 昨季、平岡HCに、「チームをコントロールして、チームのアドバンテージを使えるようにするのがPGの仕事だよ」と言われていました。大学の時にも同じことを教えてもらっていたので、改めてバスケットをちゃんと考えるようになりました。その中でチームをB2優勝まで導けたのは自信にもつながりました。今年も継続して考えることを誰よりもやらなければならないし、そういった部分を試合でしっかり生かしていけたらいいなと思っています。

――昨季の序盤に、周りの選手を生かすことに苦労していて、小淵雅選手(昨季で現役引退。大泉町出身)に、「自分で行けるときは行けばいい」というようなアドバイスされ、そこから自らも得点に絡んでいました。今季は、また周りを生かすプレーを重視する発言も出ていますが、自身の中で何か変化があったのですか。

笠井 う~ん、難しいですね。プレシーズンでケガもあって試合をこなせていないのもあるんですけど……。もちろん、自分で得点を狙わないと相手ディフェンスも僕を追ってこないですから、自分で得点に絡むことも大事だと思うんです。ですが、他の選手のポテンシャルが昨季より間違いなく高いので、それを生かそうと思いすぎているのも事実。試合を通して、少しずつバランスを取りながら、今のメンバーで経験を積んで、昨季より良い形を作っていきたいですね。自分のスタッツにこだわらず、チームが快適にバスケットをできて勝てるのが一番。そこは昨季と変わらず、周りファーストでやっていきます。その中で、自分で得点を取りにいかなきゃいけない場面もあるので、シュートの決定率をさらに上げていければ、より自分の理想の選手像に近づけるんじゃないかと思っています。

――理想の選手像で、具体的にイメージしている選手はいますか。

笠井 小淵さんですね。昨季、ケガもあって、小淵さん自身、納得のいくプレーができなかったと思うんです。練習中、ふとした時に、小淵さんの自分でも得点を取りに行くプレーを見たことで、そういうことの大切さみたいなものが伝わってきましたし、話をしていても、すごくバスケットを深いところまで考えているのがわかりました。僕は、ディフェンスを強みにしつつ、小淵さんのような選手になりたいと思っています。もうちょっと早くベストな状態でプレーする小淵さんを見られる機会があれば、昨季一年でもっといろんなことを学べたんじゃないかなと悔やまれますが、小淵さんと話し合えたことで、自分自身、バスケットに対する考えに深みが出たと思っています。小淵さんからはすごく影響は受けています。

――小淵さんに、キャプテンになったことは伝えましたか。

笠井 まだなんです。「ご飯に行きたいね」と話していたのですが、コロナウイルスの影響でまだ実現していないんです。「試合を見に行くね」と言ってくれているので、タイミングが合えば、ゆっくりと話をしたいですね。

――今季、B1に戦いの舞台を移します。個人としての具体的な目標はありますか。

笠井 アシストや得点というよりも、自分がコートに立っている時間帯にどれだけチームにプラスに働いたのかにポイントを置いているんです。昨季もそういう感覚でプレーして、それなりにできていたと思うので、そこは継続しながら、チームとして良い時間帯を作るのもテーマに掲げながら頑張りたいですね。

――笠井選手にとって、2年ぶりのB1での戦いです。

笠井 B1で個人としても結果を出したいです。昨季よりもハードな試合が多いのもわかっています。全試合出場は一つの目標でもありますが、特に今季は、チャンピオンシップなどのチームとしての大事な時期に、しっかりとコートに立っていたいと思います。

――開幕戦から宇都宮、千葉と連続で昨季、ファイナルに進出したチームと対戦します。

笠井 シーズンの最初に、リーグトップのチームと試合ができるのは、良い結果が出ても悪い結果が出ても、自分たちのためになると思います。勝つとしたら、自分たちの良さが出た試合になりますし、負けたら修正点がしっかり見えると思うので、自分たちにとってはチャンスだととらえています。しっかり自分たちを見つめる良い機会にもなるので、勝ちにこだわりつつ内容にあるゲームにしたいなと思っています。

――強豪チームと対戦することで、自分たちのレベルの現在地がわかるのもプラスになりますね。

笠井 トップチームと比べ、自分たちに何が足りないのかが見えると思います。そういった意味では、シーズン最初に強豪と対戦できるのは本当にありがたいです。

――最後に、試合を見に来てくれる人たちや、応援してくれるブースターの皆さんに、笠井選手のプレーのどこを見てほしいですか。

笠井 体を張ってディフェンスでハードワークしているところを一番見てほしいですね。そして、身長の低い子どもたちに、「点が取れなくても派手なプレーができなくても、考えながらバスケットをしたらチームのためになれるんだよ」と、感じ取ってもらえるようなプレーを体現したいと思います。

<了>

■プロフィール
笠井康平(かさい・こうへい)
1993年8月12日、香川県生まれ。青山学院大学~四国電力~名古屋。昨季からサンダーズに所属。昨季はメインガードとして、ゲームをコントロールするだけでなく、自らも果敢に得点を狙いチームをB2優勝に導く。今季、大学以来のキャプテンに就任した。背番号13、175㎝・76㎏。