互いに信頼し合った“日本一のバッテリー”。創部初の県準優勝に貢献した扇の要
生方公英(うぶかた・こうえい)
3年・捕手
2005年6月10日生まれ、沼田市立西中学校出身、169㎝・68㎏、右投右打
ピッチャーとして、エースの須藤奨太と競い合っていた生方公英選手。「お前に投げたい」という須藤の言葉に心を動かされ、新チームになってから本格的にキャッチャーに転向。明和県央が創部初の県大会準優勝を成し遂げたのは、生方選手が扇の要としてチームを支えてきたからでもある。
取材/Eikan Gunma編集部
――生方君がキャッチャーを始めたのは約1年ぐらい前からだと聞きましたが、その前はピッチャーだったんですね。なぜキャッチャーに転向したのですか。
もともと自分は、ピッチャーをやったりキャッチャーをやったりしていたんですけど、「ピッチャーをやりたい」と思って、ここ(明和県央)に来たんです。
――生方君の代の新チームにはキャッチャーがいなかったから?
キャッチャーもいたんですけど、須藤が「お前に投げたい」と言ってくれたんです。自分は、ピッチャーとして須藤に勝ちたいと思っていて、ずっとライバル関係だったんです。今まで自分にそんなことを言ってくれた人はいなかったし、しかも須藤がそう言ってくれたので、キャッチャー1本でいこうと決めました。
――ピッチャーをするために明和県央に入ったのに、キャッチャーをするという決断は簡単ではなかったのではないですか。
今までキャッチャーをやっていて面白くなかったんです。でも須藤とのコンビの時は、キャッチャーをしていて楽しいと感じたんです。須藤とは、仲が悪かったこともあるんですけど、ボールを受けていて楽しいし、「お前に投げたい」とも言ってくれたし、いつも助けてくれるので、須藤とバッテリーを組みたいなと思いました。
――キャッチャーとしてリードする難しさはどんなところですか。
一番難しいのは須藤(笑)。気分屋なんです。このチームは、須藤が崩れてしまうとチームも崩れてしまうので、そこを何とか自分がメリハリをつけて投げさせると勝てるんです。そこでダラダラしないように、女房役として須藤を支えていきたいと思っています。
――「日本一のバッテリーになろう」と須藤君に言われたそうですね。
それが自分たちの合言葉なんです。
――昨日、LINEで須藤君を励ましたそうですね。
今、須藤が悩んでいる時期で、自分がピッチャーをやっていた時のことを考えると、(練習で仲間に)打たれたら面白くないし、(野球を)やめたくなる気持ちも分かるんです。自分がここまで野球をやってこられたのも、大学で野球を続けようと思えたのも須藤のおかげだし、1つ下の後輩にポジションを取られそうになった時も須藤が応援してくれたんです。だから須藤が悩んでいる時は、自分が支えようと思っているんです。
――須藤君も、生方君を信頼しているのが分かります。
須藤が大変なのが分かりますから。須藤は、大学で野球をやらないって決めているので、やっぱり悔いを残したくないんです。中途半端にやるんだったら、小路颯人(2年)がエースでもいいと思っているんです。でも須藤は負けたくないんだと思います。プライドもあるし、強がることもある。須藤は頑固で、負けず嫌いなので。だから今、こんな(練習に参加しない)状況になっているんですけど。
――リードする上で、心がけていることは?
なるべくピッチャーの投げたい球や、持ち球を生かすようなリードを心がけています。どもピッチャーも気持ちが前面に出てしまうと熱くなってしまうので、冷静さを失わないようにしていますし、逆に気を抜くと打たれてしまうので、そこを気を付けてリードしています。
――ピッチャーだったからこそ、ピッチャー陣の気持ちがわかるのは強みではないですか。
大体、ピッチャー陣が何を投げたいのかが分かります。
――春は、打撃でも活躍しましたね。春の関東大会初戦の甲府工業戦では5打数4安打2打点の活躍でした。どんな練習をしてきたのですか。
秋の大会が終わって、1つ下の後輩にレギュラーを取られそうになったんです。負けたくなかったので、学校から帰った後に毎日、家の打撃練習場所でおじいちゃんにボールを投げてもらって、2時間ぐらいティーバッティングをしていました。
――春の関東大会では、2回戦で強豪の常総学院と対戦しましたが、この試合から学んだものは何だったのでしょう。
チームの雰囲気ですね。ウチのチームは選手一人ひとりの能力は高いのですが、独りよがりというか、自己中心的な選手が多いと感じました。ピッチャーはそれでもいいんですけど、周りもそれだとチームとしてまとまりがなくなってしまうんです。健大や常総学院に比べて、ウチはチームのまとまり、団結力が足りないなと感じました。
――関東大会に出て強豪校と対戦しなかったら分からなかったことです。いい経験をしましたね。
秋に初めて関東大会に出場した時、専大松戸からも、試合の入り方や戦術などを見て学んだことで、春の関東大会で1つ勝てたのかなと思っています。
やっぱり、次の代の選手たちには、自分たちよりも上のレベルに行ってほしいですし、どんどん県央の新しい歴史を作っていってほしいと思っています。
――今夏、チームとして掲げている目標は何でしょう。
もちろん、甲子園出場です。そして出場するだけじゃなく、甲子園で勝ち進めるチームになりたいです。
――個人的に掲げている目標はありますか。
キャッチャーとして、相手に盗塁されない、走られない。盗塁阻止率を上げていきたいです。
県央に来て初めて、「バッテリーを組んでみたい」と思った須藤がいるので、そう思わせてくれた須藤の期待を裏切らずに頑張りたいです。
――夏に対戦してみたいチームはありますか。
秋の関東大会で対戦した専大松戸です。初めての関東大会出場だったため緊張もあり、自分たちのプレーができませんでした。なので、今、自分たちがどれぐらい専大松戸と戦えるのかを確かめたいんです。
――須藤君が、高校卒業後は社会人で軟式野球を楽しみたいと言っていましたが。
須藤とは、大学でも一緒に野球をやりたいんです。須藤は「野球が嫌い」とよく言っているんですけど、本当は野球が好きなんです。やっぱり、嫌いだったらここまで頑張って続けられないですから。
――生方君は、大学でも野球を続けるのですね。
六大学でプレーするのが夢なんです。ただ、自分の力量を判断しながら大学を決めようと思います。
インタビューで掲載しなかった話や雑談からも、生方選手のチームメイトを思いやる優しい性格が伝わってきた。この夏は、目標に掲げた甲子園出場を叶えることはできなかったが、明和県央でチームメイトたちと過ごした3年間は人生の宝となるだろう。大学で思い切り好きな野球に取り組んでほしい。
<了>