チームの一体感を高め、6連覇を目指す
「チームの雰囲気はすごくいいし、一体感もある。本当に、まだまだ伸びしろがある感じ。夏に入ってからも試合ごとに伸びていく雰囲気を感じますね。今年はチームのために、誰かのためにというのがすごく感じられます」 こう語る荒井直樹監督は、今年のチームに手ごたえを感じている。
今春の決勝戦で健大と対戦して2-1で逃げ切って優勝したが、その試合について荒井監督は、「やっぱり(健大は)強いですよ。戦力的にはかなわないくらいものがありますが、野球はそれだけじゃないと思っています。選手たちにも『負けられない』という気持ちがありますし、『打つこと以外で点を取ろう』と走塁にもこだわって練習してきたので、そういった面で、春に成果が出たのかなと思います」
春の関東大会では、準々決勝の山梨学院に0-8で7回コールド負けをした。その試合についても荒井監督は前向きにとらえている。それは、あくまで目標は夏に勝つことだからである。
「関東大会に出られたことが大きいと思うんです。それは公式戦でしかわからないものがあるからです。強豪校と練習試合をするのも勉強になりますが、関東大会は通常開催だったので観客もいて、背番号を背負う子もいればスタンドにいる子もいる。そういうものがすごくいい経験になったなと思うんです。春先から、選手たちには『公式戦をたくさんやろう』と言っていたのですが、公式戦をたくさんやるには勝つしかないわけです。関東大会で1試合目は勝って、2試合目は負けましたが、全国のレベルを肌で感じられたことはすごく彼らにとって大きかったんじゃないかと思いますね」
関東大会では、全国レベルを知ることができただけでなく、荒井監督が普段から口にしている「ベンチ入りできなかった子の思いを背負ってやれ」という言葉の意味を選手たちは理解したようだ。
前橋育英では、ベンチ入りできないメンバーは、普段の練習からベンチ入りメンバーを全力でサポートする意識が強い。選手一人ひとりにそれぞれに役割があると理解している。試合に出る選手もいれば、その選手が活躍できるように自らバッティングピッチャーをしたり、走塁の練習に付き合ったりとサポートする選手もいる。試合に出ているメンバーは「サポートしてくれる仲間のため」という意識を強くする。これが、いざという時に力を発揮できる要因でもあり、荒井監督に「僕の想像を超えたときに勝つ」と言わしめる力にもなっている。
今夏、打撃の中心の一人が2年生で4番に座る石川太陽である。「ホームランも打つし、勝負強い。チーム事情で一塁を守っているんですが、本来はどこでも守れる器用さがあります」と、荒井監督も期待を寄せる。そしてもう一人が、キャプテンで他チームから強打者として恐れられる岡田啓吾。この2人だけでなく、今夏の前橋育英はどこからでも打てる打線が魅力。
投手陣は、春に一人立ちした生方碧莞をエースに、堀慶勝、岩崎鈴音、髙橋幸太朗に期待。右腕の生方は、最速140㌔の強気の投球でチームに力を与える。変化球の精度も上がり、春から成長した投球を見せてくれるだろう。この他、右のサイドスローからの緩急をつけた投球で相手打者を翻弄する堀、変化球の良い髙橋、三振が取れるは岩崎と、いずれも球速135㌔以上の球を持つ投手陣の活躍が期待される。
「打ち合いになる可能性はありますが、その中でも勝たないといけない。投手を中心にしっかり守って、できるだけ失点を防いで、走塁といった打つこと以外でも点を取っていければと思っています」と夏への抱負を語った荒井監督。
この夏、前橋育英は、夏の6連覇と共に、9年ぶりの全国優勝に挑む。
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