群馬の高校野球2022 夏の注目校 桐生第一③

北村流音(3年・投手)

先輩が甲子園に連れて行ってくれたように
今度は自分たちが後輩を甲子園に連れていく

 「最速146㌔の直球をしっかり投げて、要所で変化球を使って抑えていくのが自分のスタイル」と語る桐生第一のエース・北村流音。
 今春は、けがから復帰で本来の力が出せず、ベスト4で終わった。
 北村がケガをしたのが、昨年の秋の大会の最中だった。準々決勝で前橋育英に8-1で7回コールド勝ちをした翌日の練習で肩に痛みが走った。大会期間中だったため、病院で診てもらったのが決勝戦が終わった後。診断名は第一肋骨の疲労骨折。秋の関東大会が始まるまで3週間、投げずに回復を図った。関東大会の準々決勝で浦和学院に負けてから、再び投げずに肩を休ませ、12月23日に手術。本格的に投げ始めたのが、今年の3月に入ってからだった。
 久しぶりに投げてみると、周りから「フォームがすごく変わっているよ」と指摘された。動画を撮って以前の自分のフォームを見比べると、確かに違っていた。本来の投球フォームに戻すため、動画で違っているところを確認しながら直していき、少しずつ調子を上げていった。
 春は、北村自身、本調子ではなかったとはいえ、準決勝で前橋育英に敗れたことに、「秋は前橋育英に勝ったんですけど、冬を越えて、精神力や技術力が負けていたので、力の差を感じました」と力不足を実感した。夏の大会で5連覇中の前橋育英に勝つには、自分たちの力の「現在地」を知ることが大切になる。
夏に優勝するためには、「調子がよくなかったとはいえ、春はコントロールがよくなく、スピードも落ちていたので、そこを改善することと、気持ちの面で相手に負けないことです。気持ちで負けていたら、体も動かないですから。気持ちで絶対に負けないという強い気持ちを持って夏に臨みたいと思います」
そして、再び夏に前橋育英と対戦するとしたら、どう戦おうと思っているのだろうか。
 「向こうは足が速いイメージがあるので、ピッチャーとしては塁に出さないことが一番。コントロールをよくして四球をなくし、守備でもエラーをしないで守れれば、攻撃でもチャンスは来ると思います。春は、初回に先に点を取って、『お、行けるぞ』という雰囲気になり、その裏に前橋育英に逆転されてそのままズルズルいってしまいました」
夏に対戦を楽しみにしているチームがもう一つある。「利根商には、内田湘大君をはじめいい選手が揃っているのは自分たちも知っています。1年の秋に戦って勝っていますが、試合内容がよくなくて、自分も結構、打たれたんです。それから約2年経って、向こうもレベルアップしていると思うので、そのレベルアップした相手にぜひ勝ちたいんです」

 北村が目指すのは、県で優勝して甲子園に行くこと。2020年、北村が1年生の時、当時の3年生が夏に行われた甲子園高校野球交流試合に出場し、甲子園に連れて行ってくれた。新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で、センバツに出場する予定だった32校が夏に甲子園球場に招待されて1試合限定の交流試合を行ったが、その時に北村も甲子園球場の雰囲気を体感し、「甲子園で野球をしてみたい」という思いを強くした。その思いを果たすだけでなく、「先輩たちが自分たちを甲子園に連れて行ってくれたように、今度は自分たちが後輩を甲子園に連れていくのが自分たちの仕事だと思っています」と、先輩たちがくれた貴重な経験を、今度は後輩たちにつないでいく。そのためには、優勝するしかない。
<了>

■Profile
北村流音(きたむら・りお)

2005年2月20日生まれ、桐生市出身。4つ上の兄の影響で、年長の時に野球を始める。桐生西小ファイターズ~桐生中央中学。中学時代に野球塾のSBC(佐藤ベースボールクラブ)に通い、先輩の宮下宝(拓殖大学)に憧れ、家の近所でもあった桐生第一に進学を決めた。中学2年までショートのポジションで、同3年からピッチャーに転向。持ち球は、ストレート、カーブ、カットボール、チェンジアップ、フォークの5種。右投右打、174㎝・75㎏。