2月12日の試合後から約1カ月の間はリーグ戦がなかったが、3月8日のリーグ再開から2勝7敗と、チャンピオンシップ(CS)進出に向け1試合でも多く勝利が欲しい中でサンダーズは足踏み状態が続いていた。3月25日の秋田ノーザンハピネッツ戦では、今季初の5連敗を喫し、この試合の敗戦で東地区5位に順位を落としたものの、翌日の試合で互いを信じチームとして1つになって戦ったことで84-80と辛勝。連敗をストップさせた。ここでは、5連敗をした3月25日の試合後の会見から、サンダーズが抱えていた課題を見てみよう。
文・写真/星野志保(EIKAN GUNMA編集部)
「率直に、本当にタフな状況に、チームとしているかなというふうに思っています。負けが続いている中で、早くこの連敗を止めるべく、僕たちはやるべきことをやる。目指してきたものをしっかりやり続けます」
3月25日に秋田に76-99で敗れた試合後の会見で、こう語った水野宏太HC。なかなか勝利をつかめない状況に、力を振り絞るように一語一語丁寧に語る表情からは、落胆の色がにじみ出ていた。
そして、こう続けた。
「試合の最初から最後まで戦い続けること。これをなくしては結果を出すことはできないと思っています。それを本当にやるべく、もう一度明日に向けて臨まなくてはいけない。応援していただいているファンの皆さんが、やきもきするような結果になってしまっているので、まずはその結果を変えること。その先に内容も含めてしっかりと質の良いバスケットができるようにしなければいけないと思っていますが、まずはこの連敗を止めること。点差や試合内容に関係なく、まずは連敗を止めること。そこを目指していきたいと思います」
連敗を止めるために臨んだ25日の秋田戦。1Qはトレイ・ジョーンズ、ケーレブ・ターズースキー、並里成、ジャスティン・キーナンらが得点を決めサンダーズが優位に試合を進めたが、1Q後半に相手のケレム・カンターや川嶋勇人といったスコアラーに3ポイントシュートを効果的に決められ、19-22と3点ビハインドで2Qに臨んだ。
2Qは山崎稜の3Pやアウトサイドペイントのシュートが決まり、26-24と逆転に成功するものの、またしても秋田のカンターの3Pが立て続けに決まり、2Q終了時点で39-47と、試合の流れを秋田に渡してしまった。
後半になっても秋田の勢いは止まらず、この試合でケレム・カンターがキャリアハイの32点を獲得する活躍を見せたほか、ベンチメンバーのポイントが55点(サンダーズ14点)、速攻からの得点28(同8)、ターンオーバーから得点24(同9)といずれもサンダーズを圧倒した。
一方のサンダーズは、トレイ・ジョーンズが29点とオフェンスでチームを牽引し、ディフェンスでもハッスルプレーを見せて攻守にわたって活躍したものの、「トレイの他に活躍した選手を簡単には挙げられないような内容の試合でした。勝ち負けは1人に頼るものではありません」と、チームとして勝てなかったことに肩を落とした。
昨季の課題は、苦しい展開になるとジョーンズ1人に頼り過ぎるところだった。そのため今季は水野HCの下で、他にも起点を作ることに取り組んでいた。この試合では、マイケル・パーカー32分38秒、トレイ・ジョーンズ32分27秒、アキ・チェンバース26分20秒、ケーレブ・ターズスキー29分52秒、並里成29分26秒といずれもスタートから出場した選手のプレータイムが30分前後と長くなり、ベンチからスタートした選手のプレータイムと得点が伸びなかった。
「理想としては、いろんな選手にプレータイムを分散させて、(出場した選手が)活躍するというのが自分のやりたいことですが、そこが上手くできていない現状があります。今日は、相手の同じポジションの選手がしっかり活躍して、僕たちは同じポジションの選手が活躍できなかったというのが、(公式記録の)数字を見てもわかると思います。(今季)『文化を作りたい』と一貫して言ってきた中で、勝つときも負けるときもチームとしてしっかり戦うことをやらなくてはいけない。それが現状はできていません。文化は短い期間では作れないというのは分かっている中で、(なかなか勝てない)こういう苦しい中で、自分たちはまだまだ踏ん張る力がないのが見えています。それをチーム全員で乗り越えていきたいと思います」と、水野HCは苦しい胸の内を吐露した。
また、プレーに関しては、「最近は、特にトランジションのところで意思の疎通がうまくいっていません。ゲーム展開が厳しくなってきたときに、なかなか自分たちでコントロールしてオフェンスするというより、無理をしてしまっている状況があったのかなと思います。そこは改善が必要だと思います」と語った。
チームのエースであり、副キャプテンでもあり、この試合で勝利のために攻守で奮闘したジョーンズは、チームの苦しい状況についてこう語っている。
「今日は、自分たちが望んだ結果ではありませんでした。自分たちが勢いに乗ろうとしたときに、相手の3Pが決まったというのがあり、それが痛かったと思います。今、チームとして苦しい時期で、なかなかうまくいかない状況ではありますが、頭を下げているとこの状況から抜け出せないので、しっかりエナジーを持って、互いを信じてプレーして行くしかないと思っています。それが唯一、このスランプ状態から抜け出せる方法なのかなと思います。今日の試合でもチームとして機能していた時間もあるので、明日はそのいい状態を40分間継続できれば、明日は違う結果(勝利)が得られるんじゃないかと思います」
翌日の試合では、1Qで14-20と秋田にリードをされるものの、2Qは26-16と試合の流れを引き寄せ、3Qで25-26、4Qで19-19と後半は互角勝負だったが、サンダーズはスタートの選手にプレータイムが偏ることなく、ベンチメンバーも含めてタイムをシェアし、ジョーンズ頼りにならないオフェンスで得点を分散するなど、チームとして戦った結果、喉から手が出るほど欲しかった勝利を6試合ぶりに引き寄せた。
水野HCは、「長いトンネルをようやく抜けて、5連敗からようやく1勝をもぎ取りました。なおかつ、互いに良い試合をして、その中でしっかり自分たちが40分間やり続けることで勝てました。連敗を脱出したこと、戦い方(が良かったこと)の両方を含めて、自分たちにとって大きな勝利になったと思っています」と、ホッとした表情を浮かべた。
また、25日の試合では、プレータイム7分44秒、得点3と十分な結果を残せなかった菅原暉が、翌日の試合では16分47秒と2倍以上のプレータイムを得て、3P1本と含む9得点を挙げる活躍を見せた。
「今日も秋田との試合で、ゲームプランとしては基本的なことを、とにかく自分たちにフォーカスして遂行しようという監督からの指示もあったので、特に難しいことを考えることなくシンプルに、かつディフェンスをソリッドにやる(堅固に守る)ことを意識して試合に臨みました。昨日よりはいい試合展開になって我慢して勝つことができたのでよかったと思います」と菅原は喜びを口にした。
今季も残すところあと15試合になった。3月26日現在でサンダーズは24勝21敗で東地区3位を維持しているが、4位の秋田が23勝22敗、5位の宇都宮も23勝22敗と、3~5位までが混戦状態である。チャンピオンシップ(CS)進出をするためには、東地区で2位以内に入ること、もしくはワイルドカード2位以内に入らなければならない(※)。すでに東地区1位の千葉ジェッツは40勝5敗で、CS進出を決めている。東地区2位のアルバルク東京は35勝10敗と、サンダーズとは勝利数が11も離れており、サンダーズが残り15試合で2位になることは難しい。ワイルドカードでもサンダーズは3位だが、2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズの32勝13敗と勝利数で8差となっており、こちらも厳しい状況だ。CS進出に向け、残りの15試合は負けられない試合が続く。
※【チャンピオンシップ(CS)進出の条件】
B1の各地区(東地区・中地区・西地区)上位2位までの6チームは自動的にCSに進出。各地区上位2位を除き、全地区の中で上位2チームがワイルドカード1位、2位としてCSに進出できる。
ただ、今回の5連敗はCS進出に向け苦しい状況に陥ったものの、この連敗があったからこそ、もう一度チームとしての現状を振り返ることができ、チームとして互いに信頼し合い1つになって戦うことの大切さを選手一人ひとりが胸に刻んだと思う。今季が終わったときに、彼らが「あの5連敗があったからこそ、チームとして成長できた」と思えることが今後のサンダーズにとっては大事になる。ただ一つ言えるのは、bjリーグ時代に毎年下位に沈んでいたチームが、B1昇格2年目で東地区3位、ワイルドカード3位という成績にいるのは、すごいことだと思う。
さて、4月1、2日のホーム戦は、西地区1位の島根スサノオマジック(38勝7敗)との対戦である。4月15日に新アリーナ「オープンハウスアリーナ太田」がオープンするため、太田市運動公園市民体育館で開催される最後の試合となる。
約1年前の4月13日(水)、93-85でサンダーズは島根に勝利した。しかし、島根は新型コロナウイルスの影響で2試合が消滅したことでCS進出が決定し、試合後に急遽、太田市運動公園市民体育内で記者会見が開かれた。そして、今年も4月1日に島根が勝つと、再び太田市で島根のCS進出が決まる。サンダーズはワイルドカード2位以内に入り、目標のCS進出に望みをつなぐためにも、チームが1つになって全力で戦って島根に勝つしかない。熱い戦いが今週末も続く。
<了>