田中陽翔(3年・遊撃手)
僕たちは全国制覇を目指している。
群馬で勝つのは当たり前と言いたい
「(昨年の)中3世代で間違いなくナンバーワンの選手」と青栁博文監督が言うのが1年生の田中陽翔だ。
今年4月に高校に入学し、高校生として初めて出た試合が春の準々決勝・太田高校戦。入学から1カ月で、5番ショートでスタメン出場した。
「高校野球は、球のスピードや、走るスピード、打球の速度も違いますし、それに観客の人数も違いました」と、緊張の中でプレーした。
前橋育英との決勝戦では7番ショートでスタメン出場。1-2でチームは敗れたものの夏の甲子園出場を阻んでいる前橋育英の強さを実感した。
「これが前橋育英なんだと思いました。前橋育英に対し、いつも(健大が)僅差で負ける、決勝で勝てないイメージがありました。前橋育英は“圧”がすごくて勢いがあり、団結力もありました。実際に相手の雰囲気を知ることでできてよかったです。『打倒前橋育英』と言うより、僕たちは全国制覇を目指しているので、群馬で勝つのは当たり前だと言いたいです」
青栁監督が「安定した守備で、プレーも落ち着いている」と評価するように、田中もショートの守備に自信を持っている。中学時代に所属していた東練馬リトルシニアで、元東京ヤクルトスワローズの内野手で、日本代表のキャプテンまで務めた宮本慎也氏に、ほぼ毎週土・日に、ショートの守備を教えてもらった。バンドした打球の合わせ方や、捕球時の“間”の作り方はもちろん、打球に対する一歩目が大事だと学んだ。バッターのスイング、ネクストバッターサークルで振っているスイング、ピッチャーの変化球を見たりして、一歩目の動きを変えることも宮本氏のアドバイスでできるようになった。
宮本氏から多くのことを学んだ中で一番心に響いているのは、「ショートというのはリーダーのようなもの。守備で周りを引っ張っていかなければいけない」という言葉だ。
野球への取り組み方も中学時代に学んだ。元オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)と東北楽天ゴールデンイーグルスの投手だった東練馬リトルシニアの徳元敏監督から学んだ。
「言われたこと全部を真に受けるのではなく、1回やってみて判断しないさいと教えてもらいました。自分に合わなかったら止めたり、合っていれば継続したりと、しっかり使い分けています」
田中は、夏に向けバッティング強化に取り組んでいる。春は、準々決勝が4打数1安打、決勝戦は2打数無安打と、良い打球を打てずに悩んだ。そんな田中に対し、宮本氏から健大の赤堀佳敬コーチを通じてアドバイスをしてもらい、フォームに問題が有ることがわかった。
「春は、バッティングで左ひじが入ってこなかったんです。ひじが入ってこないと、良い打球が打てないんです。(バットの)ヘッドが頭の後ろにあればコンパクトにバットを出せるのに、頭の前に来ていたのでバッドが遠回りしていました。今はだいぶスイングが変わって、打てるようになってきました」
バッティングに手ごたえを感じている田中は、夏の大会で力を試すのを楽しみにしている。
田中の将来の夢はメジャーでプレーすること。
「高校から直接プロに行き、28歳くらいでメジャー(MLB)に行くのが夢です。その夢を叶えるために、どんないいピッチャーが来ようが、いいバッターが来ようが、すべてに対応できるようにYouTubeでメジャーの選手たちのさまざまなプレー映像を見て学んでいます」
田中が見据える先は、甲子園出場でもなく、プロ入りすることでもなく、その先のメジャーでのプレーだ。なぜ、メジャーにこだわるのだろうか。
「メジャーでしっかり結果を残して、将来、現役を引退した後も、海外で生活をしたいからです。子どもの頃から海外が好きなんです」
将来の人生設計までを考えている田中に、スケールの大きさを感じる。まずは今夏、全国制覇を目指して県の頂点を狙う。
<了>
■Profile
田中陽翔(たなか・ひろと)
2006年6月25日生まれ、東京都出身。父は元プロ野球選手の田中充氏。5歳の時に野球を始めた。中学では東練馬リトルシニアに所属し、昨年はリトルシニア全国選抜野球大会とリトルシニア日本選手権大会で準優勝した。健大を選んだのは「甲子園に出たい気持ちが強かった」というのと、「3年間しっかり最後まで見るから。ドラ1で(プロに)行かせるから」という赤堀佳敬コーチの熱意に心を動かされたからだ。夢はメジャーでプレーすること。182㎝・79㎏、右投左打。