3月31日の広島ドラゴンフライズ戦で負った怪我で、マイケル・パーカー選手、ケーレブ・ターズ―スキー選手という主力のビックマン2人を欠いたチームは、4月6、7日の信州ブレイブウォーリアーズ戦に、両日共、延長戦の末に辛勝。中2日で迎えた10日の宇都宮ブレックス戦は、星野曹樹選手や木村圭吾選手といった若手を起用してチーム一丸で戦い、前半までは互角勝負に持ち込んだ。後半は相手の3Pシュートがさく裂し、77-89で敗れて3連勝とはならなかったものの、ワイルドカード5位と順位は変わらず、同1位の千葉ジェッツとの差もわずか3試合というほど、CS進出をかけた2位以内の争いはし烈になっている。
取材/星野志保(Eikan Gunma編集部)
7日の信州戦後に、「他のチームよりも10分多く、少ない人数でプレーをしているってことを考えると、疲労の軽減っていうのは間違いなくあると思います。明日の休み、そして明後日の前日練習も含めて考えていかなくてはいけないですし、何かしらのチャレンジをしていかなくてはいけないと思っています」と10日の宇都宮戦についてこう語っていた水野宏太HC。
そして迎えた宇都宮戦では、八村阿蓮選手を5角形のトップに置いたゾーンディフェンスで、宇都宮のオフェンスに対応。前半こそ互角勝負に持ち込めたが、後半は宇都宮の渡邉裕規選手と、D.J.ニュービル選手の3Pシュートで点差が広がり、77-89で敗れている。ビッグマン2人を欠く中で、マンツーマンディフェンスではなく、八村選手をトップに据えたゾーンディフェンスは、水野HCが語っていた「何かしらのチャレンジ」だった。
また並里成選手も宇都宮戦を迎えるに当たり、「宇都宮は、リーグの中でも一番タフなチームだと僕は思っていて、間違いなくインサイドで攻めてくるだろうなとは思っています。コートに出ている5人で、体を張ってうまくファウルを使いながら、試合を進めていかないといけないなと思っています」と語っていた。
その言葉通り、インサイドからの攻撃に対応したものの、一方で宇都宮にはシューターも揃っており、3Q開始直後にベンティル選手の2Pシュートで41-40と逆転に成功したものの、直後に相手の竹内公輔選手、ニュービル選手の3Pシュートが立て続けに3本決まり、宇都宮に試合の流れを渡してしまった。
試合後、水野HCは宇都宮に敗れたことに、「第3クオーターの入りで冷静さを失って相手に流れを持ってかれてしまいました。もっと注意するべきだったのは、やはりゲームを支配する能力を持っているニュービル選手をどう乗せないようにするかだったり、要所で渡邉選手にシュートを決められてしまったところだったり……。その辺のゲーム展開の読みをもっとしっかり正確にして、チームにより意識をするような声がけをするべきでした。悔いの残る試合でした」と口にした。
スターティング5で出場していたビッグマン2人が抜けるというチームの緊急事態で戦った信州戦と宇都宮戦の3試合では、特にベンチスタートだった選手たちの成長が見られた。水野HCも試合後に、「現状、自分たちの難しいチーム状況の中で、選手たちは勝ちを見出そうとファイトしてくれた試合だったと思っています」と奮闘した選手たちを労った。
例えば、6日の信州戦では、八村阿蓮選手の活躍がチームに勝利をもたらした。
前半でファウル3つを取られた八村選手は、後半は「ノーファウルでいこう」と決めて試合に入り、延長戦の81-81の展開から3連続でファウルをもらい、5本のフリースローを決めて86-83で勝利を手繰り寄せた。
大学までは4番(パワーフォワード/PF)でプレーしていた八村選手は、プロ入り後に3番(スモールフォワード/SF)にポジションを変更。信州戦では大学までの経験が役に立った。八村選手も、「大学までずっとビッグマンとしてやってきた経験が今日は出せたかなって思います」と話し、「今は外のシュートも磨いていて、そういったプレーも今後もっと見せられるかなと思っています」と自らの成長に自信を見せた。
その言葉通り、宇都宮戦では3Pシュートを積極的に打ち、4本中3本を決めて見せた。
ビッグマン2人がいない状況で奮闘したのが、野本建吾選手だ。リング下で相手の外国籍選手たちに対して体を張っただけでなく、信州戦ではシュートも積極的に打った。
「2人がいないから、今日のためにしっかり準備したのではなく、試合に出られない時でもずっと、毎日毎日準備し続けてきたので、いつ試合に出てもプレーできる自信は常に持っていました」と野本選手。
現状、ビッグマンはベン・ベンティル選手一人だけ。パーカー選手、ターズースキー選手共に全治4週間の診断が出ているため、レギュラーシーズン終了までこの状況で戦わなければならないことに水野HCは、「もう吹っ切るっていうところから始まりましたね」と明かしている。
今シーズンは、シーズン序盤にエースのトレイ・ジョーンズ選手とベンティル選手を、要所ではパーカー選手が怪我で戦列を離れるなど、チームにとっては試練のシーズンとなっている。そして今もCS進出をかけたワイルドカード争いの真っただ中で、今度は主力のビッグマン2人を欠く事態となった。だが、水野HCは、「そういう時に野本選手が活躍するんです」と前を向く。野本選手の他、若手の菅原暉選手、木村選手もこれまで以上にシュートへの執着を見せ、星野曹樹選手もコート上で堂々としたプレーを見せてくれた。チームの危機的状況が、若手選手の成長を促しているようだ。
13、14日は、東地区3位の千葉ジェッツと、CS進出をかけて戦う。今シーズンの千葉Jとの対戦成績は1勝1敗。昨年11月8日はジョーンズ選手、ベンティル選手を欠く中78-86で敗れ、3月6日は95-86でサンダーズがB1に昇格してから初めて千葉Jから勝利を挙げた記念すべき試合となった。
千葉Jは前節、76-81で秋田に敗れて3連敗中と調子を落としているものの、今シーズンは天皇杯2連覇、EASL(東アジアスーパーリーグ)で優勝を成し遂げるなど、富樫勇樹選手を擁する力のあるチームだ。秋田戦では、富樫が15本中5本の3Pシュートを決めており、富樫選手の3Pシュートをいかに抑えるのかが鍵を握りそうだ。
さて、4月11日現在のワイルドカードの順位は、1位千葉J(31勝20敗)、2位島根(30勝21敗)、3位広島(29勝22敗)、4位SR渋谷(28勝23敗)、5位サンダーズ(28勝23敗)、6位FE名古屋(27勝24敗)、7位川崎(27勝24敗)、8位佐賀(27勝24敗)と1~8位までわずか4勝差である。今シーズンも残り9試合となったが、サンダーズにとって連勝すればCS進出が現実味を帯び、連敗すればワイルドカード2枠争いから後退する「しびれる」状況。
CS進出をかけて、精神的にタフな試合が続いていることに水野HCはこう話す。
「僕たちがこれから出していく結果というのがまだこのクラブ史上見たことのない形式に繋がるところなので、その歴史を作る1ページになろうという話を選手たちにしています。やっぱり自分たちが今、そのワイルドカード争いをできているのは、我慢してやってきた結果です。このプレッシャーの中で、このワイルドカードを争う状況の中で試合ができるチームは限られていますし、自分たちがそれだけいい経験をできているので、それがチーム力、そして個々のキャリアの先に繋がっていくようなシーズンにしたいと思っています。そしてファンの皆さんのためにも戦いたいと思っています」
目標であるCS進出を叶えるためには、選手はもちろん、指揮を執る水野HCや対戦相手の戦力分析を担当するアシスタントコーチ、ビデオコーディネーター、選手のケアを担当するコンディショニングトレーナー、アスレティックトレーナー、メディカルトレーナー、マネージャー、サポートトレーナーといったスタッフ陣、そして熱い声援で選手の背中を押すファンが一丸となって総力戦で戦うことが求められる。
まずは千葉Jに連勝して、4月17日(水)にホームで行われるレバンガ北海道戦を迎えたい。
<了>
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