クラブ初のCS出場を実現するため大型補強を行ったサンダーズ。本気で優勝を目指すシーズンになる!

満員のオープンハウスアリーナ太田。今シーズンはさらに盛り上がりそうだ(2024年5月5日、仙台89ERS戦)
カイル・ミリングHC(写真提供/群馬クレインサンダーズ)

 コーチ作りの根幹となるヘッドコーチ(以下、HC)に、前シーズン広島ドラゴンフライズをB1リーグのチャンピオンに導いたカイル・ミリング氏を招聘した。ミリング氏は、2020-21シーズンに9勝46敗と西地区10位に沈んでいた広島を、就任1年目で29勝28敗・地区6位にまで引き上げ、3年目の昨シーズンはワイルドカードでCSに出場し、前シーズンの王者・琉球を倒して優勝に導いている。これらの結果が示す通り、采配に長けているHCだ。
 これだけではない。ミリングHCはマネジメント能力に優れ、特に選手やスタッフのモチベーションを上げる能力に目を見張るものがある。
 ミリングHCの獲得に際し、「チームが最高の状態で試合に臨めるよう、誰よりも選手とスタッフを理解しようとする姿勢を持ち合わせています。また、ロスターの選手たち全員の長所を理解し、若手やベテランに関係なく、彼ら一人ひとりのポテンシャル(潜在能力)をチームのためにどう生かせるのかを常に考え、最適解を出せるミリングHCこそ、若手からベテランまで幅広い年代の実力者が揃う群馬クレインサンダーズが飛躍する上で、最も相応しいHC登用だと考えています。結果に裏打ちされたその手腕で、群馬クレインサンダーズを初のCS出場、そして初のBリーグチャンピオンへと導いてくれることを大いに期待するとともに、ミリングHCを先頭にチーム一丸となって2024-25シーズンを全力で戦っていきます」と、クラブはコメントしている。
 広島がたどった優勝街道を、今度はサンダーズがミリング氏と共に歩む番だ。
 

 選手補強でも、クラブのCS進出とBリーグ優勝という覚悟が感じられる。今シーズンは4選手の加入が発表された。

藤井祐眞選手(写真提供/群馬クレインサンダーズ)

 まず1人目は、かつて辻選手とチームメイトだった藤井祐眞選手(PG/SG)を川崎ブレイブサンダースから獲得した。ポイントガードとして冷静沈着なゲームコントロールができるだけでなく、高確率に3ポイントシュートを決めるなど高い得点能力も兼ね備えた選手でもある。また、体を張った粘り強いディフェンスも特長と、チームの勝利に必要な要素を持ち合わせた選手である。これまで、3度のベストディフェンダー賞、2度のベストファイブ賞、ベストタフショット賞を獲得したほか、2021-22シーズンには年間MVPに輝いている。
 クラブも「藤井選手の加入は、チームをCS出場、その先(に優勝)へと必ず牽引してくれると信じています」と期待を寄せる。

細川一輝選手(写真提供/群馬クレインサンダーズ)

 2人目は、細川一輝選手(SG)を三遠ネオフェニックスから獲得。岩手県出身の細川選手は、2020年の上武大学4年生の時、特別指定選手としてサンダーズに加入し、4試合に出場。2ポイントシュート4本、3ポイントシュート1本を決めている。大学卒業後は、京都ハンナリーズ、三遠ネオフェニックスで活躍。昨シーズンは自身初のCSにも出場した。
 細川選手の獲得理由についてクラブはこうコメントしている。
 「上武大学所属時代から得点王を獲得し稀代の点取り屋として活躍してきた細川選手。プロ入り後もその実力の向上は止まることを知らず、入り出したら止まらないと形容される3ポイントシュートでの爆発的な得点力と、日本人選手トップレベルのボディバランスとフィジカルから繰り出されるタフなディフェンスを武器に、B1の舞台で攻守にわたりチームの主力としてその実力を遺憾なく発揮してきました。細川選手の加入により、アウトサイドシュートの成功確率の飛躍的な向上が見込まれるだけでなく、ディフェンスに的を絞らせないことでインサイドプレイヤーの得点期待値も大幅に向上させることができます。また、相手のシューター選手に対しフィジカルのイニシアチブを取り、ディフェンスからオフェンスへの流れを呼び込める群馬クレインサンダーズの起爆剤となる選手として、大きな期待をしております」
 細川選手も、大学時代を過ごした群馬でプレーすることを楽しみにしている。
 「かつて大学4年生の時に特別指定選手として在籍していたことがありますが、コロナ禍もあり心残りのままクラブを去ることになりました。 そしてこの度、大学時代を過ごした群馬へ戻ってプレーできることを大変嬉しく思っております。クラブを去って以来、何度も何度も根気強く熱意を伝え続けていただいた吉田真太郎GMには心から感謝を申し上げます。 自分自身も最大限の努力を続け日々成長できるよう精進し、クラブ悲願の地区優勝、チャンピオンシップ優勝に貢献できるよう全力でプレーします」
 群馬にゆかりのある選手の獲得は、ファンにとっても嬉しいことだ。

マシュー・アキノ選手(写真提供/群馬クレインサンダーズ)

 3人目は、フィリピン出身で日本国籍を持つ身長205㎝のビッグマン、マシュー・アキノ選手(PF)。信州ブレイブウォリアーズから獲得した。
 「恵まれた体格からは容易に想像がつかない器用なシュートタッチから繰り出される3ポイントシュート、外国籍選手相手にも引けを取らないフィジカルを生かしたドライブなど多岐にわたるオフェンスのバリエーションを持つアキノ選手ですが、長いウィングスパンから繰り出されるブロックショットや密集でも関係なく勝ち取ることのできるリバウンドスキルなど、そのポテンシャルは極めて高く、また、溢れ出る向上心も相まって、群馬クレインサンダーズでさらにそのポテンシャルを飛躍させることができると思っています。
 アキノ選手にはレギュラーシーズン60試合を戦っていく中でビッグマンのプレータイムシェアの一翼を担ってもらい、1試合40分間を通して常にチームがハイインテンシティで戦える状況を作り出してもらうだけでなく、ストレッチビッグマンとしての特徴を生かして相手ディフェンスをペイントエリア内外に分散させてチャンスメイクしてくれることを大いに期待しております」とクラブはコメントし、昨シーズン、けが人続出で層の薄かったビッグマンのポジションを強化した。

ヨハネス・ティーマン選手(写真提供/群馬クレインサンダーズ)

 そして4人目は、ヨハネス・ティーマン選手(PF)。7月27日のパリオリンピックの日本対ドイツ戦にも出場していた現役のドイツ代表選手でもある。
 ティーマン選手は、ユーロリーグに所属するアルバ・ベルリンでキャプテンを務め、ドイツリーグで3度の優勝を経験、ファイナルMVPなど数々のタイトルを獲得。ユーロリーグでも昨シーズンは平均得点でリーグ12位、リバウンドで15位、EFF(貢献度)でも11位と、ヨーロッパを代表する現役のスター選手でもあった。
 ティーマン選手の加入に際してクラブは、「世界レベルのチャンピオンメンタリティと、みなぎるキャプテンシーで、新生・群馬クレインサンダーズをチャンピオンクラブへと力強く牽引してくれることを期待しております」とクラブの公式HPを通じてコメント。
 ティーマン選手のプレーの特徴は、多彩なプレーと強靭なフィジカルでインサイドでの得点を量産できることと、高確率でアウトサイトシュートを決められること。ディフェンス能力にも定評があり、フォワード(F)からセンター(C)ポジションまで幅広く守ることができる選手である。プレー面だけでなく人間性にも優れており、パリオリンピック後のチーム合流となることから、開幕までの短い期間でもチームにフィットにしてくれるだろう。
 ドイツは、2023年に日本で開催されたワールドカップの優勝しており、世界ランク3位のバスケ強豪国。ティーマン選手が日本への移籍を決めた理由をドイツ大衆紙『ビルト』に語った記事を、日本のスポーツニュースサイト『THE ANSWER』(2024年7月18日配信)が紹介している。
 「ユーロリーグのいくつものチームと話をした。もちろんアルバ(ベルリン)とも。しかし日本からのオファーはとても良いものだった」とティーマン選手は明かしている。さらに、「昨年のワールドカップで沖縄に2週間以上滞在したことも『決断に至った大きな理由だ』」
 世界の頂点を知るティーマン選手の加入は、サンダーズの選手にとっても大いに刺激になるだろう。また、サンダーズのファンにとっても間近で世界トップレベルのプレーを見られるチャンスでもある。
 
 2024-25シーズンは10月3日から開幕し、サンダーズVS広島(オプアリ開催)がBリーグのオープニングゲームとなる。目標に掲げているCS進出のためには、ファンの熱い声援が欠かせない。今シーズンは、選手、スタッフ、ファンと、サンダーズに関わる全ての力を結集し、CS進出とその先の優勝に挑んでほしい。日本を代表するクラブへと歩みを進めるサンダーズが、新シーズンにどんな戦いを見せてくれるのかが楽しみだ。

<了>

■2024-25シーズンのロスター
#0 藤井祐眞(PG/SG)…新加入
#1 コー・フリッピン(PG/SG)…2シーズン目
#3 マイケル・パーカー(PF)…5シーズン目
#4 トレイ・ジョーンズ(SF)…5シーズン目
#8 八村阿蓮(SF)…4シーズン目(※特別指定での加入を含む)
#9 辻 直人(SG)…2シーズン目
#11 野本建吾(PF)…4シーズン目
#13 マシュー・アキノ(PF)…新加入
#14 菅原 暉(PG)…5シーズン目(※特別指定での加入を含む)
#25 ケーレブ・ターズ―スキー(C)…3シーズン目
#29 細川一輝(SG)…新加入
#32 ヨハネス・ティーマン(PF)…新加入

■スタッフ
ヘッドコーチ カイル・ミリング(広島から新加入)
アシスタントコーチ 青木勇人(横浜BCから新加入)
アシスタントコーチ 西谷亮一(広島から新加入)
アシスタントコーチ兼スキルコーチ 池田親平
ビデオコーディネーター 境谷一樹(北海道から新加入)
ビデオコーディネーター 内藤央哉
マネージャー 藤野梨早
ストレングス&コンディショニングコーチ 和田洋明
アシスタントストレングス&コンディショニングコーチ 尾﨑竜之輔
アスレティックトレーナー 水野彰宏
アスレティックトレーナー 山陰智司
トレーナー 伊達 穂
メディカルトレーナー 天野喜崇