三塚琉生(3年・中堅手/投手)
調子を上げているバッティングで
チームを14年ぶりの甲子園へと導く
今夏、群馬の注目選手の一人が三塚琉生である。千葉の八千代中央リトルシニアから桐生第一に進学。群馬の桐生第一を選んだのは、「グラウンドや寮などの練習施設が充実していた」のと、「2つ上の代に廣瀬智也さんがいて、センバツ出場を決めた群馬開催の秋の関東大会を見に行って、ここで野球をやりたいと思った」からだ。
そしてもう一つの理由が、「親元を離れて自立したかった」から。「今まで自分は親に甘えてきたところがあって、このままでは社会に出た時に苦労するだろうなと思ったんです。自立して自分で考えることができれば、プレーの幅も広がり、野球にもいい影響があると思いました」と自らの成長のために、群馬で寮生活をしながら野球をする道を選んだ。
意識の高い三塚は、新チームになって部員102人をまとめるキャプテンに成長。練習では大きな声で出して選手たちを引っ張っている。
1年の秋から試合に出ている三塚の良さは、長打と、場面に応じたバッティングができること。今年の春の大会終了時点で高校通算本塁打22本だったのが、その約1カ月後には29本まで数字を伸ばすほど、夏に向かって調子を上げている。
昨秋は、「自分らしい長打がなかった」ため、打球を飛ばすために体重を増やすことに取り組んだ。技術面では、今泉壮介監督からのアドバイスで、「ボールを点でとらえるのではなく、線でとらえるバッティングに変えた。わかりやすく言うと、バットの軌道を、ボールの軌道に合わせるスイングをすることだ。こうすることで、たとえタイミングが合わなくても、バットに当たる確率が高くなる。
そしてもう一つ変えたのは、バッティングフォームだ。これまでは打つ時のタイミングをつかめずにいた。昨夏の対戦でホームランを打たれた前橋育英の皆川岳飛(中央大学)を「いいバッターだな」と思い、皆川のタイミングの取り方を、動画を見ながら真似をすることにした。普通に足を上げるのではなく、バットを構えて立つときに、軸足となる左足でポンとタイミングを取ってから右足を上げるようにすると、ボールに対してタイミングが取りやすくなった。三塚も「はまりました」と、納得のいくバッティングができるようになった。
三塚は、サポートピッチャーでもある。最速143㌔の威力のある球とキレのある変化球、フォークや縦のスライダーなどの落ちるタイプの速い変化球が武器。ストレート、フォーク、チェンジアップ、カーブ、縦のスライダーを駆使する。「最近は、変化球を多く使うようになって、まず変化球でカウントを取ってからストレートで勝負したりと、投球の幅が広がりました」と投手としても手応えを感じている
三塚が憧れているのは巨人で活躍した亀井善行選手だ。2017年6月18日の巨人VS ロッテ戦の動画をふとした時に観るという。その試合は、亀井選手がサヨナラホームランを打った試合である。亀井選手の前を打つマギー選手が3打席連続敬遠され、ロッテは3打席とも亀井選手との勝負を選んだ。この日はタイミングが合わず苦戦していた亀井選手は、8回にキャッチャーフライ、延長10回に空振り三振に終わっていたが、延長12回にサヨナラ3ランを放つ意地を見せ、チームを勝利に導いていた。
「チームメイトが3回敬遠された後に、さよならホームランを打った亀井選手のような選手になりたいと思いました。中学の時には亀井選手と同じライトのポジションだったので、亀井選手のプレーをカッコいいと思って試合を見ていました」
この夏、亀井選手のように、チームのピンチを救うプレーで、桐生第一を14年ぶりの甲子園出場に導くだけでなく、夢である「プロ」の道への扉を開きたい。
<了>
■Profile
三塚琉生(みつか・るい)
2004年5月10日生まれ、千葉県出身。八千代中央リトルシニアから桐生第一に進学。親元を離れて自立することで、野球にもいい影響があると考えてのことだった。高校年代では群馬県内屈指の強打者で、6月5日時点で高校通算本塁打29本。技術だけでなく、全力疾走やカバーリングなどにも手を抜かない頼れるキャプテン。181㎝・87㎏、左投左打。