群馬の高校野球2020 夏の注目校 桐生第一①

打撃は三塚、提箸が中心。エースの北村が完全復活。
メンタル面と守備を強化し、夏の頂点に挑む

 群馬の強豪私立3校の一角をなす桐生第一。1999年に全国優勝を果たした群馬の名門チームだ。昨秋は、準々決勝で8-1と7回コールド勝ちをしたものの、今春の準決勝で7―11で敗れ、関東大会出場を逃した。
「ピッチャーを中心とした守りで打線につなげるというスタンスでやっていますが、ピッチャーが失点したり、野手が崩れるのが非常に目立ったのが春でした。そこが上手く機能すればうまく回っていくんですけど、春は失点が多すぎて、点数を取っても取られるという戦いでした。前橋育英は秋にウチにコールド負けした悔しさを冬の間ずっと持ち続けながらやってきたので、その気持ちの強さを春は感じました。結局は、その気持ちの差で負けたと思っています」と春の戦いについて振り返った今泉壮介監督。
 夏に向けて守備を強化するため、プレッシャーのかかった状況でアウトを取っていく練習を行った。例えば、守備でミスをすると、周りから容赦ない言葉が、ミスをした選手に浴びせられる。これは、どんな状況でも動じないようにする練習である。メンタル強化の狙いもある。

 投手陣の調子も上がってきている。春はケガの影響により本調子ではなかったエースの北村流音が完全復帰し、球速や投球フォームもケガをする前に戻っている。北村は、利根商の内田湘大と共に県内投手最速の146㌔を投げ、ストレート、カーブ、スライダーで打者を打ち取る。この他、寺門京佑、飯野剛史、松原健太がベンチ入りする予定。そのなかで目覚ましい成長をしているのが松原である。最速139㌔のストレートのほか、スライダー、フォークを駆使して打者を打ち取る。寺門は最速135㌔のストレートを投げ、多彩な変化球に緩急をつけた投球で打者を翻弄する左腕。飯野はサイドスローからストレート、カーブ、スライダーを投げ分ける制球力の高い右腕で、特にスライダーの切れは抜群だ。また、打線の中軸を担う三塚琉生の登板も状況によってはあるかもしれない。エースの北村に次ぐ最速143㌔のキレのある重い球を投げる投手でもあるからだ。

 桐生第一では、昨年の夏の大会に合わせてラプソードを取り入れた。ラプソードとは、高性能のカメラとレーダーを搭載した、ピッチングやバッティングデータを測定・分析する簡易型弾道測定器である。回転数が多いほど、打者に伸びを感じさせる球質となる。桐生第一の投手陣の回転数は、北村が2200、三塚が2400、寺門が2300。ちなみにNBPの投手の回転数の平均が2200と言われている。ラプソードを取り入れたことで、「自分の投げる球の球質がわかるので、それに対しどう取り組むべきなのかが明確になります」(今泉監督)と、選手の意識の向上にもつながっている。

 攻撃では、三塚と提箸優雅が中心。だが、今泉監督は「この2人の前後を打つ選手が鍵を握ると思っています」と語る。それは、三塚や提箸で勝負されない場合が考えられるからだ。夏に向けてチーム全体でさらなるバッティング強化を図っており、2年生の鶴田京平をはじめ下級生の力もついてきている。

グラウンドに掲げられているスローガン

 この夏の戦いについて今泉監督は、「今年は、どこが抜けているというはないと思っています。利根商にも農二にも力があります。正直、どこが甲子園に行くかわかりません。一戦一戦、戦いながら力をつけて、ぜひ前橋育英には春に負けた借りを返したいですね。前橋育英の6連覇だけは阻止したいと思っています」
 2008年以来の甲子園出場に挑む。

<了>