生方碧莞(3年・投手)
昨秋の準々決勝で桐生第一に1-8と7回コールド負けを喫した試合が、春の優勝の原動力になった。生方碧莞はその試合に3番手で登板。「こっちよりも圧倒的に打力があり、打球も速い。そこを抑えないと優勝はできない」と、桐生第一との力の差を感じた。
コーチを務める清水陽介先生に「ピッチャーは力だけじゃない」と言われたのをきっかけに、「このままでは、この先、通用しない」と、脱力した状態で投げる練習に取り組んだ。3カ月ほど経つと、力を抜いた投球がだんだんと身についているのがわかった。そして春の大会で、背番号1を背負うまでに成長。
春の準決勝で、再び桐生第一と戦った。打ち合いになったが、先発の岩崎鈴音、髙橋幸太朗の後を受け、生方は7回2死満塁の場面で登板。「ベンチから、さすが桐生第一だなと思って見ていました。(3番手でマウンドに立った時、)打線が怖いという感覚はありませんでしたが、気持ちで引いていたらチームの士気も下がるので、逃げずに攻め続けました」と、迎えた打者を外野フライに打ち取りピンチを切り抜けた。8回に本塁打を1本許したものの、9回は0で締めくくり、11-7で桐生第一を下し、秋のコールド負けのリベンジを果たした。
その翌日に迎えた決勝戦には先発出場。健大を相手に一人で9回まで投げ切り、2-1で優勝に貢献。この試合で失った1点は、2回に健大の増渕晟成に打たれた本塁打のみ。「打たれた時に焦りはありませんでしたが、打たれたのが逆球の高めで、ピッチャーとしてはあってはならない球でした。自分のコントロールミスです」と反省し、この本塁打で気持ちを切り替え、それ以降、強力打線を誇る健大を0に抑えた。完投したのは、高校に入ってから、練習試合も含めて初めての経験だった。
健大には、中学時代にボーイズの群馬県選抜でバッテリーを組んだ清水叶人がいた。「清水は中学時代からバッティングがいいので、決勝戦で当たった時は絶対に抑えたいなと思っていたんです。ファーボールを2つ出したんですけど、2打席はしっかり押さえられたのでよかったです」と、かつての仲間に投げ勝ったことにエースとしての自信を深めた。
そして進んだ関東大会。準々決勝で山梨学院と対戦し、生方は3番手でマウンドに上がったが、0-8で7回コールド負け。「ピッチャーがランナーを出してからが粘り切れませんでした。失点を最少に抑えられないと、全国では通用しない。山梨学院とは圧倒的な力の差を感じました」と新たな壁に直面。「勝ちから学ぶことよりも負けから学ぶことの方がたくさんあると思うので、なぜ負けたのかという原因をチーム全員で共有して、皆で力を合わせながら一体感を持って夏に向けてやっていきます」と気持ちを引き締めた。
前橋育英が今夏に目指すのは、9年ぶりの全国制覇だ。
「関東大会で負けた経験を絶対に夏に生かしたいです。夏は、群馬で優勝して、甲子園で一つひとつ勝ち進んで、最終的な目標である日本一を達成したいです」
憧れの先輩である埼玉西武ライオンズの髙橋光成投手のように、前橋育英のエースとして甲子園のマウンドで優勝投手になる挑戦が始まる。
<了>
■Profile
生方碧莞(うぶかた・あい)
2005年2月5日生まれ、渋川市出身。小学校2年生から野球を始め、中学時代は前橋桜ボーイズに所属。持ち球は、ストレート、スライダー、ツーシーム、フォーク。変化球の中で得意なのはツーシーム。最速は140㌔。憧れのプロ野球選手は、高校の先輩である髙橋光成投手とオリックス・バファローズの山本由伸選手。右投右打、181㎝・87㎏。