セミファイナル ゲーム2
群馬クレインサンダーズ 83-71 越谷アルファーズ
[1Q]群19-越10 [2Q]群17-19 [3Q]群25-21越 [4Q]群22-21越
2021年5月16日(日)ヤマト市民体育館前橋 観客1725人
レギュラーシーズンを、32勝5敗、勝率.912と、東地区優勝、プレーオフ出場順位1位で終えた群馬クレインサンダーズ。「自分たちがどれだけ強いか、どれだけ力があるかを証明するチャンス」(平岡富士貴ヘッドコーチ、以下HC)と臨んだプレーオフ。セミファイナル(準決勝)に進出したサンダーズは、対戦相手の越谷アルファーズとの第1戦を94-90と接戦をものにし、迎えた第2戦目で越谷を圧倒。1725人の観客の前でB1昇格を決めた。平岡HCは、「私は5年前に就任して、3度目でB1に行くことができました。3度目の正直というのがあるなと思っています」と、あふれる涙をこらえ、時折、言葉に詰まりながらB1昇格の喜びを口にした。この試合ではベンチメンバーも全員出場し、みんなでつかんだB1昇格となった。
ここでは、昇格を決めたセミファイナル第2戦の様子をレポートする。
取材/Eikan Gunma編集部
「リバウンドだよ。リバウンドをしっかり取れば勝負できる」
昨日の試合で越谷アルファーズにリバウンド争いで負け、セカンドチャンスから20点を相手に与えるなど終盤まで苦しい展開を強いられ、セミファイナル第1戦は94-90と辛勝。平岡富士貴HCはセミファイナル第2戦目のポイントを試合の前の選手たちにこう伝えた。
このセミファイナルからさらにディフェンスの強度を上げるために、スタメンに上江田勇樹を起用。前日の試合の序盤に長谷川智也に気持ちよくアウトサイドシュートを打たれて越谷を乗せてしまった反省から、試合開始直後から上江田が長谷川を徹底マーク。簡単にシュートを打たせない作戦に出た。さらにアイザック・バッツに昨日、オフェンスリバウンドを11本取られていたため、ブライアン・クウェリを中心にサンダーズのビッグマンたちが体を張って、越谷にセカンドチャンスを与えないように徹底。ハーフコートバスケットでは、全員でペイント内を守った。その結果、第1Qでは、バッツのオフェンスリバウンドをわずか1本に抑えたほか、得点も与えなかった。攻撃では、トレイ・ジョーンズ、マイケル・パーカー、笠井康平、ジャスティン・キーナンが点を積み重ね、19-10で第1Qを終えた。
第2Qもブライアン・クウェリを中心に、バッツにセカンドチャンスを与えない体を張った守備で、越谷に点差を詰めさせなかった。残り6分を切ったところで、ヒンクル、長谷川に立て続けにシュートを決められ5点差まで詰め寄られるものの、その直後にキーナンの3ポイントシュートが決まり、相手に行きかけた流れを引き戻した。しかし、残り3分17秒で与えたフリースローを皮切りに、バッツの得点力がさく裂。わずか3分間に9点を与えたが、第2Q終了のブザーと同時に笠井の3ポイントシュートが決まり、36-29で前半を終えた。このクオーターではバッツのリバウンドを0に抑えるなど、サンダーズのビッグマンたちの守備力が光った。
第3Qは、ディフェンスリバウンドからジョーンズらの速攻で得点を重ね、61-50で最終クオーターへ突入。第4Qは、パーカーがスティールからレイアップシュートを決めチームを勢いづけた。すかさず越谷がタイムアウトを取るも、その直後に、今後はキーナンがスティールからそのままレイアップシュートを決め、67-50と越谷を突き放した。
残り1分3秒に、越谷はチャールズ・ヒンクル、飯田鴻朗といった3ポイントシューターを投入し10点差を詰めようとしたが、逆にサンダーズがフリースローで7点を追加。越谷も、ヒンクルが3ポイント、レイアップ、フリースローを決めて意地を見せたが、終始ゲームを優位に進めたサンダーズが83-71で越谷を下した。
「今までは、バッツやクレイグ・ブラッキンズに預けて個で打開できたところが、昨日の接戦の影響でそれができなかった。チームディフェンスで守られてしまうとウチの選手たちの足が止まって、ボールが動かない、人が動かないという時間が長くなってしまった」と苦しい戦いを振り返った越谷の高原純平HC。一方、勝利したサンダーズは、前日から一転、クウェリがリバウンド争いを制してバッツに仕事をさせなかっただけでなく、長谷川、ヒンクルといった越谷の3ポイントシューターの得点も抑えた。攻撃ではサンダーズの武器であるジョーンズを中心としたリバウンドからの速攻がさく裂した。ジョーンズも「昨日の試合でバッツにオフェンスリバウンドを11本取られていた。(ウチが)ディフェンスリバウンドを取ることでトランジションの攻撃ができ、試合前に話していたバスケットが遂行できた」と、満足した表情で勝因を語った。
勝負どころで3ポイントシュートを2本決め、ポイントガードとしてゲームをコントロールした笠井は、3ポイントのシーンをこう振り返った。「越谷は、ビッグマンが外にあまり出てこないディフェンスなので、自分がピックを使ったときに、自分の前にスペースがあるので、そこは練習から意識していました。チームのリズムのときに思い切り打てたのかなと思います」。そしてB1昇格を決めたことに、「安心したというか、あれだけの勝率(.0921)を出してプレーオフへ。自分自身も負けたくないという思いもありましたし、あれだけの結果を出したのだから負けちゃいけないというプレッシャーもありました。(昇格を決めて)少しほっとしています」と試合後の会見で笑顔を見せた。
この日、12得点6リバウンドのパーカーは、昇格を決めた心境を聞かれ、「とてもうれしく思います」と語り、「私自身、長年B1を経験し、B1のチームがどんな戦い方をするのかを知っています。B1に行くことが最終目標ではないので、チームとしてこれから修正すべき点はたくさんある」と、来季に向けて気を引き締めた。
試合後の会見で、「どんな精神状態で昇格のかかる試合に臨んだのか」と質問された平岡HCは、2年前のセミファイナルの熊本ヴォルターズ戦を引き合いに出し、「あの時は、ゲーム2(第2戦)を落として、ゲーム3(第3戦)はクロスゲームで勝ったんですが、ゲーム2が終わった後は開き直っていましたね。今回は、ゲーム1(第1戦)を取ったんですが、開き直ることもできず、寝ることもできず、とにかく勝ちたいの一心でした。これはプレッシャーから来るものだと思います。選手もプレッシャーがあったと思います。こうやって(B1経験者を)補強したチームが前評判で、『間違いなく(優勝は)群馬だ』と言われ続けている中で、『勝ち続けられるでしょう』、『B1に必ず行けるでしょう』という噂を耳にしたり、(記事やニュースを)見たりという状況がこの半年間、たくさんありました。現場を知っているのは僕たちだけなので、そういった苦労を考えると、期待もされていますし、負けちゃいけないなというプレッシャーもありました」と、苦しかった胸の内を吐露した。そして今季のチームを率いてきた中で大変だったことについて、「私自身が描いているディフェンスの強度だったり、オフェンスのバランスだったりがまだできていない。それはレギュラーシーズンもそうですし今日の試合でもそう。なかなか自分たちのディフェンス、オフェンスができない。そういうところは苦労しますが、これも成長する一歩だと思い前向きにとらえています」とも明かした。
シーズン当初、既存の選手と新加入選手がなかなか一つにまとまれない時期があったが、シーズンを戦うにつれ、練習中やオフをチームメートと過ごす中で、徐々にチームの団結力が上がっていった。チームの成長した点について選手たちはこう答えている。「チームの団結力。タレントが揃っていてもチームの団結力がなかったら33連勝もB1昇格もできなかった」とパーカー。ジョーンズもチームの団結力を挙げ、「チームメートが、何が得意で何が苦手かを含め、試合の流れによってこの選手ならこういうプレーをするだろうなというのは、長く一緒にプレーしてわかるようになった」と答えた。そして笠井も「オフェンスでは外国籍選手に頼る時間もありますが、日本人選手もディフェンスやルーズボールを頑張り、自分にしかできない仕事をそれぞれがシーズンを通して見つけ、それを遂行できているから、誰が試合に出ても良い試合は良いですし、ベンチメンバーが出ているときのほうが良い時間帯もあります。それぞれがこのチームでの役割を理解して、チームのために戦えるようになったことが、一番成長した部分であり、僕たちの強みだと思います」と、やはりチームの成長に団結力を口にした。
前人未踏のレギュラーシーズン5敗以内を達成し、B1昇格を決めたサンダーズは、チームの団結力を武器に、最後の目標であるB2優勝をかけて、次週の茨城ロボッツとの戦いに挑む。
<了>
【試合前】
【試合】
【試合後】