2025年1月6日に前橋市のザスパークで開催されたザスパ群馬の2025シーズン新体制発表会見。新監督に沖田優(おきた・まさる)氏を迎え、超攻撃的なサッカーを目指す。その超攻撃的なサッカーとはどのようなものなのか、新加入選手はどんな特徴があるのかを紹介しよう。
文/星野志保(EIKAN GUNMA編集部) 写真提供/ザスパ群馬
「超攻撃的サッカー」
これが、今シーズンからザスパが目指すサッカースタイルだ。
沖田優監督は、超攻撃的サッカーについて具体的にこう語る。
「まずはボールをしっかり一人一人が扱えること。目の前の相手を操ることで、試合全体を操れるようになる。攻撃を主体とした常勝チームを目指します。攻撃の細部で言えば、キーパーからでもボールを前進させるだけでなく、いつでも相手陣営までボールを前進させられるサッカーをする。そうすることで、相手陣営でもボールを支配できるし、1試合で何回もペナルティーエリアに進入できる。相手よりシュート数を上回れる。守備面でも、相手ボールになった瞬間から短時間でボールを奪う力をつけ、守備力も攻撃的に上げながら結果を出していきます」
超攻撃的なサッカーを体現するに当たり、沖田監督を招聘した理由について佐藤正美強化部長は、「(以前は、粘り強く泥臭くサッカーをしていた)クラブの背景や歴史を考え、(夏は暑く、雷も多く、冬は空っ風が吹き荒れるという厳しい環境にある)地域性をイメージして、超攻撃的なサッカーを選択しました。何人かの監督候補と話した中で、沖田監督とはこちらの考えるものとマッチする部分が多くあり、一緒に(超攻撃的なサッカーを)作り上げていこうと思えたので、沖田監督に監督就任の話をさせてもらいました」と、互いのサッカーに対する考えが似ていたことが決め手となったという。
沖田監督は、「超攻撃的なサッカーに向かって日々トレーニングを積み重ねていきたい。そのために必要なスタッフ、選手、強化体制は揃っていると思います。トレーニングが始まって2日間が過ぎましたが、このペースで進んでいけばクラブの掲げるJ2昇格という結果は出せるんじゃないかと思います。その目標に向かって、ここにいる選手たちだけでなく、既存の選手も含めチーム一丸となって結果と成果を追い求めていこうと思います」と抱負を語った。今シーズンのザスパの目標は22勝、勝ち点68~70を狙い、J3優勝・J2復帰を目指す。
ザスパは2004年にJFLからJ2昇格を決めてから今年で20周年を迎える。この21年間は降格争いをいく度も経験し、2018、19シーズンはJ3で戦った。2002年に草津町でザスパ草津(現・ザスパ群馬)が誕生してからわずか3年でJ2昇格を決め、当時、最短でJ2入りを決めた勢いで、クラブは「3年でJ1に昇格」という夢を抱いていた。しかし現実は厳しく、21年間はJ1昇格とはほど遠い状況だった。しかも昨シーズンは3勝9分26敗、勝ち点18と、J2最下位の20位で終わり、攻撃的とはほど遠いサッカーだった。今シーズンから目指す超攻撃的サッカーは、これまでリーグ下位争いを展開するクラブというイメージを払拭する契機となるだろう。
クラブは2030年のJ1昇格を目指し、クラブの経営体制も整えつつある。今年4月の株主総会で正式に現社長の赤堀洋氏が代表取締役会長に、現役を引退したばかりの細貝萌氏が代表取締役社長に就任する。赤堀氏は引き続き経営の根幹となるマネジメントを担当し、細貝氏は知名度を生かして主に営業に力を注ぐ。
さらに、これまでカインズを含めた5社がそれぞれ5.4%の株式を保有し筆頭株主のグループを構成していたが、昨年12月にカインズが新たに5000株を取得し、持ち株比率が15.2%となり、ザスパの筆頭株主になった。カインズの社長の高家正行氏が4月に社外取締役に就任する予定。これでクラブの経営基盤の強化が図れ、クラブの改革も進めやすくなるだろう。
今シーズンはJ3で戦うとはいえ、クラブ改革のための必要な期間と捉えたい。J1に昇格するためには、クラブはもちろん、サポーターやスポンサーや地元が一丸となることが必要だ。会見で赤堀洋社長も、「地域の皆様に誇りを持っていただくこと、それにふさわしい存在になるクラブミッションを追求していく」と話していた。
今シーズンから新たにクラブ理念を定めた。「Chasing Glory(チェイシング・グローリー)~栄光に向かって疾(はし)れ」だ。「栄光を追い求める群馬の飽くなき挑戦のストーリーを象徴し、常にファンやサポーターの皆様と一丸となり、共に歓喜の瞬間を共有するため、チーム一丸となって全力で走り、ゴールへと突き進む姿を表現した」という。
今シーズンは12人の新たな選手を迎え、そのうち10人が25歳以下という若手主体の編成になった。これは、「J2昇格を目指さなければいけないが、昇格してもJ3に降格を避けることを考えなければいけない。クラブの文化にもなる若い選手がしっかり活躍してチャンスを得ていくチーム作りをしたい」(佐藤強化部長)という意図があったからだ。
もちろん、ベテラン選手の経験も欠かせない。2019~21シーズンまでザスパに在籍していた青木翔大選手が4年ぶりにザスパに復帰した。「ザスパのために」と戻ってきたベテラン選手の復帰は心強い。佐藤強化部長も「ベテラン選手の振る舞い、言葉、プライドが若手選手に与える影響は非常にある」と認めている。
新加入のほとんどの選手がザスパを選んだ理由に「超攻撃的サッカーに魅かれた」と挙げており、佐藤強化部長も、「超攻撃的なサッカーをしっかり表現できるポテンシャルを持った選手を集めた」と強調した。選手たちはザスパの新たなサッカースタイルにワクワク感を持ち、ヤル気に燃えている。彼らがザスパにプラスのエネルギーを与えてくれるはずだ。新しく生まれ変わろうとしているザスパに大いに期待したい。
以下に、12人の新加入選手を紹介する。
■FW10 青木翔大(あおき・しょうた)
1990年8月11日生まれ、神奈川県出身、ブラウブリッツ秋田より完全移籍、182㎝・73㎏、ニックネームはショウタ
<強み>前線でのキープ力
<加入の決め手>4シーズン前にもザスパに在籍して、チームを離れてからもザスパのことはずっと心にありました。(今回)声をかけていただいた中で、自分の力を必要としてくれたことで、このクラブの力になりたい、群馬県の力になりたいと思ったのが一番の決め手です。
<抱負>まだまだ(自分自身)成長できると思っています。J2昇格だけしか考えていません。
<佐藤強化部長からの獲得の経緯>元々ザスパに所属していた選手で、一緒に戦っていましたので、(青木選手がどれくらいプレー)できるかは分かっていました。沖田監督と話した上で、青木選手の献身性などのベテランながらもしっかりとやってくれる部分でクラブに(良い)影響を与えてくれるだろうと思い、オファーを出しました。
■DF26 秋元琉星(あきもと・りゅうせい)
2003年1月25日生まれ、青森県出身、新潟医療福祉大学より加入、181㎝・77㎏、ニックネームはリュウセイ、アキモト
<強み>ヘディングと対人
<ザスパを選んだ理由>自分を一番必要としてくれているチームに行こうと思っていたのですが、それがザスパでした。ザスパのために頑張りたいと決断しました。
<抱負>チームの目標である優勝に向かって、自分の特徴であるヘディングと退陣を出しつつ、勝利に貢献できるように頑張ります。
<佐藤強化部長からの評価>大学でプレーをしている姿をスカウトとして見ているので、彼のキャプテンシーはもちろん、セットプレーでも点を取るので、攻撃的なサッカーをする上で貢献してくれると思いました。
■MF36 安達秀都(あだち・しゅうと)
2004年7月15日生まれ、熊本県出身、ヴィッセル神戸から育成型期限付き移籍、170㎝・63㎏、ニックネームはシュウト
<強み>走力
<ザスパを選んだ理由>超攻撃的サッカーに魅かれてザスパに来ました。それを体現できるように頑張ります。
<抱負>走れるタイプ(の選手)なので、ピッチのどこにでも顔を出し、チームの勝利に貢献できるように全力で頑張ります。
<佐藤強化部長からの評価>左利きで、J3でも経験があり、若い選手ですがクラブのためにしっかりとやってくれると期待して獲得しました。
■DF24 新井夢功(あらい・むく)
2006年10月5日生まれ、前橋市出身、健大高崎高校より加入、180㎝・70㎏、ニックネームはムク
<強み>粘り強い守備
<ザスパを選んだ理由>小さい頃の夢でもあったサッカー選手としてのキャリアを、正美さん(強化部長)に誘ってもらってこのザスパでスタートします。自分も群馬県民ですから、群馬に恩返ししたいという気持ちで加入を決断しました。
<抱負>自分の持ち味の粘り強い守備で相手に得点されないことと、積極的な攻撃参加でチャンスメイクできるように全力で頑張ります。また、自分の地元である群馬県の方々にはたくさんお世話になっているので、J2昇格という形で恩返しできるよう全力で戦っていきます。
<佐藤強化部長からの評価>健大高崎高校でプレーし、左利きで(180㎝と)サイズもあって、ウイングバック、センターバック、サイドバックといったところで勝負できるだろうと期待して獲得しました。
■MF11 加々美登生(かがみ・とうい)
1999年2月15日生まれ、山梨県出身、いわてグルージャ盛岡より完全移籍、172㎝・65㎏、ニックネームはトウイ
<強み>ゲームメイク、ラストパス、シュート
<ザスパを選んだ理由>ザスパークの練習環境を見させてもらったり、Zoomを使っていろいろと話を聞いた中で、超攻撃的サッカーという部分で自分が貢献できるんじゃないかと思い、ここに来ました。
<抱負>今年は結果だったり、個人としても数字を意識してサッカーをしていきたいと思います。
<佐藤強化部長からの評価>彼に期待しているのはドリブルです。攻撃的なサッカーをする上で、彼のドリブルは(他との)違いを見せられると思います。
■FW38 小西宏登(こにし・ひろと)
2002年11月12日生まれ、大阪府出身、立命館大学より加入、171㎝・72㎏、ニックネームはコニ
<強み>ドリブル、左足からのキックの精度
<ザスパを選んだ理由>自分の特徴を評価してくれて、自分を必要としてくれたので、このチームでJ2昇格に貢献したいと思いました。
<抱負>自分の特徴であるドリブルや左足からの精度のところで、チームに貢献できるように頑張りたいと思います。まずは1年でのJ2復帰に向けて、自分のすべてを出してチームに貢献します。
<佐藤強化部長からの評価>左利きで、ドリブルや左足の精度といった部分で攻撃にアクセントをつけられる選手だと思っています。
■MF20 下川太陽(しもかわ・たいよう)
2002年3月7日生まれ、大阪府出身、カマタマーレ讃岐より完全移籍、164㎝・63㎏、ニックネームはタイヨウ
<強み>ドリブル、カットインからのシュートやパス、クロス
<ザスパを選んだ理由>オファーをいただいた時、自分を必要としてくれていると感じましたし、この(練習)環境も素晴らしかったので、このチームを選びました。
<抱負>左利きなので、左足のドリブルやカットインからのシュート、パス、クロスでチームに貢献したいと思います。
<佐藤強化部長からの評価>左利きで、前線でのプレーに期待できることと、献身的にプレーし、攻守にわたり運動量を生かしてプレーできる選手であると判断し、沖田監督とも意見をすり合わせた上で獲得しました。
■FW 18 田中翔太(たなか・しょうた)
2001年4月10日生まれ、千葉県出身、ガイナーレ鳥取より完全移籍、178㎝・75㎏、ニックネームはタナ
<強み>得点力
<ザスパを選んだ理由>練習環境の素晴らしさだったり、超攻撃的なサッカーをするということで、FWとしてゴールを量産できると思い、このチームを選びました。
<抱負>自分のゴールでチームの勝利に貢献できるように頑張ります。
<佐藤部長からの評価>ストライカーとして点を取ってくれるだろうと期待して獲得しました。秋元選手とは(青森山田高校と新潟医療福祉大学の)先輩後輩の間柄なので、その辺の絡みも楽しみにしています。
■MF7 西村恭史(にしむら・やすふみ)
1999年11月4日生まれ、大阪府出身、AC長野パルセイロより完全移籍、185㎝・78㎏、ニックネームはヤス
<強み>足元の技術力
<ザスパを選んだ理由>沖田監督と話をした時に、サッカースタイルが自分に合っているなと感じましたし、J2に行きたいと思って移籍を決めました。
<抱負>1年でJ2に戻るために全力で戦います。
<佐藤部長からの評価>もっとできるだろうという思いで獲得しました。J3での経験も豊富ですし、J2やJ1でもプレーできるポテンシャルがあるところを期待して獲得しました。
■DF43 野瀬翔也(のせ・しょうや)
2003年2月14日生まれ、愛知県出身、阪南大学より加入、184㎝・75㎏、ニックネームはノセ
<強み>対人、ヘディング、粘り強い守備
<ザスパを選んだ理由>(ザスパークの)この環境だったり、(クラブの)ビジョンにとても魅力を感じて、このクラブでキャリアをスタートしたいと思いました。
<抱負>J2昇格という目標に向かって、自分の力で少しでも貢献できるように頑張りたいと思います。
<佐藤部長からの評価>大学サッカーで、秋元選手とバチバチとやり合っていましたが、若い力でキャプテンシーを持って勝負してくれるだろうという思いで獲得しました。
■MF8 山内 陸(やまうち・りく)
2000年8月2日生まれ、北海道出身、ヴァンラーレ八戸より完全移籍、170㎝・66㎏、ニックネームはリク
<強み>展開力、ラストパス
<ザスパを選んだ理由>僕の力を必要としてくれた沖田さん(監督)だったり佐藤さん(強化部長)に結果で恩返ししたいのと、超攻撃的サッカーに魅かれて移籍を決めました。
<抱負>ザスパ群馬を昇格させるために来ました。自分の持てる力を発揮して、J2昇格に向けて戦うので応援をよろしくお願いします。
<佐藤部長からの評価>沖田監督も大学時代の彼を見ていて、八戸でプレーしてさらにレベルアップしました。クラブにとって重要な選手になると思います。
■MF6 米原秀亮(よねはら・しゅうすけ)
1998年4月20日生まれ、熊本県出身、松本山雅FCより完全移籍、184㎝・72㎏、ニックネームはヨネ
<強み>左足のキックでのゲームメイク
<ザスパを選んだ理由>超攻撃的なサッカーを主体的にできるということと、新しいチャレンジがしたいと思い移籍を決断しました。
<抱負>J3優勝、J2昇格に向けて自分の持っている力を全部出し切りたいと思います。
<佐藤部長からの評価>今シーズンの新加入選手の中でも経験豊富で、松本で何年もプレーしているので、J3からJ2に昇格する厳しさを非常に感じている選手だと思います。
<了>