群馬の高校野球2022 夏の注目校 桐生第一④

提箸優雅(3年・一塁手)

春に出たメンタルの弱さを克服し
打率6割で、甲子園出場に貢献する

 「練習試合ではあまり打たないが、公式戦になると打つ」と今泉壮介監督が言うほど、提箸は試合で勝負強さを発揮する選手だ。佐野ボーイズ時代は3、5番を打っていたが、高校2年の昨秋からは初めて4番を任されている。
 バッティングの武器は、ミート力。言い替えるとボールにバットを当てる技術に優れているということだ。昨秋の打率は約6割という数字を残し、チームの優勝に貢献した。
提箸は「自分はパワー系ではないので、ヒットの延長線上で長打が出たらいいなという感じで打っています」と、まずはヒットを打つことを意識する。提箸の打席の前には、三塚琉生がいる。
「三塚がほぼ100%の確率で塁に出るので、その状態でバッターボックスに立つことが多いので、つなぐために打たなくてはいけないという意識はあります。自分が点を取るというよりも、ランナーが塁にいる分、つながなくては点が入らないですから。そしてあわよくば、ランナーがホームに返ってくれればいいと思っています」
 今春は、前橋育英に敗れている。「秋に勝っている分、すごく悔しかったですね」。その時の試合を振り返り、「自分たちは良い時は良いのですが、形勢が悪くなるとチームの雰囲気が悪くなることが課題でした。春の前橋育英戦の時も、点を取られ始めると立て直すのが難しくなってしまいました。点を取られたら、すぐにあきらめるのではなく、そこで粘って、1点でも多く点を取り、最後のチャンスで勝ち越せるように、平常心で戦う粘り強さが必要だと思いました」と、チームの弱点を口にした。
 夏の大会に向け、春に出たメンタル面の弱さを克服するため、チームで「強化練習」と題して、プレッシャーをかけられた状態で結果を出す練習に取り組んだ。例えば、「ノーエラーノック」では、エラーなしで27個のアウトを取るのだが、1つでもエラーをするとまた1から始めなくてはならない。またエラーをすると「それじゃ、チームが負けるぞ!」と厳しい声がチームメイトから浴びせられるので、緊張感を持ちながらプレーしなければならない。そのおかげで、提箸自身、最初は102人部員からの言葉にプレッシャーを感じて、雰囲気に飲み込まれていたのが、どんな状況でも平常心でプレーできるようになった。「夏はメンタル面が良くなれば、もっといいチームになります。技術的には、他チームには負けないと思っています」と夏に向け手応えを感じている。

 3年前、センバツ出場を決めた秋の関東大会での桐生第一の試合を見て、「自分もここでプレーして、甲子園に行きたい」と思った。いよいよ高校最後の夏を迎えるが、個人の目標は「昨年の秋は6割打ったので、夏もそれぐらい打ちたい」と語り、「もちろん、甲子園に行くことを一番に考えています」と力強く答えた。
 公式戦に強い提箸が本領を発揮する夏が来た。
<了>

■Profile
提箸優雅(さげはし・ゆうが)

2004年9月22日生まれ、栃木県佐野市出身。小学校2年の秋から野球を始め、中学時代は佐野ボーイズに所属。甲子園に出場するため、桐生第一に進学。2年秋の大会では打率6割を打つなど、バットに当てる技術が光る。高校卒業後は大学を経てからプロ入りを目指す。左投左打、181㎝・76㎏。