*7月15日に記事を一部加筆しております。
高校野球選抜大会群馬県大会が10日から始まった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨夏は県独自の大会となり優勝しても甲子園にはつながらなかった。今夏は2年ぶりに甲子園につながる大会とあって、出場チーム61チームが夢の舞台である甲子園を目指して熱い戦いを繰り広げる。ここでは、大会5連覇を目指す前橋育英を紹介する。
取材/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)
「あの春の負けがあったからこそ、この夏がある」
チーム全員が一つになって大会5連覇に挑む
7月8日に同校を訪ねると、時折降る小雨のためにグラウンド内での練習はできないものの、1年生は走ったり、3年生は筋トレをしたりと、それぞれが生き生きした表情でトレーニングに取り組んでいた。
今年で同校監督20年目を迎えた荒井直樹監督。コーチ時代も含めると23年にわたり同校野球部の指導をし、2013年には埼玉西武ライオンズのエース・髙橋光成投手(当時2年)を擁して甲子園初出場初優勝を成し遂げ、以降、甲子園の常連校として群馬を代表するチームに成長させた荒井監督のチーム作りで大切にしているものは何なのだろうか。
7月3、4日と大会前の最後の練習試合の臨んだ前橋育英。試合結果は、新潟明訓(新潟)に2-4、文星芸大(栃木)に1-12(6回コールド)、0-3でいずれも敗れている。「今年は、一番よくない」と言いながら、荒井監督に焦りはない。
「いいなと思う年ほどダメで、5、6月にチームの状態がいいと7月に失速するんです」と荒井監督もわかっている。高校生は試合までの1週間前でも成長する。その成長に期待しているのだろう。
「『夏に上手く持って行った』とよく言われるのですが、状態を見て、今これが足りないからこれをやったほうがいいという決まったものはないんです。ただその時その時の選手の状態を見て“旬”の選手を起用しています」と、選手一人ひとりの状態を見極めことが強さの一つでもあるのだろう。
今夏は、春にはベンチ外だった選手がメンバーに選ばれている。中でも、ペガサスジュニア出身の投手・田村入来が成長し、外丸東眞、菊池樂、皆川岳飛と共に投手陣の一角を担う。また捕手の阿部咲人も調子が上がり、春にマスクを被った飯島寛登とポジションを競い合っていた。夏の勝利の鍵を握るのは4番の皆川と5番の野村慶だ。「皆川がどうかで試合が決まると思います。その後の打順の野村の頑張りにも期待しています」と荒井監督。この2人の活躍と共に、他選手の春からの成長ぶりにも注目したい。
旬の選手を見極めて起用するだけでなく、組織作りにも力を入れる。
7月6日に夏の大会に出場するメンバー発表を行った。3年生31人中13人がベンチから外れた。その翌日、13人一人ひとりを監督室に呼び、「なぜ外れたのか」を説明するのではなく、「2年3カ月、ここで野球をしてどうだった?」と聞いたという。外れた説明は選手の心を乱す。今回、記録員としてベンチに入る内野手の井田篤希は、荒井監督からこれまで前橋育英の野球部でプレーした感想を聞かれ、涙を流したという。それは悔しさからではなく、「いい仲間に恵まれたから」だ。その涙の後に井田は、内野のノックを自ら買って出て、メンバー入りした選手たちに力を与えた。
「メンバーから外れた子たちがどういう雰囲気になるのかが、結構、ポイントになるんです」と荒井監督は気を配る。それは、「自分は、外れたから関係ない」と、皆と違う方向を向く選手がいると、メンバーに選ばれた選手が気を使い、試合で力を発揮できなくなるからだ。夏の大会のメンバーに入れるのは野球部員77人中たった20人。ほとんどが試合に出られず、スタンドから応援する。しかしメンバーが試合で力を発揮できるのは、試合に出られないメンバーが支えてくれるからだ。
ボトルに水を入れる選手がいなければ、熱中症になって満足に練習ができない。ランナーを付けたノックで、ランナー役がベースランニングの技術を磨けば、チームの守備力アップにつながる。「チーム」という船を動かすためには、一人ひとりが自分の役割を全うすることが欠かせない。メンバーも含め選手一人ひとりが船を動かすための大事な歯車なのである。誰一人として欠かすことはできないのだ。
「皆が同じ方向を向けなかったら、それは彼らの問題ではなく、僕が選手たちに伝えきれなかっただけ」と荒井監督は日ごろから、選手一人ひとりに気にかけ、声をかけたり、野球ノートを通じて、皆が同じ方向を向くことの大切さを伝え続けている。
勝ち抜くためには、試合展開を理解することも必要だ。荒井監督は「どのピッチャーも立ち上がりは不安です。だから初回に点が入りやすい。初回の攻防が大事で、2アウトを取ってホッとしていると、3、4、5番と相手チームで一番いいバッターが出てきて長打を打たれることが多いんです。力の差が拮抗していればその後は互いに0で行きますが、8、9回にまた試合が動くことがあります。ピッチャーも疲れてくるし、交代したピッチャーも勝負が決まる所なのでプラッシャーがかかる。さらにはグラウンドも荒れて、守備にイレギュラーが起きるかもしれない。野手も疲れてきて打球に対する一歩目が遅れることもある。こうした試合の仕組みを理解することで、『2アウトを取ったけど、次は良いバッターが来るから、もう一回気を引き締めよう』と、気の緩みから起こる失点を防げるんです」
試合の流れも説明し、試合中に選手が慌てないようにする。例えば3点差のとき、リードしている方は安心感があるかもしれないが、実際は次の1点をどちらが取るかで流れが変わるという。リードされている方が1点を取り2点差に縮めると、相手にとっては近づいてきた感じがして焦りが生まれる。その流れを理解していれば、リードされているだけで負けてしまう雰囲気になることはない。ただ「夏の大会は、1点をリードされているだけで、負けてしまう雰囲気になるから、何が起きても想定内という意識を選手たちには持たせています」と念には念を入れて対策を練る。
昨夏は、新型コロナウイルス感染拡大のために、甲子園つながらない県独自の大会となったが、準々決勝で健大高崎と激突し、後半の驚異的な追い上げを見せるもあと一歩届かず9-11で惜敗している。今夏は、決勝戦で健大と当たる組み合わせだ。
荒井監督に「健大を意識しているのか」と尋ねると、「まずは一つひとつ(勝つことです)。春に『健大に勝つぞ!』と言っていたら、その前に負けてしまったから、先ずは一つひとつ。初戦の桐生市商業にはいいピッチャーがいると聞きますから、そう簡単に勝てる相手ではないと思っています」と返事が返ってきた。
今夏の健大は、春に農二に負けてから1点を取ることに貪欲になり、強打と共に機動力にも磨きをかけている。
「ウチはこれまで健大には、2018年春に山下航汰(巨人)に先頭打者ホームランを打たれて以来、ホームランを打たれていないんです。よく通算本塁打何本、通算打率何割と言いますが、僕はどういうピッチャーを打ってきたのか、どういうバッテリーから打ってきたのかというほうを重視しています」(荒井監督)
今夏は、5月に発令された「まん延防止等重点措置」で、私立校は5月末日まで、公立校と一部の私立校は6月中旬まで対外試合が禁止された影響で、どのチームも実戦経験が少なく、シード校が初戦敗退するなどの波乱が続いている。そんな中で前橋育英は、チーム力を磨き、支えてくれた人たちや昨夏に甲子園の道を断たれた先輩たちの思いを胸に、そして、「あの春の負けがあったからこそ、この夏がある」と言えるように、5大会連続での全国高校野球選手権出場を目指す。
■注目選手に聞く
皆川岳翔
みなかわ・がくと
キャプテン、外野手/投手、3年、181㎝・79㎏、右投左打、館林四中出身
――試合に臨む、今の気持ちは?
皆川 去年、甲子園がない中で3年生が躍動していたのを、自分はレギュラーとしてピッチ上で見てきました。自分の代の秋と春に負けた悔しさなども含めて、支えてくださっている人たちにも恩返しができるように、この夏にかける思いは群馬の中で一番強いのかなと、日に日に感じています。
――春は太田に負けたが。
皆川 一人ひとりが太田に100%の力で挑めなかった。先を見すぎてしまったり、その後の試合というのがよぎってしまいました。春は、怪我で出られなかった分、周りに伝えられなかったことがたくさんありました。この太田戦は、高校の中でも一番悔いの残る試合でした。自分たちの力を発揮できなかったのは今でもまだ胸に残っています
――100%の力を発揮できなかったというのは、自分たちは強いという隙があったから?
皆川 確かにそういう気持ちもあったと思います。「いけるだろう」と。そういう油断というか、隙を見せてしまった部分が、相手に流れを渡してしまったのだと思います。先を見すぎた結果、目の前の対戦相手のチームに力を向けられなかったんです。
――夏に向けてキャプテンとしてチームのためにしてきたことはありますか。
皆川 春に、グランドの中で伝えられなかったことが多くあったので、コミュニケーションを多く取るようにして、練習の終わりにはポジション別のミーティングをしたりしていました。そこでは、その日の練習で出た課題だったり、明日に向けての意気込みやテーマを話し合うなどして、できたことはしっかりと積み重ねていって、課題は見つめ直していきました。何一つ、無駄な練習はありませんでした。春の負けを経験してから、さらにメンタルも強くなれたので、いい経験をしたと思います。
――あの春があったからこそ、この夏がある!
皆川 そうプラスに捉えられるようにしています。
――チームとしてテーマに掲げていることはありますか。
皆川 攻撃的な守りです。守備というと受け身になってしまうんですが、それを攻めに変えられるような一人ひとりに意識。例えば、ファーボールを出してもそれを「ゲッツーのチャンスがある」と、プラス思考に捉えられる意識を養ってきました。以前は、マイナス思考だったんですけど、ヒットを打たれても「ゲッツーでアウトを取る」というのは守備に粘り強さがあるからこそだと思うので、マイナスをプラスに変えられる精神的な強さは身につけられているのかなと思います。これは春の負けを経験してからだと思います。
――春から夏にかけて、自身で磨いてきたことありますか。
皆川 打撃メインで取り組んできました。去年のキャプテンの須永(武志)さんが4番を務めていて、自分は3番だったんですけど、自分が塁に出ても返してくれる安心感がありました。自分も4番としての責任を感じて、塁に出たら必ず返すという安心感を皆に持ってもらえるように、バッティングでチームを引っ張っていけるように意識しています。
――投手としての活躍も期待されています。最速145㌔とチームで最速の球を投げますが、ピッチングで伸ばそうと思ったところはありますか。
皆川 まっすぐの伸びですね。打者が真っすぐだとわかっていても打たれないストレートを磨きました。球速より速く感じられるような伸びを求めて、重めのボールで指先を使ったトレーニングをしたり、肩回りの可動域を広げるトレーニングもしていました。
――守備では、センターを守ります。
皆川 外野の中心なので、レフトやライトにも声をかけて、なおかつ裏から相手にプレシャーをかけられるようにしたいですね。自分はピッチャーも経験しているので、外丸、菊池、田村のつらさは十分わかっています。だからこそピンチの場面で、ピッチャーへの声かけでピンチをチャンスに変えられるように、練習から意識してやっています。
――夏、対戦したいチームはありますか。
皆川 そんなにないです。どのチームが来ても自分たちが100%力を出す。戦っていかなきゃいけないし、ぶつかっていかなきゃいけないので、このチームとやってみたいという余裕はないです。
――目標としている選手は誰ですか。
皆川 イチローさんです。「自分」を持っていて、人にとらわれない力、左右されない力は参考にしています。スキルも高いですし、ピッチャーが打たれないだろうと思った球をヒットにできる粘り強さもあります。甘いコースに来たら一球で仕留められる長打力があり、広角にも打てる。なおかつ得意なコースに球が来たら自分のスイングができる。自分もそういう選手になりたいと思います。
外丸東眞
そとまる・あづま
投手、3年、172㎝・72㎏、右投右打、前橋桂萱中出身
――夏大会へ向けて、今の気持ちを教えてください。
外丸 結構、不安定です。そっちの方が大きいかなと思います。春の負けの悔しさみたいなものがまだ忘れられないんです。また、同じこと(なかなかストライクにならないということ)が起きてしまうんじゃないかという不安はあります。
――夏に向け、メンタル面の改善に取り組んだのですか。
外丸 春は、気持ちで攻められなかったんです。ストライクを取りに行こうと受け身に回ってしまったので、攻めることをいつも意識するように心がけています。それから、自分のいいイメージを描くようにしています。打たれると、結果ばかり気にして、「どうしよう」となるので、自分の理想というか、いいイメージを持つように心がけています。
――技術的なことで磨いてきたものはありますか。
外丸 ストレートのコントロールと変化球の精度です。
――変化球は、チェンジアップ、ツーシーム、スライダー、カーブを持っていますが、全部の球種を磨いてきたのですか。
外丸 はい。
――コントロールをよくするためにどんな練習をしてきたのですか。
外丸 ブルペンで、実際にバッターを立たせてはいないんですが、バッターを想定して棒のようなものを置いて、それで練習をしていました。
――春の負けがあったからこそ、成長をしたと感じていますか。
外丸 あの負けは忘れたことはないです。
――なかなかストライクにならず、焦りが出てしまった?
外丸 冷静を保てなくて、焦りました。
――夏の大会まで、県外の強豪チームと練習試合を重ねてきましたが、調子はどうですか。
外丸 まだまだ技術的にもメンタル的にも上げていかないといけないんです。結構、課題も多く残っているので、そこを修正していかないといけないなと思います。
――コンディションは?
外丸 大分、上がってきています。
――今夏は1番を背負いますね。
外丸 秋、春と負けて、去年の夏も甲子園のない状態で県大会で負けています。その悔しさを背負って、すべてをぶつけて、チームの勝利に貢献するピッチングをしたいです。
――理想とするピッチャーは誰ですか。
外丸 結構、動画を見るのは、オリックスの山岡泰輔投手です。172㌢と、体が特別に大きいわけではないけど、150㌔を超える速球を投げられるのはすごいと思い、参考にしています。憧れです。
――150㌔を出してみたい。
外丸 はい。今は142~3㌔ぐらいですけど。
――球速は伸びましたか。
外丸 ちょっとだけです。春は141㌔でした。
――この夏、対戦したいチームはありますか。
外丸 決勝で健大高崎と戦いたいです。昨夏の準決勝の負けも対戦相手が健大。秋の準々決勝の負けも健大が相手だったので、去年の3年生の分まで負けた悔しさを晴らしたいと思います。
菊池 樂
きくち・がく
投手、3年、179㎝・71㎏、左投左打、玉村中出身
――大会まであとわずかですか、今の気持ちを教えてください。
菊池 1週間ぐらい前は不安があって、そこからだんだん「やってやろう」という気持ちになりました。負けたら終わりの怖さもありますが、楽しんだ方が自分のプレーもできるだろうし、チーム全体として成長できると思うので、そういう気持ちになってきました。
――そう思えるようになったのはなぜですか。
菊池 清水陽介先生から「不安になるのは当たり前、その中でどう自分の気持ちを探していくのかが大切」というお話がありました。育英は負けない野球をするためにまずは守備からというのがあって、それでだんだん自信をつけていったという感じです。
――自分の投球にもいい影響が出てきていますか。
菊池 一時、悪くなったときがあったんですが、2年の冬ぐらいからよくなってきて、今という感じです。
実は、1年のときにエースになった後からずっと調子が悪くて、急速も1年のときは137㌔ぐらい出たんですけど、それが115㌔しか出なくなり、ストライクも入らなくなって、思うように投げられませんでした。1年間ぐらいもがき苦しんで、自分でピッチングのやり方を探したり、監督さんや清水先生にアドバイスもらったりして、何とか調子を上げることができました。
――去年の夏も苦しんでいたのですね。
菊池 ベンチに入って試合でも投げていたんですけど、球の質もよくなかったんです。自分の代になって秋の大会を迎えるとさらに調子が悪くなったので、冬はひたすらトレーニングに取り組んだ結果、だんだんと自分の投球ができるようになってきました。
――自分の投球ができなくなったことで、何かしたことはあったのですか。
菊池 有名な野球選手の書いた本を読んだりしながら、「どうしたらよくなるのか」を自分で探していました。
――その有名な野球選手の本って、誰の本だったのですか。
菊池 菊池雄星さん(シアトル・マリナーズ)の「雄星ノート」です。悪いときにどうしていたのか、モチベーションをどう上げていったのかを参考にしていました。初めて憧れたのが菊池雄星投手だったんです。花巻東のときに、腰が痛いにもかかわらず、チームのために自分が壊れても投げ抜くというところに、自分もそんなピッチャーになりたいと思いました。チームから信頼され、しかも互いに信頼関係を築いていたというのが、カッコいいです。
――投球で、変えたことはあるのですか。
菊池 よくないときに、自分の悪い部分を探してしまうところがあったんです。人間、誰しもそういうことがあると思うのですが、自分は結構、それが多くて、「今の球が悪かったのはここが悪い」といったように、悪いところばかりを探しすぎて、投げているときにモヤモヤした気持ちになっていました。それが原因で、徐々に体も思うように動かなかったり…。
だんだんと調子が上がっていくと同時に、気持ちもポジティブになって、「ここだけは大切にして投げよう」と気持ちを切り替えられ、投球もよくなっていきました。
――1年生のときから見ていますが、性格も前向きで明るくなったように思います。
菊池 1年生のときはエースになってルンルンでした。だんだんと調子が悪くなって、「野球が楽しくないな」とは思わなかったですけど、考えすぎちゃうようになっていました。でも今は、野球がすごく楽しい。
――苦しんでいたとき、支えてくれたのは?
菊池 怪我をあまりしないのは親のおかげなんです。母は体のことを気づかってくれたり、父も高校のときに野球やっていて、「野球は楽しんだもの勝ち」と言って支えてくれました。2歳上の兄も前橋育英で野球をやっていたんですが、自粛期間も一緒に練習してくれて、自分では気づかないところに兄は気づいてくれましたね。父もお兄さんも野手なので、技術的なことではなく、メンタル的な部分で支えてくれました。
――お兄さんからはどんなアドバイスをしてもらったのですか。
菊池 一緒にキャッチボールをした中で、「今のリリースポイントはあっていたよ」「そこのリリースポイントなら、いい球が来ているよ」とかですね。一緒にランニングをしたりと、自分にとって練習に付き合ってくれるいい兄です。
――菊池君といえば、インコースをガンガン攻めているイメージがあります。
菊池 右のインコースへの投球は、自分の持ち味だと思っています。ストライクが決まったときは気持ちがいいんです。三年間、インコースを磨いてきて、あとはそれを生かすためのチェンジアップ。自分は一番、チェンジアップに自信があって、それで崩して次はカーブで打ち取るとか、変化球を効果的に使うようにしています。
調子が悪かったときは、相手を研究しないと打ち取れないので、相手バッターの構えとか、ストレートを投げたときの反応とかを見るようになりました。「このバッターはどこが好きなんだろう」「どこが苦手なんだろう」と考えながら投げられるようになったので、苦しかったことがあったからこその成長だと思います。
――今、最速何㌔ぐらいなのですか。
菊池 138㌔ですが、回転数が以前よりも増しています。自分は球の速いピッチャーではないですが、左投手というのも一つの武器で、それでインコースに投げられるのも持ち味だと思っています。例えば、左のインコースなんて、打者は張っていないと思うんですよ。「張られて打たれたらしょうがない」と監督さんにも言われているので、「インコースを投げて打たれたらしょうがない」と思えるほど、自分の投球に自信がつきました。自分にとってはインコースは譲れない部分です。
――この夏、対戦したいチームはありますか。
菊池 やっぱり健大ですね。で春は健大と戦う意識が強すぎた結果、目の前の相手より、その先に目が行って負けてしまったので、この夏の大会では一戦一戦を大切にして、目の前の相手と戦っていきます。
――夏は、前橋育英で2年3カ月やってきた集大成になりますね。
菊池 背番号1番は外丸なんですが、自分はいつでも行けるように準備しておくことと、やっぱりマウンドに上がったからにはチームがどんな状況でも流れを持ってくるピッチングをしたり、勝ちを持ってこられるようなピッチングをして、全員で甲子園に行って優勝できたらいいなと思います。自分のピッチングができれば最高ですね。早く試合をしたいですね。
<了>