4月17日(水)にレバンガ北海道との試合に臨んだ群馬クレインサンダーズ。1Qは25-14と11点差で試合展開を優位に持ち込んだものの、2Q終盤から苦戦を強いられ、4Qには一時13点差をつけられた。しかしそこから一気に攻撃をしかけ2点差まで詰めたものの、逆転まで至らずに90-98で敗れて、ワイルドカード2位以内をめぐる争いから大きく後退した。
ワイルドカード争いの終盤にマイケル・パーカー選手、ケーレブ・ターズスキー選手という2人のスタメン選手を欠いたことは、CS進出という目標達成を難しくした。そんな厳しい状況でも、チームは勝利への強い思いを前面に出して戦い続けている。17日の北海道戦はその象徴のような試合だった。
ここでは、北海道戦でのチームの奮闘をレポートする。
取材/星野志保(Eikan Gunma編集部)
3月31日の広島ドラゴンフライズ戦で負った怪我の影響で、マイケル・パーカー選手とケーレブ・ターズスキー選手という2人のスタメン選手を欠いたサンダーズは、ベン・ベンティル選手と八村阿蓮選手をスタメン起用していたが、17日の北海道戦では相手のデモン・ブルックス選手に対応するため、八村選手ではなく野本建吾選手をスタメン起用した。今季初スタメンについて野本選手はこう語る。
「今のチームはサイズがない状況で、リバウンドだったり、ディフェンスだったりの部分を自分の持っている能力以上のパフォーマンスを発揮しないといけないと思っています」
1Qは、ゾーンディフェンスが上手くはまり、オフェンスでも辻直人選手が2本の3Pシュートを含む10得点を挙げたほか、トレイ・ジョーンズ選手も6得点と、このQだけで北海道に2つのタイムアウトを取らせたほど、サンダーズの攻守がかみ合った。2Qはゾーンディフェンスでインサイドを固めるサンダーズに対し、北海道は積極的にアウトサイドシュートを打ち、2Q終了間際に相手のリード・トラビス選手に3Pシュートを決められ43-45と逆転を許した。
サンダーズは、トラップ(ディフェンス側が、あらかじめ用意していた罠に相手を追い込み、ミスを誘発させるプレー)やゾーンを敷いて守備を固めたものの、後半は、相手のダラル・ウィリス ジュニア選手とブルックス選手にポストアップ(ポストエリアで相手ディフェンスの動きを制してパスを受けるプレー)でやられたこともあり、4Qで13点差までリードを広げられた。
サンダーズは、ゾーンからマンツーマンにディフェンスを変更して対応したものの、「ウチは、現状、サイズが足りない状況で、中固めをするゾーンをしながら相手を迷わせることをしているのですが、それだと相手に3Pシュートを決められてしまう部分があるんです。今日はレバンガさんが外のシュートを決めるような状況になったので、(途中で)ディフェンスをマンツーマンにしてトラップをしかけたりしたのですが、そこも破られてしまった。もう少しゾーンを続けてみるとか、そういう決断を少しできた部分もあったのかな」と、北海道にやられてしまった悔しさをにじませた水野宏太HC。
4Q残り9分13秒のウイリス ジュニア選手の2Pシュートで59-72と13点差になったところで、サンダーズのベテラン選手たちがそれぞれの力をさらに振り絞った。ベンティル選手、辻選手、ジョーンズ選手が得点を重ね、残り2分23秒の辻選手の3Pシュートとバスケットカウントで、81-83とわずか2点差まで一気に詰めた。
しかし反撃はここまでだった。相手の司令塔・寺園脩斗選手が再びコートに入ったことで、形勢が逆転。寺園選手に2Pシュート、3Pシュート、フリースローを立て続けに決められ、残り38秒で84-92と再び点差が開いた。
それでも、サンダーズの選手は試合をあきらめなかった。残り15秒にベンティル選手が、辻選手のアシストで3Pシュートを決めて87-94とし、残り5秒には並里成選手のアシストで辻選手が3Pシュートを決め90-96と6点差まで縮めた。最後はファウルゲームに持ち込んだため、相手にフリースローから2点を決められ、90-98で試合を終えた。
北海道の小野寺HCはサンダーズ戦のポイントをこう挙げている。
「今日のゲームプランの大きなポイントは、まず群馬さんに気持ちよくプレーさせないことでした。そこに関しては、ベンティル選手はある程度コントロールできたのかなと思います。ジョーンズ選手にフリースローを与えることを警戒しなければいけなかったのですが、(フリースローを7本与えてしまったところは)まだまだ自分たちの足りない部分だと思っています(※)。
あとは、辻選手の部分。直近の試合であまり調子が良くなかったのですが、今日は3Pシュートを11本中6本(54.5%)と気持ちよくプレーさせてしまい、そういう部分の甘さが最後の最後に出てしまいました」
(※)いつもなら高確率でフリースローを決めるジョーンズ選手が、この日は7本中1本しか決められないほど調子を落としていたことで、北海道にとってはフリースローからジョーンズ選手に得点を与えずにすんだ。
この試合で、辻選手の活躍が光った。小野寺龍太郎HCが「直近の試合であまり調子がよくなかった」と辻選手について語っていたが、3月23、24日の富山グラウジーズ戦2試合と、27日の秋田ノーザンハピネッツ戦を欠場し、30日の広島ドラゴンフライズ戦で復帰したものの、調子が上がらなかった。
だが、4月14日の千葉ジェッツ戦後のロッカールームで、ゲーム中になかなかボールに触れない状況について水野HCと話し合ったことが、北海道戦での活躍につながった。
「いつも僕に懸命にスクリーンをかけてくれてくれるケーレブやマイクが怪我でいなくなり、アレン(八村選手)も慣れないポジションでプレーしなければなりませんし、建吾も今までプレータイムがなかったのに急に出ることになった中で、懸命にスクリーンをかけてくれています。そういう状況の中でも本当にトレイの力はすごく、リーグでも1、2位を争うすごい実力の選手だと思うんです。でも40分の試合時間を考えた時、彼がずっとプレーし続けるとなると負担も大きくなり、強豪チームに勝つことは難しいと思うんです。そこに自分も加わって、チャンスメークだったり、狙えればシュートも打っていく。そうしながら勝負所でトレイに任せる方が、このチームにとって一番強い試合展開になると思って、HCに話をしました」と明かしてくれた辻選手は、この試合で26得点を挙げて奮闘した。今シーズンを迎えるに当たり、辻選手は「日本一のシューターになる」と抱負を語ってくれたが、この試合ではその言葉通り、日本を代表するシューターの一人であることを証明してくれた。
試合に敗れはしたものの、「全員でボールを回し、それぞれの選手の強みを生かして、皆でバスケをしようというところでうまく体現できていました」と辻選手が言うように、1Qは思い通りの試合展開に持ち込めたものの、サンダーズの戦術を徐々に攻略した北海道に対し、2Q終盤以降は厳しい戦いを強いられた。
「その中で、ナリト(並里選手)がルーズボールにダイブしたり、終盤の大事なところで僕がミスをしたところで、彼がルーズボールで何とかつなげてくれてトレイの3Pシュートにつながりました。彼が球際の所でチームを引っ張ってくれているので、これは次につながると思いますし、(今週末の)秋田戦では今日の試合の反省を生かしながら、何とか勝てたらいいなと思います」と、記録には残らない部分で懸命に戦うキャプテンを労った。
サンダーズの良い所は、選手がコーチ陣に話ができること。その環境を水野HCが意識して作り上げており、辻選手だけでなく並里選手も試合中に感じたことをコーチ陣たちに伝えている。こうしたチームの姿勢が、今季、シーズンを経ることにチームが全体が成長している理由の一つになっているようだ。
今シーズンも残すところ、今日の秋田ノーザンハピネッツ戦を含めて6試合となった。ワイルドカード2位の島根が今日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に勝ち、サンダーズが秋田に連敗すれば、その時点でサンダーズのCS進出の可能性は消える。
前回の3月27日の対戦では、辻選手が怪我で欠場していたものの、ターズースキー選手、パーカー選手が出場していた中で68-85で敗れている。秋田のゾーンディフェンスに苦しめられたのと、オフェンスリバウンドを取れずにセカンドチャンスにつなげられなかったこと、シューターの古川孝敏選手を乗せてしまったことが主な敗因だった。今回の秋田との対戦では、ゾーンディフェンスで中を固めれば、古川選手や田口成浩選手と言ったシューター陣が外から得点を狙ってくる。試合の結果と共に、サンダーズが、秋田をどう攻略するのかにも注目したい。そして、今季は秋田に1度も勝てていないため、その雪辱を果たしてほしい。
<了>